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コラム

城福浩のサッカー観・戦・術~Supported by スカパー!

2016/1/6 16:16

「動かされない守備編」(#4)

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みなさん、こんにちは。城福浩です。

『城福浩のサッカー観・戦・術』は、サッカーの戦術について、映像を交えながら解説するコラムです。このコラムではここまで、ゴールを奪うために必要な『相手を動かす』戦術を3回に分けて解説してきました 。これまでは攻撃側の視点で『相手を動かす』戦術について解説してきましたが、第4回目のコラムでは守備側の立場に立ち、『動かされない守備』をテーマに解説していきたいと思います。

■サッカーにおける守備の基本
まずは本題に入る前に、守備の基本から整理していきましょう。攻守が激しく入れ替わるサッカーというスポーツにおいて、守備とは相手がボールを持っている状況のことを指します。守備の局面で重要なことは、それがどういう状況なのかをチーム全員で共通認識することです。

ボールを持っている相手選手に対して味方の誰かがプレッシャーをかけることができる(ポジションを取っている)状況かどうか。つまり、相手選手はフリーでボールを保持できている状況なのかどうか。ボールを持っている選手は誰(どういうプレーを得意とする選手)なのか。そして、どのポジション・エリアでボールを持っているのか。

守備側に回った時、まずはボールの状況を把握し、どういう守備の対処法をしなければいけないのか、チーム全員で共通認識することが守備のスタートと言えます。もちろん、ボールにプレッシャーをかけて奪えることが最良の守備の方法ですが、特に日本は、あの暑い夏をまたいでのシーズンとなるため、攻撃するための体力を残さなければならないと考えると、すべての局面でプレッシャーを掛けに行くわけにはいきません。

■動かされない守備
過去3回のコラムでも解説してきたとおり、相手も得点の可能性をより高めようと最終ラインに影響を与えるために、「パスとポジショニングで相手を動かす」プレーやサイドチェンジなど、あの手この手を尽くして揺さぶりをかけてきます。

相手に揺さぶられてスペースが空いた時にどう対処していくか。もしくはスペースを空けてしまいそうな局面をどうケアするべきか。守備時にはスペースを埋めることが原則で、スペースを埋めるための方法論はチーム戦術によって異なりますが、今回のコラムではスペースを埋めるためのベーシックな対応の仕方について解説していきます。それでは、具体的なシーンを映像で振り返りながら、解説いたします。まずは映像をご覧ください。

■ボランチのカバーリング
第4回目のコラムのテーマである『動かされない守備』編では、10月24日に行われた明治安田生命J1リーグ 2ndステージ第15節 川崎フロンターレvs横浜F・マリノスの試合と、同日に行われたJ1リーグ 2ndステージ第15節 FC東京vs浦和レッズのゲームをピックアップしました。まずは川崎Fvs横浜FMにおけるシーン①と②を見てみましょう。

ボールを保持した攻撃側の川崎Fは、高い位置でボールを受けることにより、横浜FMの右サイドバックを外へ引き出すことに成功しています。横浜FMの右サイドバックが引き出されたことで、センターバックとの距離が広がり、スペースができました。ところが、横浜FMのボランチの選手がその空いたスペースをカバーし、スペースを埋めた結果、センターバックは動かされていないため、横浜FMの最終ラインは影響を受けていません。結局、川崎Fのシュートは横浜FMのディフェンスの選手が体を張ってブロックし、失点の可能性を回避しました。

続いてFC東京vs浦和レッズにおける2つのシーンをピックアップし、『動かされない守備』について解説いたします。シーン③と④ではサイドチェンジをされた時に、どのようにスペースをケアしているか。2つのシーンはスペースを埋めるための対処法が分かりやすい場面と言えます。まずはシーン③を見てみましょう。

浦和は最終ラインを揺さぶるために、ボールを保持している右サイドとは逆のサイドである左サイドへのサイドチェンジを展開しました。FC東京の右サイドバックを引き出し、センターバックとの間にスペースを作ろうと試みました。しかし、FC東京のボランチが右サイドバックが引き出されたことで生まれたスペースをカバーしたため、結果的にスペースを作り出すことはできませんでした。そして、FC東京はボランチがスペースをカバーしたことで新たなスペースができましたが、そのスペースももう一人のボランチがさらにカバーしたことで、浦和の攻撃に対応しました。

サイドバックが引き出されて生まれたスペースをボランチが埋め、カバーに入ったボランチが空けたスペースには他の選手がポジションを横ズレしてカバーしています。スペースをカバーしたことで空いたスペースも決してルーズにせず、他の選手が対応するこのアクションの速さによって、FC東京の最終ラインは全く混乱していません。

続いてシーン④を見てみましょう。右サイドでボールを保持した浦和は、反対サイドである左サイドへのサイドチェンジを狙います。サイドチェンジによって、FC東京の右サイドバックは外へと引き出されましたが、いち早くボランチの選手が右サイドバックとセンターバックとの間にスペースを作らせないようにカバーに入っています。さらにカバーに入ったボランチが空けたスペースには、もう一人のボランチがカバーに入ることで、スペースを消しました。

最終ラインに生まれそうな穴を埋めるボランチのカバーの速さとボランチが最終ラインのカバーに入ったことで空いたスペースを他の選手が素早い横ズレで穴を埋めているため、センターバック2枚は影響を受けていません。センターバックが中央のポジションで相手の攻撃に対応できる局面を作り出していることで、相手の攻撃にも対処しやすい状況になっています。

■横浜FMとFC東京の守備
全てのシーンに共通していることは、サイドバックが空けた穴(スペース)をボランチがカバーしている点です。攻撃側のチャンスになり得るシーンでしたが、サイドバックが外へ引き出されても、しっかりとボランチが空いたスペースをカバーすることで、センターバックのポジションは動かされずに、最終ラインは4枚で相手の攻撃に対応することができます。

横浜FMとFC東京は、たとえ相手に揺さぶられたとしても、サイドバックが引き出されて生じたスペースはボランチの選手がカバーする意識が徹底されているため、守備における穴が開きません。

2015年の横浜FMとFC東京は、チャンピオンシップを制したサンフレッチェ広島に次いで、リーグ戦で2番目と3番目に失点が少ないチームでした。横浜FMは2014年はリーグ最少失点チームでしたし、以上の3つのシーンから“堅守”と言われる理由の一端をお分かりいただけるかと思います。

失点が少ない堅い守備にはそれだけの理由があるのです。横浜FMとFC東京は、ゴールを奪われないための『動かされない守備』におけるベーシックな対応が徹底されているチームと言えるでしょう。

第4回目のコラムでは守備側の立場に立ち、ゴールを奪われないための『動かされない守備』について解説してきました。主に相手に揺さぶられてスペースが空いた時には、どんなベーシックな対処法があるのか。それを中心にお話をいたしました。次回は攻撃時の『リスクマネジメント』について、解説いたします。次回もよろしくお願いいたします。

(#5へ続く)

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