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コラム

Jリーグチェアマン 村井満の“アディショナルタイム”

2014/11/3 10:00

One Soul~松本山雅FCの絆~(♯22)

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反町監督は松本山雅FCをJ2在籍3年でチームをJ1に導いた
反町監督は松本山雅FCをJ2在籍3年でチームをJ1に導いた

 反町康治監督率いる松本山雅FC(以下、松本)がJ1自動昇格となるJ2リーグ戦2位を確定させた。その松本の練習場を訪ねて反町監督と話をしたのは今年の5月3日のことだった。

11月1日J2第39節対福岡戦に勝利しJ1自動昇格圏内の2位を確定させた
11月1日J2第39節対福岡戦に勝利しJ1自動昇格圏内の2位を確定させた

 練習を終えた反町監督は、話の冒頭から私にこう切り出した。「フェアプレーを大切にしている村井さんに質問があります。J1のフェアプレー賞には賞金があるのに、なぜJ2のフェアプレー賞には賞金が無いのですか? J1とJ2のフェアプレーの重さに違いがあるのですか?」と。

ボランティア組織『チームバモス』の田中昇さんと。2008年の北信越リーグからJFL、J2と現在までホームゲーム109試合連続出場中
ボランティア組織『チームバモス』の田中昇さんと。2008年の北信越リーグからJFL、J2と現在までホームゲーム109試合連続出場中

 私には返す言葉が無かった。彼は続けた。

 「フェアプレーは勝利のための重要な要素です。選手に常々『判定に関しての文句はすべて俺に言え。俺が代わりに言ってやるから。』と言ってます。レフェリーに文句を言っている間に隙ができてしまうからです。村井さん、私はお金が欲しくて言っているのではないのです。フェアプレーの重要性を村井さんがどのように考えているのか知りたいのです。」

松本市内にあるジンギスカン料理「かとちゃん」に貼られたポスター
松本市内にあるジンギスカン料理「かとちゃん」に貼られたポスター

 「文句はすべて俺に言え」と言うように、すべてを背負っているからこそ初対面の私にも直球を投げられるのだろう。本当のリーダーの覚悟を見た思いだった。彼の思いに私は動かされた。すでにシーズンは始まっていたが、私は実行委員会、理事会にJ2そして今シーズンからスタートしたJ3リーグのフェアプレー賞にも賞金を出すことを提案した。本来、シーズン途中でルールを変更することは相当イレギュラーなこと。リーグ間では予算枠もかなり違うので、同一金額とまではいかなかったのだが、関係者すべての賛同を得てJ2とJ3リーグにも賞金を授与することが決まった。

 昨シーズンの2013年、松本の反則ポイントの少なさは優勝したガンバ大阪に次いで2位だった。今シーズンは現在のところJ2ではダントツの1位をキープしている。1試合1枚の警告だと42節あるJ2だが、現時点でJ2平均の合計警告数が52枚のところ松本は34枚、まさに有言実行である。フェアプレーが勝利のための必要な要素であることを、身をもって示しているのだ。クラブに足を運び、現場を見なければサッカーの本質は見い出せないものだと教えられた貴重な体験だった。

  明確な哲学のあるクラブには、数多くの心底からクラブを支えてくれるファン・サポーターやホームタウンの関係者が存在する。ホームスタジアムのアルウィンで出会ったボランティアの田中昇さんは、北信越リーグ時代(J2の2つ下のカテゴリー)から連続100試合を超える試合をボランティアとして支えてくれている。田中さんは「いやあ、たまたま今まで試合の日に、結婚式も葬式もなかっただけですよ。」と笑って話されていたが、身も心もクラブに尽くしてくれているのはすぐに見て取れた。

 試合視察の前日、ホームタウンにある飲食店で食事をした。ジンギスカンとホッピーがおいしい店だ。貼られていた「信州にJチームを」のポスターにそのまま長きに渡るクラブへの愛着が示されている。きっとポスターがボロボロになるまで貼り続けられるのだろう。

 クラブのキャッチフレーズさながらに、クラブ、チーム、ファン・サポーター、ホームタウンがまさに「One Soul」となって強い絆で結ばれている松本山雅FCの来シーズンの活躍が今から楽しみだ。