勝てば、『昇格』がぐっと近づく一戦で、攻撃の口火を切ったのは、やはりこの男、遠藤保仁だった。ここ数試合の攻撃陣の好調を示すかのようにキックオフから圧倒的にボールを支配し、攻勢に試合を進めていた中での8分。右サイドでDFに圧力をかけられながらも、それを吹っ飛ばしてMF宇佐美貴史がMF二川孝広へパス。そこからダイレクトでゴール前に送り込まれたボールをMF遠藤保仁が頭で合わせ先制ゴールを奪う。このゴールで勢いづいたＧ大阪はその３分後、MF倉田秋の右コーナーキックをMF宇佐美がヘディングで競ったこぼれ球をDF丹羽大輝が右足で押し込んでアッサリと２点目。一方的な試合展開の中で、Ｇ大阪が着実にスコアを重ね、熊本を圧倒する。

いつもの３バックではなく、４バックでキックオフを迎えた熊本はゲーム内容もスコアも、立ち上がりからＧ大阪のパス回しに翻弄される展開に。人に、ボールになんとか圧力をかけてボールを奪おうとする姿勢は示すものの、いまひとつ迫力が感じられない。なんとかボールを奪って攻撃に繋げても精度が低く、すぐさま相手ボールになってしまうというような展開が続く。その状況をなんとか打開しようと、数少ないながらもカウンターからゴールを奪いにかかるが、Ｇ大阪の守備も落ち着いて対応され好機を見出せない。しかも41分には好調をきたすＧ大阪のMF宇佐美に３点目を奪われ、大きな差をつけられて前半を折り返す。

Ｇ大阪はメンバー交代なく、熊本はM堀米勇輝に代えてMF大迫希を投入して迎えた後半。前半同様にボールを支配したのはＧ大阪。スコア的な余裕もあってか、前半に比べて、相手DFの間、間に人が動き、ボールを動かしながら丁寧にボールを繋いでゲームを支配する。これに対して熊本は「前からなかなかハマっていかないので少し後ろに人数をかけた（池谷友良監督）」という狙いで３バックにシステムを変更。Ｇ大阪の攻撃を警戒しながらも、前線からの圧力をかけてなんとか好機を見出そうとするが、前半同様、攻撃にかかる際の精度も悪く、なかなか決定的な形を作れない。MFドゥグラスやFWウーゴといった外国籍選手を投入し、MFファビオとともに前線に据えて変化を求めるが、セットプレー以外ではペナルティエリアの中に入っていくようなシーンも殆どなく、流れを変えられない時間が続く。

Ｇ大阪が優位に試合を運びながらもスコアの動きがないまま迎えた試合終盤。Ｇ大阪はこの日、二人目の選手交代にFW佐藤晃大を投入。前節、約１年ぶりに戦列復帰を果たした『高さ』のあるFW佐藤を前線に据え、攻撃にアクセントを求める。するとその3分後。右サイドからDF今野がふわりといれたボールが、相手DFの頭を越えてFW佐藤のもとへ。それを胸トラップで落とし、豪快に右足を振り抜くと、ボールが鋭くゴールをとらえ、Ｇ大阪が４点目をものに。これで完全に熊本の息の根をとめたＧ大阪がそのまま無失点で試合を締めくくり、勝点を８０に伸ばした。

尚、この試合が終了したでは『昇格』は決まっていなかったが、その後、19時から行われた『神戸vs京都』戦が引き分けに終わったことを受け、残り３試合を待たずしてＧ大阪の１年でのJ1復帰が決定（※）。この試合を次節・京都戦のスカウティングのために観戦に訪れていたDF丹羽大輝は下記の通り、昇格の喜びを語り、残り３試合に向けて気持ちを引き締めた。

「去年このガンバに復帰した中で、チームが降格してしまい、かつ自分自身もゲームに絡めず力になれなかったという悔しさがあった中で、こうしてしっかり１年で復帰することが決まって嬉しく思います。この１年で蓄えた力をーー苦しい時、悪い試合でも攻守において戻るべき戦い方をチームとしてしっかり備えられたことがこの１年の財産だったと思うので、その力をより強固なものにするためにも、とにかく、あと３試合、しっかり勝利で締めくくり、来年胸を張ってJ1に戻りたいと思います（DF丹羽大輝）」

以上

※Ｊリーグ理事会の承認をもって最終的に確定します。

2013.11.04 Reported by 高村美砂