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2019 J1参入プレーオフ決定戦
2019 J1参入プレーオフ決定戦

コラム

青山 知雄の悠々J適

2015/7/19 13:00

“王国・清水”、リスタートへの誓い。名門は意地を見せられるのか(♯17)

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1993年のJリーグ開幕から一度もJ2に降格することなく戦い続けてきた清水エスパルス。昨シーズンも苦しみ抜いた末に最終節でJ1残留を決め、新シーズンの巻き返しを誓っていた。だが、今シーズンも思うような結果を出せず、明治安田生命J1リーグ1stステージは3勝4分10敗で最下位。リーグワースト2位の32失点を喫し、捲土重来を期した2ndステージ開幕戦ではヴィッセル神戸に0-5と大敗していた。この試合では相手ボールへの寄せの甘さがホームでの惨敗を招いていただけに、大榎 克己監督は鹿島アントラーズとの第2節に向けて「時間がない中でも守備をきちっと修正しよう」と考えて立て直しを図った。

迎えた鹿島戦、システムを3-1-4-2から3-5-2に変更して中盤の安定を狙った清水は、序盤こそ前節の悪夢を払拭できないような緩さが目についたが、後半に入ると粘り強い守備を披露し、体を投げ出してのシュートストップやゴールライン上でのクリアなど集中したプレーが目立つようになる。相手の決定力不足に助けられながら、チーム全体が守備意識を高め、ボールへのアプローチで厳しさを取り戻したように感じた。

「(ピーター)ウタカに代わって石毛(秀樹)が入った時点で、最低でも勝ち点1を狙うようにチーム全体で意思統一しながらシフトできた」と話したのは、鹿島MF小笠原  満男のPKを止めるなどファインセーブで完封に貢献したGK杉山 力裕。

守り切る狙いは自然と受け取れたが、攻撃面で大きな課題を残した試合だった
守り切る狙いは自然と受け取れたが、攻撃面で大きな課題を残した試合だった

相手のセットプレーに対してピッチ上の11人全員が自陣に戻るなど、確かに記者席から見ていても守り切る狙いは自然と受け取れた。だが、その一方で前半から引き気味のチームはFW陣が孤立気味になる場面が多く、あまり得点の匂いがしなかったのも事実。試合終了後、個人的には守備で手応えを残しつつ、攻撃面で大きな課題を残した試合だったと捉えていた。

ただし、ピッチの選手たちはもうひとつ手応えを感じていた。前線で攻守に奮闘する大前 元紀が「最近はミーティングでもしっかり話し合うことができている」と語ったように1stステージ終了後に実施した御殿場キャンプから選手同士のコミュニケーションが盛んになり、この鹿島戦でもポジティブに声を掛け合って割り切った守備に転じたことが無失点につながったという。

「チームとして意思統一して戦えたのは大きい」と語る犬飼 智也
「チームとして意思統一して戦えたのは大きい」と語る犬飼 智也

センターバックの犬飼 智也は試合後にこう教えてくれた。「今日はチーム全体で戦えていたと思います。ズルズル下がって最後のところで守る形になってしまったけど、全員が体を張っていた。最初は前から奪いに行こうとしたけど、うまく取ることができなかったのでボランチ2枚と声を掛け合って割り切った守備ができた。今まではそういうことができていなかったから、チームとして意思統一して戦えたのは大きい。自分としても前を向かせないディフェンスができた。今までこういう試合中のコミュニケーションや意思統一ができていなかったけど、これを当たり前のようにできないと。チームとして勝ち点をしっかり積み上げられるようにしたいし、まずは粘り強く戦ってワンチャンスをモノにしていきたい。今日の勝ち点1をリスタートに上向くきっかけにできたら」

思うようにいかないチームを立て直す際に守備から着手するのはサッカーにおける常套手段。ボールの奪い方や奪いどころなどを明確にして、チーム内に共通意識を持たせることを安定感回復への第一ポイントにして攻撃を構築していくことになる。

サッカーには「いい攻撃はいい守備から」という格言があるくらいだ。犬飼は「リスタート」という表現を使ったが、攻撃面を考えると清水はまだリスタートに向けた助走段階にあると言ったほうがいいかもしれない。

もちろん残り試合がどんどん減っていく中で、のんびりはしていられない。サッカーは点を取らなければ勝てないスポーツ。そこでカギを握るのが、7月に新しくチームに加わったFW鄭 大世だ。

選手登録の関係上、試合に出られるのは25日の川崎フロンターレ戦以降となるが、彼の加入で清水のサッカーが劇的に変化する可能性は低くない。強靭なフィジカルを武器にゴールを狙うだけでなく、前線で激しく追い回し、さらにボールを収めて周囲の押し上げを引き出せるタイプでもある。

新加入した鄭 大世には大きな期待が寄せられている
新加入した鄭 大世には大きな期待が寄せられている

2010シーズン途中までプレーした川崎Fでは「人間ブルドーザー」という異名を取るほどの力強さを売りにJ1リーグ112試合で46得点をマークしたが、今回の加入会見では「最近はプレースタイルが変わって、自分が周りを助けることもできるようになってきました。川崎Fでプレーしていた頃のような鋭さや荒々しさはない代わりに、全体的な能力が高まってきたと思っています」とプレースタイルの変化を示唆している。

とはいえ韓国の水原三星でプレーした今シーズンは、AFCチャンピオンズリーグで浦和レッズや柏レイソルと対戦し、抜群のフィジカルとテクニックを駆使して、前線で攻撃の基点となっていただけに期待は募るばかりだ。

清水は一度目のオファーを断ったというパワフルストライカーに二度目のオファーを出し、これを意気に感じた鄭が加入を決断したという。このオファーがクラブの歴史を変えるかもしれない。

犬飼は「テセさんは守備でも力になってくれるだろうし、ロングボールを胸トラップすることもできると思う。ボールの預け方を工夫したい」と期待を寄せ、大前は「(鄭は)周りがゴールを取ればいいと言ってくれている。前線でハードワークすれば攻撃も守備もハマるし、今までやってきたショートカウンターも狙えると思う」と前を向く。

前線で攻守に奮闘している大前 元紀
前線で攻守に奮闘している大前 元紀

2ndステージ第2節終了時点の年間順位は17位。ここからの戦いがクラブ、チーム、スタッフ、選手、そしてサポーターの今後を分ける。エースナンバー10番を背負う大前は「鹿島戦も勝ち点3を取るチャンスはあった。この悔しさを次にぶつけたいし、今後へのきっかけの試合にしたい」と言葉に思いを込めた。

清水サポーターは『「24年目もJ1」へ 怒涛の再発進』と書いた横断幕を張り出している。チームは想定外の大敗と全員一丸となったスコアレスドローを経て、チームは再出発のラインには立った。だが、“サッカー王国”というプライド、プロサッカー選手としての尊厳を見せるのはここからだ。

何かを変えられるのは自分たちだけ。守備という原点回帰を契機にしたい清水は、鄭の加入でさらに上向くことができるのか。すべての物語はすでに走り始めている。