クラブ史上初のJ2を戦っている岩手の指揮を執るのは、日本代表DFとしても活躍した秋田 豊監督。今季が就任3年目で、昨季は混戦の明治安田J3を2位で勝ち抜き、昇格を実現した。今季のリーグ戦はここまで22試合を戦い、6勝4分12敗の21位と降格圏に沈んでいるものの、6月のリーグ戦では4試合を戦って2勝2分と持ち直している。
その好転のきっかけとなったのが、6月1日に行われた天皇杯2回戦・町田戦だった。その試合前までは7連敗のあと、1勝を挟んで3連敗と苦しい結果が続いていたが、町田戦では前半に待望の先制点を記録。「ケネス(オタボー)のゴールが流れを変えた」(秋田監督)と、チームは今季公式戦初の3ゴールを奪い、手ごたえのある勝利をつかみ取った。
それまでのリーグ戦では18試合で11得点と得点力に大きな課題を抱えていたが、6月以降は公式戦5試合で10得点。秋田監督が「球際の強さと切り替えがチームの生命線」と語るように、この2点での強度が戻ってきたことが好調の最大の要因だ。1試合ごとにほぼすべてのメンバーが替わるほどの大胆なターンオーバーを採用することでフレッシュな状態を維持。さらにポジショニングの改善と試合中の修正も進んでいる。岩手の持ち味でもあるハイプレスがハマる場面が増えてきたことで、ショートカウンターを効果的に発動でき、得点力向上につながっている。
対する福岡を率いるのは就任3年目となる長谷部 茂利監督。ここまでJ1リーグ戦17試合を終えて4勝7分6敗、勝点は19で降格圏まで勝点3差という状況だ。勝点が積み上げられていない最大の要因は得点力不足にある。天皇杯2回戦では沖縄SVを相手に3ゴールを決めて快勝したものの、リーグ戦に目を向けると、総得点はリーグ最少の『12』。リーグ戦では全試合出場中の山岸 祐也が4ゴール、ジョルディ クルークスとルキアンが2ゴールを挙げているが、複数得点者はこの3選手のみと物足りなさは否めない。
一方、守備面は機能性を保ち結果を残している。リーグ最少の13失点という数字を考えれば、現状、日本一の堅守を誇るチームとも言えるだろう。リーグ前節で清水に今季最多の3失点を許した点は気がかりだが、どのような修正を施すかにも注目したい。
ともにここまでの試合で得点力に難があることを考えれば、必然的に先制点の比重は高くなる。岩手は先制したリーグ戦での無敗記録を、前節・徳島戦で37試合に更新。約2年もの間、先制した試合では敗れておらず、28勝9分と勝率も高い。福岡も今季リーグ戦で挙げた4勝はすべて先制に成功しており、先制した5試合は無敗となっている。勝ちパターンが似通っている両者。先制点がどの時間に、どちらに転ぶかが最大の焦点になりそうだ。
[ 文:髙橋 拓磨 ]