4月25日（土）J2 第10節 草津 vs 東京Ｖ（16:00KICK OFF/正田スタ）
スカパー！生中継 Ch183 15:50〜（解説：佐藤正美、実況：山田浩史、リポーター：円戸由香）
☆顔写真クイズ｜勝敗予想ゲーム
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　苦しんだ末につかみとった勝利だった。開幕３連勝後、５試合連続で白星から見放されて迎えた前節の敵地・愛媛戦。草津は、ホーム愛媛の勢いに屈することなく、アグレッシブなサッカーを展開し３対１で勝利を収めた。スタイルを貫き通して奪い取った勝点３は、チームに絶対的な自信を植え付ける。草津は今節、名門・東京Ｖを迎撃して、開幕直後のパワーを取り戻す。

　愛媛戦は、攻守の切り替えの速さで相手を圧倒した。３分には相手陣地でボールを奪い、松下裕樹が強烈なミドルを突き刺す。同点で迎えた67分には、自陣右サイドを起点としたカウンターから熊林親吾がシュートへ持ち込んだ。「チームが連動して生まれたゴールだった」（熊林）。トドメは、昨季のチーム得点王・後藤涼の今季初得点。理想に近い形で獲た６試合ぶりの勝利はチームに大きな弾みをつけた。

　チームを活性化したのは、松下と櫻田和樹の両ボランチだ。守備でリズムを作り、攻撃でも特長を発揮した。中盤の底で存在感をみせた松下は先制ゴールのほかに、後藤のゴールへつながるロングフィードを送った。「良い守備が良い攻撃につながった」と話す櫻田は、前線のプレスで先制ゴールを誘引、熊林の追加点をアシストした。両選手ともに得点に絡んだだけではなく、攻守のジャンクションとして重要な役割を果たした。

　東京Ｖから草津へと移籍した選手が、古巣相手にどんなプレーを魅せるかもゲームの焦点の一つだ。今季、草津へ加入した廣山望は、「うちが８位でヴェルディは12位だけど勝点差は３だけ。ここで勝つことで差を６に広げたい。ヴェルディには、浮上のきっかけを与えたくない」と静かな闘志を燃やす。

　そして、特別な思いを込めるのはＧＫ常澤聡だ。04年に東京Ｖへと入団。チャンスをつかめず07年に草津へ。守護神・本田征治の負傷で出番が回ってきた前節は、プロ入り２度目の先発でＪ初勝利を手にした。「５年半、努力をしてきて本当に良かった」（常澤）。のほほんとした性格からチーム内ではイジられキャラを確立。選手寮の自室は選手の溜まり場となり、皆がサッカーゲームに興じる。そのため部屋にはカギをかけたことがないという常澤だが、今ゲームではゴールマウスにきっちりとカギをかける。

　高田保則や本田らベテランがケガで戦線離脱したチームだが、代わりに出場した選手たちが穴を埋めている。若い選手の活躍によって、チームには変革の胎動が聞こえてきた。そして今節は、前橋育英から入団したルーキー佐藤穣のベンチ入りも確実となった。佐野達監督は今週の練習後に、草津の至宝のベンチ入りを示唆。コンデションに問題が発生しなければ、背番号25の勇姿が見られるはずだ。鹿島・大迫勇也や浦和・山田直輝など同世代の活躍に刺激を受けたという草津のイニエスタが、プロの第一歩をホーム敷島で踏み出す。

　対する東京Ｖは３勝１分５敗で現在12位につける。高木新監督のもとで新たなサッカーを構築している最中だ。苦しんでいるものの敗れた５敗はＣ大阪、湘南など上位チームで、現在の成績がチーム力をそのまま反映しているわけではない。佐野監督は「東京Ｖは大黒というストライカーがいるし個の力ではかなわないので、チームとして戦うだけ。特に大黒の動き、大黒へのパスにはケアが必要だ」と話す。東京Ｖは、相手の長所を消すよりも自分たちの長所を出してくるチームのため、草津にとっては組みやすい相手。今ゲームは互いの長所がぶつかり合う好ゲームとなるだろう。

　草津と東京Ｖの対戦成績は、草津の４分４敗。06、07年の２シーズン、草津は一度も勝つことができなかった。だが今季は過去とは違う雰囲気が漂っている。「これまでは東京Ｖという名前に負けていた部分があったが、今年はキャンプでの練習試合でも良いゲームが出来たし、苦手の意識が消えた」（松下）。草津は今節、名門の壁を打ち破って、クラブの新たなページをめくる。

以上

2009.04.24 Reported by 伊藤寿学