昨季、Jクラブがなかった奈良県からJリーグ参入を果たした奈良。奈良県はJ3ライセンス交付の要件を満たすスタジアムがロートFのみであり、昨季のすべてのホームゲームをロートFで行ってきたが、規定の要件を満たすナイター設備が整っておらず、夏にもデーゲームでリーグ戦を行った。今年の初めには念願のナイター設備が整い、2月17日に点灯式とプレシーズンマッチを行っているが、JリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド2回戦が奈良にとって初のナイトゲームとして行う公式戦となる。さらに、奈良がホームにJ1クラブを迎えて公式戦を行うのも今回が初。“初めて”が重なるこの試合は、フリアン監督が語ったとおり、「奈良県にとって、新たな歴史の1ページに加わる日」となるだろう。
奈良は昨季がJ参入初年度ながらJ3にて5位フィニッシュと健闘。しかし、今季は明治安田J3を第10節まで終えて1勝5分4敗と、思うような結果を得られていない。奈良が志す“情熱”の見える、攻守ともにアグレッシブなサッカーの質そのものが落ちているわけではないが、ここまでの試合では、終盤での失点で勝点を取りこぼす口惜しい試合が続いた。この試合では、「(広島は)J3ではないようなスピード感や技術を持ったチームだと思うので、守備の時間が長くなるだろうということは想定している」と語ったフリアン監督。「ミスをしないよう、賢く守ること」がカギとなるだろう。
すでに2種登録が完了し、Jデビューを果たしている奈良ユースの関口 智也に加え、川井 大地と林 克俊の2種登録も完了した。これまでもトレーニングや練習試合に参加しており、奈良の一員としてプレーすることも十分可能な状態。連戦から1週間が空いたことで、軽い負傷があった選手も復帰しており、いつにも増して、誰が出場してもおかしくないようなチーム状況だ。
これまでのリーグ戦で苦しんできた奈良に対し、広島はJ1を第9節まで終え、4勝5分の戦績で、3位につける。J1においていまだ黒星をつけていないのは広島のみ。2022年のルヴァンカップ王者である広島もまた、シードがついていたため、この2回戦がルヴァンカップの初戦となる。
J1で6得点を挙げている大橋 祐紀のほか、加藤 陸次樹や満田 誠などのチャンスメークも攻撃の強みだが、第9節のアウェイゲームから中3日で臨むこの試合では、これまで出場時間が少なかった選手たちのチャンスの場となる可能性もあるだろう。今月初めには広島ユースの井上 愛簾、木吹 翔太がプロ契約を締結している。この試合では、未来の広島を担う若手選手が躍動する姿も見られるか。
東京Vが待つ3回戦へとコマを進められるのは、下克上を狙う奈良か、それともJ1無敗の広島か。ロートFが初めて興行試合で灯すあかりの下、その火ぶたが切られる。
[ 文:前田 カオリ ]


