岩手は秋田 豊前監督が代表取締役オーナー兼代表取締役社長に就任し、今季から新指揮官に松原 良香監督を招聘。松原監督は「攻撃的で相手を圧倒するサッカー」を掲げ、明治安田J3開幕戦で5ゴールを記録して好調な滑り出しを見せると、以降も結果を残し、第5節終了時点で首位。4月は主力の離脱などから3連敗を喫したものの内容は悪くはなく、5月14日に行われた第10節・八戸戦ではリーグ戦5試合ぶりの勝点3を獲得した。試合後、松原監督は選手を称え、「新しいグルージャの再スタートになる。そんな試合になった」と手ごたえを口にした。
プレースタイルも変貌を遂げている。[4-2-3-1]を基本システムとし、より立ち位置やポゼッションの意識を高めて、ボールを握りながら意図的にボールと相手を動かして得点を目指す。
中心を担うのは和田 昌士。今季は主にトップ下で起用されているが、新戦術の中で大きな輝きを放っている。リーグ戦でチームトップの4ゴールを記録し、八戸戦では圧巻のオーバーヘッドを決めて勝利に貢献。技術の高さだけでなく、90分間攻守にハードワークするタフネスぶりも発揮し、大黒柱としての存在感が際立つ。
守備では、今季川崎Fから加入したGK丹野 研太がさすがのプレーを披露。すべての質が高水準だが、特筆すべきはビルドアップ能力の高さ。今季のチームスタイルに欠かせない守護神であり、攻撃の起点となっている。
一方、チームとして気がかりなのは、自陣でのミスとクロス対応。直近数試合はここからの失点が続き、苦しい試合展開となっているだけに改善が必要となる。
対するクリアソン新宿は東京都予選で法政大、明治大を破り、クラブ史上初の本戦出場を決めた。2021年の全国地域サッカーチャンピオンズリーグで優勝し、入れ替え戦にも勝利したことで、昨季からJFLに参入。今季はここまで3勝1分4敗で15チーム中11位だが、首位とは勝点5差。5月14日のリーグ前節・FCティアモ枚方戦では今季最多の4ゴールを奪って快勝し、上位も十分狙える位置につけている。
また、クリアソン新宿には岩手でプレーしていた米原 祐、石井 圭太も在籍。石井はプロキャリアの半分を過ごした岩手の地での試合に向け、「J2昇格、J3降格も含め、いろいろなことを経験させてもらえたクラブ。退団のときはタイミング的にお別れの挨拶ができなかったので、出場機会があれば自分の特長である球際やハードワークの部分をしっかり見せることで感謝を伝えたい」と熱い思いを語ってくれた。
勝利のカギを握るのは、今季JFLで5ゴールを挙げ、得点ランキングトップに立つ佐野 翼。リーグ戦で勝利した試合のすべてでゴールを決めている。岩手としては、その決定力に十分な注意を払わなければならない。
一時の不振を脱却し、上り調子に転じた感もある岩手。そして、初の舞台で意気揚々と下克上を狙うクリアソン新宿。先制点を奪い、試合を優位に展開するのはどちらのチームになるだろうか。
[ 文:髙橋 拓磨 ]