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【J1:第32節 甲府 vs 広島】レポート:広島に2ゴールでJ1残留を決めた甲府。しかし、一夜明ければ厳しい現実(14.11.23)

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偉大な勝利で機嫌よく電車に乗った甲府からの帰り、長野県北部を震源とする地震で電車が一時止まり、「甲府に泊まればよかった」と後悔したが、今朝目にしたスポーツ新聞の「甲府、城福監督勇退へ、契約延長固辞、後任は…」という記事で急に足元がやわらかいものでできている世界に住んでいる気分になってしまった。「2015年も城福と共に」と試合後にサポーターが出した横断幕のメッセージは城福浩監督にどう伝わったのか…的な終わり方の原稿を書こうかと思っていたが、もう陳腐な感じ。もちろん正式発表ではないし、2015年のJ1甲府の監督が城福浩であってほしいと強く思うけれど。

前節から3週間も空いているので右ウィングバック・ジウシーニョが出場停止であることも忘れてしまいそうだったが、甲府の先発は右ウィングバックに松橋優、3バックの右に畑尾大翔を入れる3週間前のC大阪戦と同じ先発メンバー。3バックの右では第28節まで青山直晃が先発して大きく貢献していたが、対広島という対応では畑尾のロングフィード力が、相手ディフェンスラインの裏を狙うが故の佐藤寿人のポジションによって生きると判断して城福監督は畑尾を選んだ。広島は若手を使いたいという意図もあったのか、高萩洋次郎をベンチに座らせ、野津田岳人がシャドーで先発。もともと広島のベンチに座っている選手は他のチームに行けばすぐにレギュラーを取れそうな選手ばかりなので、先発が2〜3人代わったところで質が下がることはない。開始2分のCKのボールを塩谷司がワンタッチで正確にミートしてバーに当てた瞬間は厳しい結果が一瞬頭をよぎったけれど、甲府の13人目の選手である”ゴール枠太郎”がギリギリのところでセーブ。このあとも、アーリークロスをディフェンスラインの間に入って受ける佐藤や石原直樹の上手さに手を焼きながらも甲府はしのいでいった。

攻撃では甲府はなかなか前線にボールが収められなかったが、右ウィングバックの松橋が対面する柏好文の左サイドの裏を狙って柏を牽制。何度かオフサイドになったものの畑尾の出したロングボールに合わせて走り込むことで狙い通りの効果は発揮できていた。ただ、決定機をそれなりに作ることができていたかといえば答えはノー。広島の守備の強さに阻まれていて、コンビネーションの部分では1回しか崩して迫ることはできていなかった。
しかし、この試合で難しい戦いを強いられていたのは広島。ヤマザキナビスコカップ決勝の悔しい逆転負け、優勝も降格もない順位で内に目標を見出さないといけないが、それが難しいのは当然。広島のパスワークの上手さを警戒してファーストディフェンダーがボールに寄せる迫力が不足している甲府に対して、後手を踏ませるパス回しの上手さは見せるが、ゴール前の迫力はいまひとつの印象だった。

0−0で迎えた後半、甲府のゴール裏は「夢叶う小瀬」をずっと歌い続けてチームを後押しする。前半の選手入場のときにきれいにバックスタンドに浮かび上がったプラカードで作った「VENTFORET」と「武田菱」のコレオグラフィーもそうだが、雰囲気つくりは完璧。そんな中、後半の出だしは前へのパワーが増していたが、57分にペナルティエリアに入ってきた森崎和幸に対して畑尾の足が少し遅れて入り、プロ初イエローカードでPKの判定。
キッカーの佐藤はGKが読んでくる方向にあえて蹴った。GKの荻晃太は9対1の確立で得意なほうに蹴ると思って左に飛ぶ。方向は合っていたが、荻が「蹴られた瞬間に、やられた」と思うほど手が完全に届かない枠のギリギリのコース。そしてボールは荻から見て左のポストに当たってゴールラインギリギリを転がって逆のポストには当たらず、ゴールラインを割った。ポストに当たってちょっとだけスピンがかかっていたのだろう。前半2分の塩谷のワンタッチシュートと佐藤のPK、甲府は運をまだ使い果たしていなかった。

直後、城福監督は盛田剛平に代えてクリスティアーノを投入する。キレのあるスピードに強引をトッピングしたドリブル突破は相手のDFを相当に疲れさせる。C大阪戦でもクリスティアーノの登場で流れを引き寄せているだけに、期待通りに圧力がアップした。失ったボールを高い位置で奪い返すパワーもチームに戻ってきた。
そして、65分に今度は甲府にPKのチャンス到来。阿部拓馬がペナルティエリアのギリギリ隅で倒れされた。このとき、甲府サポーターの応援も阿部拓馬の背中を押しているから、より勢いよく倒れたかもしれない。このPK、クリスティアーノも蹴りたそうだったが、キャプテンの山本英臣が左に決めて甲府がついに先制。
広島は2枚替えでテクニシャンの高萩と重FW皆川佑介を投入してくる。しかし、先制されたことで広島のパスワークにも焦りが出たのか起点のミスが出始め、甲府にカウンターのチャンス増えた。その3発目だったと思うが、スペースに走り込んだ新井涼平にマルキーニョス パラナがいい塩梅の縦パスを入れる。新井は広島ゴール前で長い足で切り替えして、DFから少し距離をとって落ち着いて右足で蹴り込んだ。J1、38試合目の初ゴール。これまでもパンチ力のあるミドルシュートは何本も打っていたが、初ゴールはトータルで60近く走ってから決める乳酸系ゴールだった。このゴールでスタンドのファン・サポーターは実質的なJ1残留を確信したと思う。記者席の後ろで見ていたジウシーニョも「ボネパウリウマーゾ、ファザロアン」と聞こえたポルトガル語で多分大喜び。この77分のゴールが試合をこのまま決めてくれた。

広島は試合後に森崎(和)が「今年を象徴している失点。いいときは気持ちよくプレーできているけれど、(そうでないときは)90分我慢強くプレーできていないと思う」と話した。総合的に見ればここ3シーズンの広島は素晴らしい結果を残していると思うが、今節に関して言えば非常に難しい試合。次節も難しさは同じだと思うが、そこでどうモチベーションを高めることができるかが、来年にも繋がる部分になるはず。関東へのアウェイが続くが、こういうときこそ大人になってもサッカー小僧であり続けている選手が活躍できる試合になるかもしれない。

2−0で広島に勝利した時点では甲府のJ1残留は決まっていなかったが、17時キックオフの試合結果で残留が決まった。とてもうれしいことではあるが、城福監督の去就だけでなく、主力選手の流出も避けられない可能性が高いのが現実。残留の歓喜から一夜明ければ厳しい現実。さまざまなJリーグの改革が行われる中で甲府という小さなクラブが浦和や鹿島や広島や新潟などの大・中クラブと同じステージで生き、発展していくために越えないといけない課題は多い。残留した夜に、もっと喜んでおけばよかったと後悔してしまったサポーターも多いだろう。甲府3度目のJ1残留はちょっと酸っぱい味がする。

以上

2014.11.23 Reported by 松尾潤
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