5月2日(土) 2009 J1リーグ戦 第9節
浦和 1 - 0 新潟 (19:03/埼玉/50,284人)
得点者:89' 田中マルクス闘莉王(浦和)
スカパー!再放送 Ch182 5/3(日)14:30〜(解説:水沼貴史、実況:西岡明彦、リポーター:朝井夏海)
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後半ロスタイム、立て続けに蹴り込まれる浦和のCK。両チームの選手たちが密集するエリア内、誰よりも高い到達点へと浮かび上がった浦和の背番号4のヘッドが新潟ゴールに突き刺さる。次の瞬間、埼玉スタジアム2002の重苦しい空気が弾けると、一瞬にして膨れ上がった歓喜の興奮が留まることはなかった。
新潟の粘り強く巧みな守備に、ホーム浦和がうまく抑え込まれる。後半16分には新潟のマルシオ・リシャルデスが2枚目のイエローカードで退場処分となり、「しっかり守って勝点1という風に頭のなかに描いていた」(鈴木淳監督)という相手の奮闘を前に、浦和はますます沈黙。均衡した試合だからこその、両者停滞の末の『凡戦』。そう呼んでも差し支えないゲームになる可能性もあった。だが、終了間際に生まれたドラマは、この試合を浦和にとって忘れられないゲームのひとつとしてみせた。
「1回アレックス(三都主アレサンドロ)の素晴らしいクロスからのシュートを止められて、あれで終わったかなと思ったが、もう1回チャンスが来た。最後、ああいう形で入って本当によかった」(田中マルクス闘莉王)
ギリギリのところで奪った決勝弾の瞬間、歓喜の疾走を見せながら、男の顔には安堵の表情が浮かんでいた。人一倍勝利への欲求をあらわにする男の姿に、ゴールを奪ってくれることを誰よりサポーターが望んでいた。「大事な勝点3を取ることだけを考えている」。チーム改革の途上で昨季より得意の攻撃参加が減ったのも、すべてはチームの勝利のために。闘莉王にとって、今季初ゴールが勝点3に直結したことは、何よりも喜ばしいことだったはずだ。
この日の浦和は、エジミウソン、ポンテ、原口元気、山田直輝の攻撃カルテットを封殺され、攻め手を失う展開が続いた。特に後半の戦いぶりに「約30分間、非常に悪いプレーをした」と不満を表したフォルカー・フィンケ監督は、数的優位に立ったことで「どうしても無意識的にあまり走らなくなってしまう」ことを停滞の要因に挙げた。選手も同様に「もっと動いていかなければいけなかった」(阿部勇樹)と話しており、この試合で浦和に課題が浮き彫りになったことは間違いない。
一方の新潟にとっては、ダメージの残る試合となってしまった。浦和を自分たちのペースに引きずり込み、数的不利となってからの引き分けねらいが完遂する間際での、まさかの失点。シュートも合計6本と、引き続きチャンスの少なさも課題に残った。次節はマルシオ・リシャルデスを欠くことになるが、浦和相手に猛威を振るったサイド攻撃を突破口としたいところ。この試合でも相手を切りきり舞いさせたペドロ・ジュニオールのキープ力と、溢れるスプリント力を披露した矢野貴章を中心として、一層の攻撃チャンス増を図りたい。
2位浦和対3位新潟の注目の上位対決。試合後、スコアボードに記されたのはホームチームの勝利を示す『1対0』の文字だった。割れんばかりの大歓声と、鳴り止まぬ拍手。今季最もサポーターを打ち震わせた瞬間、“ホーム”はひとつとなり、えも言われぬ空間が目の前に広がる。その光景を前に、指揮官が思い描いたであろう未来図。「この早いタイミングで勝点20としたことで、さらにいいサッカーをするための時間を作ることができた」。劇的な試合展開が幸運だったことを前置きしながらも、今後に向けて自信滲むフィンケ監督の言葉に、浦和のさらなる前進の予感が漂った。
以上
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