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コラム

青山 知雄の悠々J適

2016/3/14 12:20

“3.11”から5年…仙台が”復興のシンボル”へ再び踏み出す

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東日本大震災発生から5年目。節目の“3.11”の翌日に行われた復興応援試合で、ベガルタ仙台が気迫溢れるサッカーを披露した。

ユアテックスタジアム仙台に鹿島アントラーズを迎え撃ち、被災地を本拠地に置くクラブ同士の対戦となった明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第3節。5年前の同じ日に行われるはずだった名古屋グランパス戦が前日に発生した震災の影響で延期となっていたこともあり、仙台の渡邉 晋監督は「あれから5年が経って、何事もなかったかのように鹿島戦ができたことに我々は感謝しなくてはいけない。選手たちにはミーティングで『当たり前を当たり前と思わず、日々暮らしていかなければいけない』と話した。おそらく5年前の“3.11”以降、ユアスタに足を運べなくなった方はたくさんいる。そういった方々の分まで我々は戦わなければいけない」と強い決意で選手たちをピッチに送り出した。

その期待に仙台イレブンが応えた。立ち上がりから高い集中力を見せ、開幕2連勝で乗り込んできた鹿島を激しいプレッシングで圧倒。「今日の前半に関しては、この3試合で一番良かった」(梁 勇基)。敵陣に押し込むと、8分にウイルソンの左クロスを金久保 順がダイレクトで合わせて先制。早い時間にリードを奪ったことで、ホームチームがさらに勢いづく。

ビッグセーブを連発し勝利に貢献した関。見事に監督の期待に応えてみせた
ビッグセーブを連発し勝利に貢献した関。見事に監督の期待に応えてみせた

この日の仙台は連動したプレス、セカンドボールへの反応、球際の強さで相手を上回る気持ちのこもった素晴らしいサッカーを披露した。後半に入って1点を追う鹿島が猛攻を仕掛けたが、日本代表GK六反 勇治の負傷離脱で出場機会を得た関 憲太郎がビッグセーブを連発。渡邉監督も「素晴らしいパフォーマンス。彼の良さや強みは知っていたので何の心配もしていませんでしたし、これくらいのことはしてくれるだろうという期待も持っていました。ただ、後半にあれだけ押し込まれる中で、彼のビッグセーブがなければ、あるいはクロスに対する冷静な判断と決断、そこに伴う技術がなければ、無失点に抑えることができなかったのではないかという部分はあります。本当に久々のゲームとは思えないくらいの高い集中力と素晴らしいパフォーマンスを披露してくれた」と絶賛する活躍を見せた。

試合は結局このまま1-0で仙台が勝利。最後まで集中を切らさず、節目の試合で白星を手にした。

鹿島MF遠藤 康が「戦う部分でベガルタのほうが上だった」と振り返れば、敵将の石井 正忠監督は「序盤からアグレッシブな展開になると予想していた。開始早々に失点したこと、相手のプレッシャーもきつかったことで受け身になってしまった。それが一番の敗因」とコメント。ホームの大声援を受けた仙台がユアスタでは昨年8月12日以来、実に丸7カ月ぶりとなる勝利をサポーターに、そして被災地に捧げた。

やはりホームでの歓喜は格別なのだろう。しかも特別な試合での勝利は、何にも代えられないものだ。左腕に“喪章”代わりの黒いキャプテンマークを巻いた富田 晋伍は、「被災クラブ同士、本当に意味のある試合だった。勝つことでいろいろなことを発信できると思っていたので、まずは勝ててホッとしています」と安堵の表情を見せた。ヒーローとなった守護神の関は「本当にパワーを与えてもらって、自分が持っている以上の力を発揮できた。皆さんの後押しは改めて素晴らしいと思った日でした」と話し、試合後の取材でテレビカメラに向かって「ありがとうございます」と頭を下げた。

ユアスタで丸7カ月ぶりの勝利。渡邉監督はサポーターへの感謝の言葉を惜しまなかった
ユアスタで丸7カ月ぶりの勝利。渡邉監督はサポーターへの感謝の言葉を惜しまなかった

そして渡邉監督も「やはりサポーターがあれだけ喜んでくれる姿、あるいは笑顔を見ると、やはり我々はここで勝たなければいけないということを改めて感じさせられました。先週のFC東京戦でもそうでしたが、サポーターが試合前から本当に素晴らしい雰囲気を作り出してくれた。その期待になかなか応えられないことが続いていて、サポーターの方もやきもきされていたと思います。それに今日は特別な日でしたから、そういった中でサポーターと一緒に喜び合えたことは本当にうれしい」と喜びを隠さなかった。

試合前日、地震が発生した14時46分にはチーム全員で黙とうを行った。ホームタウンにとって、そしてクラブにとっても“特別な日”を過ごして臨んだ鹿島戦。スタジアムから、そして被災地全体から大きな力をもらって戦い、白星を手にした。

ただし、当然ながらこの試合で勝つことだけが目的ではない。“被災地の希望の光”となるために、仙台には結果を出し続けることが求められる。それは渡邉監督も十分に理解している。

「選手たちは(気持ちを)プレーで表現してくれたと思います。一日だけで何か報われるわけではありませんが、この鹿島戦の勝利で少しでも被災地の方々、あるいはご遺族の方々に笑顔や感動を届けられることができたのであれば、我々は“復興のシンボル”として今一度踏み出すことができるのかなと。ただ、これで終わりではないので、今日のようなゲームをこれからもずっと続けていくこと。それが我々に課された使命だと思うので、努力しながら選手たち、そしてサポーターと一緒に歩を進めていきたい。そしてユアスタこそが我々が勝利する場所であるということをしっかり取り戻したい」

“被災地の希望の光”となるために、仙台は再び“復興のシンボル”として歩み始めた
“被災地の希望の光”となるために、仙台は再び“復興のシンボル”として歩み始めた

結果を出し続けることで少しでも笑顔を増やしたい。そして復興へ向かう被災地に元気と活力を与えたい――。鹿島戦で見せたアグレッシブなサッカーには、震災発生直後のシーズンに一丸となって快進撃を続けたチームを思わせるものがあった。5年目の節目に行われた“特別な試合”でクラブの存在意義と戦う姿勢を見つめ直した仙台が、再び“復興のシンボル”として歩み始めることを誓った。