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コラム

北條 聡の一字休戦

2015/7/28 10:50

日本最速の韋駄天はもう『どうにも止まらない』(♯20)

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戦術はロナウド――とは、イングランドの名将ボビー・ロブソンが口にした名言です。スペインのバルセロナ(スペイン)を率いた当時、メディアから「戦術がない」と批判され、思わず言い返したのが、このフレーズ。当時のロナウド(元ブラジル代表)と言えば、それはもう「どうにも止まらない」選手でしたね。同じブラジルの英雄アイルトン・セナが『音速の貴公子』なら、こちらは『音速の野獣』みたいな。速い、速い。とにかく、速かった印象が強いですね。

高速ドリブラーのオランダ代表ロッベンは、昨夏のW杯で時速37キロを計測したとか。
高速ドリブラーのオランダ代表ロッベンは、昨夏のW杯で時速37キロを計測したとか。

スピードスターなんて表現が盛んに使われるようになったのも、あの頃でしょうか。ティエリ・アンリ(フランス)もマイケル・オーウェン(イングランド)もアンドリー・シェフチェンコ(ウクライナ)も、みんな韋駄天。1990年代後半からアタッカーの「高速化」がぐんぐん加速し、20世紀にチラホラ見かけた『鈍足の狩人』(ゲルト・ミュラーとかね)は今、何処――といった感じでしょうか。この流れもまた、もう「どうにも止まらない」ようで……。

ちょうど1年前の夏、地球の裏側(ブラジル)でもスピードスターが大暴れしていました。オランダのアリエン・ロッベンとか。王者スペインを蹴散らした一戦で『時速37キロ』を記録!――などとオランダ紙『テレグラフ』が報じていました。何でもサッカー史上最速とか。どうやって昔の選手と比べたのか分かりませんが。当代随一のセンターバックであるセルヒオ・ラモス(スペイン)もチアゴ・シウバ(ブラジル)も、ロッベンのスピードについていけず、散々な出来に終わりました。


先週末の浦和戦で圧巻の「快走」を見せた永井。
先週末の浦和戦で圧巻の「快走」を見せた永井。


(速いのは)分かっちゃいるけど止められない――となれば、お手上げでしょう。世界は凄いですね。いやいや、我らがJリーグにも「いる」じゃないですか。名古屋グランパスの鬼足が。永井 謙佑選手のことです。先週末の浦和戦における「快走」は圧巻。20分にスピードに乗ったドリブルで浦和守備陣を正面からぶち抜いて同点ゴールをアシストすると、1分後には浅いラインの裏へあっという間に抜け出し、対応が後手に回った森脇 良太選手を一発退場に追い込みました。

ファウル以外に止める手立てがないという世界。浦和を「10人」にしたことが、その後の逆転劇の呼び水でしたね。独りで浦和をやっつけたようなインパクト。大暴れの引き金は左アウトサイドから左シャドーにポジションを上げたことでしょうか。その方が相手も嫌じゃないかと。一瞬にして裏を取られるリスクがある上に、激しいフォアチェックから球を失う恐れもあるわけですから。3年前のロンドン五輪でよく見かけましたね。永井選手に球を強奪された哀れなディフェンダーたちを。


「戦術は永井」――。西野監督の発言に注目だ。
「戦術は永井」――。西野監督の発言に注目だ。

ただ速いだけじゃない。際(きわ)の争いに負けない強さも魅力でしょう。どんなに練習しても身につかない永井選手の天賦の才(スピード)をフル活用したいものです。思えば、2002年日韓ワールドカップに出場したイングランドのスベン・ゴラン・エリクソン監督は、オーウェンの快足を十全に引き出すために最終ラインを下げて、前方にスペースをこしらえるカウンターアタックを戦術の柱に据えています。早い話が『戦術はオーウェン』ですね。その結果が、ベスト8でした。

永井選手もチームの性格(戦術)を決めてしまうだけの力を秘めた存在でしょう。お好みで「高さ」(ノヴァコヴィッチ選手)や「強さ」(川又 堅碁選手)をトッピングすれば、持ち味(速さ)がさらに生きるという好循環。ともかく、前線で虎視眈々と「裏抜け」を狙う永井選手は、対戦相手にとって悪夢でしょう。足が止まりやすい真夏の消耗戦。体力まであるスピードスターの犠牲者が続出しても不思議じゃないですね。そのうち、西野 朗監督が口走るかもしれません。『戦術は永井』――と。