Ｊ１リーグ第９節を終えて首位に立つ大宮は、昨シーズン王者の広島をホームNACK５スタジアムに迎える。前節の大分戦を、ノヴァコヴィッチの個人技と、４選手が少ないタッチ数でからむ美しい形によって２ゴールを奪い、守っては高い守備ラインを保ち相手にスペースを与えず無失点で快勝。これでリーグ戦６連勝で、昨年から続く無敗記録を20試合に伸ばしたチームからは、充実のオーラすら漂う。懸念としては、大宮が大分戦から中２日での試合となるのに対し、広島はACL北京国安戦から中５日、それも主力の大部分は中８日で乗り込んでくることだが、勝ち続けていることの充実感がそのハンデを補ってくれるだろう。

大宮は前々日の練習はリカバー程度でフォーメーション練習を行わず、前日練習を非公開としたが、ケガ人でもない限りはおそらく大分戦と変わりないメンバーで臨むだろう。広島は１日にFC今治と練習試合を組んでおり、メンバーなど詳細の公式リリースはないが、主力は前半のみのプレーと調整は万全の様子。ただ、西川周作が３日の練習で左ふくらはぎを痛め、出場が微妙。大卒２年目の増田卓也が代わってゴールマウスを守ることになりそうだ。

大宮が試合前に非公開練習を行ったのは今年２回目。前回は浦和戦の前で、ペトロヴィッチサッカーを封じるため、ダブルボランチの１枚が最終ラインに入って２シャドーの１枚に付き、もう１枚のボランチが相手の配球役をマークする５−３−２の布陣を準備し、見事に目的を遂行した。広島もペトロヴィッチ監督の作り上げたチームがベースで、システムは同じだが、ベルデニック監督は「システムは同じでも選手が違う。同じ戦いにはならない」といい、入念に広島対策が練られたことは間違いない。
浦和戦では５バックになりながらも最終ラインを高く保ち、計７つのオフサイドを奪ったが、無失点に抑えられたのは、圧縮したゾーンでも細かいパスワークでの崩しに固執した浦和の攻めに助けられた面もある。その点で広島は、最終ラインとの駆け引きに長けた１トップの佐藤寿人に加え、２シャドーの一角に入る石原直樹も裏に飛び出してくる。配球役の青山から一発のロングパスもあるし、さらに右サイドには抜群のスピードによるドリブル突破に加え、アーリークロスの名手でもあるミキッチがいる。大宮の高い最終ラインの裏を終始脅かしてくるだろうが、ラインを下げると高萩洋次郎にバイタルエリアを使われる危険が増す。裏へのボールに対するスピード勝負には絶対の自信を持っている菊地光将と高橋祥平の両センターバックを中心に、大宮がいかに高いラインを保てるか、またそこを広島がいかに攻略するかが見どころだ。

守備のマークでは、おそらくボランチの仕事は浦和戦と同様になるだろうが、広島のディフェンダーは浦和ほど積極的に攻撃参加はしてこないため、両サイドハーフは高い位置を取れる。「しっかりマークを受け渡しながらなるべく下がらないで守れれば」(金澤慎)、大宮の攻撃のチャンスは広がるはずだ。この６連勝中、前線のノヴァコヴィッチとズラタンの２人のうちどちらかが必ず点を取っている。「後ろで耐えれば前の選手が点を取ってくれる」(高橋祥平)と、攻撃陣と守備陣の信頼関係ができていることも、今の大宮の組織的サッカーの強みだ。
ただ攻撃においては、大宮はオープンな撃ち合いになることだけは避けたい。行って戻っての展開となると、日程面の不利が響いてくるからだ。「イチかバチかの攻撃になると、ボールを取られる確率も増える。ボールを確実に運ぶことで、守備での無駄なエネルギーを使わないようにしたい」とベルデニック監督。カウンターをねらうのか、しっかりポゼッションするのか、そこの判断がいつもよりさらに重要になるだろう。

ゴールデンウィークの最終日。天気予報は晴れ。熱くも寒くもない絶好のコンディションの中、現在首位と昨季王者の一戦。実は大宮はJ１昇格以来NACK５スタジアムで広島相手に勝利したことはないが、その苦闘の歴史にピリオドを打ってくれるに違いない。そう思わせるだけの勢いが、今の大宮にはある。


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2013.05.05 Reported by 芥川和久