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コラム

J2番記者リレーコラム オフ・ザ・ピッチのネタ帳

2015/12/15 12:19

J3降格の現実に大分は何を見る(#8)

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J3降格が決まり1週間余りが過ぎた。「あの悔しさを忘れちゃダメだし、心に留めておきながら次のステップ、次のシーズンに向かわなければいけない」(為田 大貴)、「あそこまで落ち込む時間が長かったのは僕のサッカー人生ではない。簡単に気持ちを切り替えられるものではない」(松本 怜)と、選手の思いは様々だ。

今季は苦難の連続だった。チームの柱となる選手が流出し、その穴埋めをできぬままシーズンが始まった。攻守でスタイルを徹底できず、監督が代わり、フロント、スタッフ、選手が一枚岩になれなかった。チーム誕生から22年、かつてはJ1でタイトルを獲ったことのあるチームの栄光は影を潜め、力なく敗れた大分トリニータの失望の日々を振り返る。

J1に在籍していたクラブとしては初のJ3降格となった。
J1に在籍していたクラブとしては初のJ3降格となった。

開幕前から不穏な空気が流れていた。「どのチームも毎年変わるものだが」と前置きしたうえで「昨年のメンバーで同じスタイルで戦うかと思っていたが、違う所だらけだった」と松本怜が振り返ったように、昨季の財産が残っていなかった。昨季の財産とは、コンパクトさを保ちつつ、最終ラインを高く設定して前線からの守備を強化。ボールを奪ってからの鋭いショートカウンターでゴールに結び付けるチームスタイルであり、「技術の高い選手が集り、絶対優勝できると思っていたメンバー」(為田)も入れ替った。

5年目の集大成としてシーズンを迎えた田坂 和昭監督だったが、4年間で培った貯金がない状況で、システムを変え、メンバーの組み合わせを変え、練習や選手へのアプローチを変え、何とか戦える集団にしようと試みるも、変化の全てが裏目に出た。6月に監督交代の荒治療で回復を目指したが、次期監督を招聘できず強化のトップが監督となる無策ぶりを露呈。だが、時期的なこともあってか、チームにはまだまだ余裕があった。

好転へのきっかけを手探りで求めていたこの時期、しかし、様々な側面から降格へのカウントダウンは着実に進んでいた。まず、攻撃の核として期待された風間 宏矢、岡本 英也、エヴァンドロ以外の新たに加わった2人の外国籍選手は、負傷や戦術面での不安などで主力になれず、シーズン途中に退団、もしくはレンタル移籍でチームを離れた。

課題とされた攻撃パターンの確立も困難を極めた。ゴールシーンはセットプレーか個人の力に頼ったものがほとんどで、選手たちかた「単調」や「間延びしている」などといった声が聞こえてきた。

現状を打破しようとクラブは補強を敢行する。永井 龍を皮切りに、荒田 智之、パウリーニョらを獲得して挽回を試みたが、付け焼き刃の感は否めないまま、チームとして機能できず、27節以降は降格圏を抜け出すことはなかった。

最後まで大分のスタイルを打ち出すことが出来なかった柳田監督。
最後まで大分のスタイルを打ち出すことが出来なかった柳田監督。

もう後がなくなった終盤戦では、柳田 伸明監督は次々と不可解なカードを切り、新しい選手が入るごとにチームの輪郭がますます歪んでいく印象だった。必死にゴールへと向かっていく姿はそこかしこで見られたが、戦術的なスタイルは最後までボヤけたまま。先制点を奪っても逃切る術はなく、黒星を重ねて迷走するなかでは、劣勢を跳ね返す力を養うこともできず、最後まで大分が打ち出すカラーは色を失っていった。

ルーキーの坂井などが出場機会を得ることで、育成型クラブとして再建のヒントを見た。
ルーキーの坂井などが出場機会を得ることで、育成型クラブとして再建のヒントを見た。

優勝を掲げて臨んだ今季だったが、抗う姿勢を見せることもできず、結果としても完全なる敗者に終わってしまった。ぞのなかで救いがあるとすれば、次のようなことだろう。終盤、厳しい戦いが続いていた試合で、為田がリーダーとしての自覚を認識してチームを引っ張り、ルーキーの坂井 大将、姫野 宥弥、2種登録の吉平 翼が出場機会を得て、貴重な経験を積み、育成型クラブとして再建のヒントを見た。

降格が決まった今、その現実は変えられないのだから、悔しさをパワーに変えなければいけない。冒頭の選手ら主力が残り、結束力を高め、若い力を引き出し、1年でのJ2昇格を目指してほしい。力のなさを痛感したシーズンは、クラブにとっても個々の選手にとっても、多くの試練を大分に与えたはずだ。

[文:柚野 真也]
1974年、大分県生まれ。専門業界紙や教育雑誌の記者を経てフリーライターとして独立。プロ、アマ問わず、あらゆるスポーツを幅広く取材するとともに、スポーツニュースのコメンテーターとしても活躍中。