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開幕戦J1日程
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かつてYoung Gunsとして活躍したJリーグに名を残すレジェンドたちが、自分自身の若手時代と現在の若手選手について語るひととき「Young Guns Talk - legendary edition」。今回はJリーグ初の日本人得点王に輝き、浦和レッズ一筋を貫いた福田正博。

失敗を恐れずに、自分が好きなこと、思い切ってやっていた。

──まずは福田さんがサッカー選手としてデビューした時の話を教えてください。
「僕は大学を出て三菱重工のサッカー部に入ったんですが、残念なことに僕が入る直前に、日本リーグの1部から2部に落ちてしまったので、僕のデビュー戦は2部リーグでの試合になります。しかも試合会場は、いつも練習していたような河川敷の土のグラウンドでした。相手は今の鹿島。当時の住友金属と戦って、確か引き分けだったかな。僕自身は点を取れなかったし、思うようなプレーもできなかったけど、やっていけるという手応えを掴めた試合だったと思います」

──最初のシーズンに36得点を記録して、得点王になったんですよね。
「大学時代は3年、4年の時にあまりいいパフォーマンスができなかったんですが、三菱に入ってかなり厳しいトレーニングをして、身体が絞れていたこともあったし、チームも自分のプレーというのを生かしやすい戦い方をしてくれていたので、本来持っている力を十二分に出せたシーズンだったかなと思います。まあ、怖いもの知らずでしたね。失敗を恐れずにやっていましたし、失敗しても監督が責任を取ってくれましたから。自分が好きなこと、思い切ってやっていた。そういうことがいい結果に結びついたのかなと思います」

やるべきことを整理することで、自分の役割が明確になっていく

──若手時代はどういった選手だったのでしょうか?
「生意気なクソガキですね(笑)。当時は22歳だったんですが、ちょっと残念なことに、自分で何でも変えられると勘違いしていた。周りの人への感謝とか、一切考えていなかったですね。とにかく自分のところにボールをくれれば何とかするからというプレーをしていて、先輩方からすれば生意気な奴に映っていたと思いますよ。ただ悪気があってやっていたわけではなくて、勝ちたい、上手くなりたい、強くなりたい。そういう想いだけでプレーをしていたんです。まあ、周りの方には迷惑な人間だったと思いますが(笑)。

だから、当時の僕を思えば、今の若いJリーグの選手たちはしっかりしてますよ。注目されているなかで、メディア対応、ファン対応、スポンサー対応、プロとして重要なことをしっかりと教育を受けているから、外れたことは言わないですよね。僕はそういうことが理解できていなかったから、なにをしゃべっているかわかってなかったし、監督批判とかも平気でしてました(笑)。そういうことが許される時代だったのもありますけど」

──生意気だった福田さんが、変わったきかっけはなんだったんでしょうか?
「やっぱり、指導者ですね。指導者が気付かせてくれました。『君が点を取れるのは、周りのサポートがあるからだ』と。そういうことに気付くと、周りの選手を信じてゴール前で待つことができる。そして周りを信じれば、結局は自分も信じてもらえるようになるんです」

──具体的に、どの監督だったんですか?
「ホルガー・オジェックですね。95年に彼に出会って、大事なことに気付かされました。僕はJリーグがスタートした93年は4点、次の年は6点しか取れなかったんですが、95年に32ゴールを決めて、得点王になったんです。

なぜ飛躍的にそこまで成績を伸ばせたかといえば、1年目、2年目は勝ちたい思いが強すぎて、自分で何とかしないといけないと、いろんなことをやりすぎてしまったんですね。でも、いろんなことをやりすぎてしまうと、すべてのことが中途半端になってしまう。これがチームのためになっていなかったわけです。そこをオジェックが整理してくれた。『君はFWなんだから、点と取ることが仕事だ。いろんなことはやらずに、まずは自分のプレーをしっかりしなさい』と。そうやってやるべきことを整理してくれたことで、自分の役割が明確になっていきましたね」

──得点王が現実のものとなるなかで、プレッシャーはなかったんですか?
「あの頃は、名だたる外国人のストライカーがたくさんいましたので、日本人が得点王を取るのはなかなか考えづらかったんですけど、そういうチャンスが出てきたシーズン終盤は、ちょっと意識したところはありましたね。自分の意識もそうだけど、周りも取らせたいという空気になってきて。浦和のサポーターだけじゃなくて、Jリーグ全体も日本人に取らせたいという雰囲気になってきたんです。そういう想いがだんだんと重圧になってきて、最後のほうはPKを外したりしたこともありました。でもそういうプレッシャーを受けながら、最終的に乗り越えて何かを手にしたという経験は、かけがえのない自信になりましたね」

──どうしてそのプレッシャーを乗り越えられたのでしょうか?
「チームメイトをはじめ、多くの人のサポートですね。プレッシャーって、意識すればするほど大きくなっていくと思うんですけど、そこに立ち向かっていく勇気が必要になる。何度もPKを外して心が折れそうになって、自信を失っていくじゃないですか。そういう中でもチームメイトがPKは蹴らせてくれたし、サポーターからもどうにかして福田に得点王を獲らせたいという想いがひしひしと伝わってきた。そういった想いが、僕の背中を押してくれたのかなと思いますね」

プロの世界に入ってきた以上は、批判を浴びる覚悟がなければいけない

──今、Jリーグでプレーする若手選手に関して、率直にどういう印象を持っていますか?
「とにかくうまい。技術的にもそうだし、サッカーをよく知っている。小さい時からしっかりとした指導を受けてきたんでしょうね。我々の時は、粗削りな人が多かった。足が速いとか、ヘディングが強いとか、ひとつの特長は持っているけど、ボールを上手く止められなかったり、ドリブルができなかったり、弱点を持っていたんです。ただ、その分、個性的な選手が多かった。でも今は全体的なレベルが高いけど、個性的な選手は少ないですよね。圧倒的な個性をもっと伸ばせればいいのになって思ってしまいますね。

発言を聞いていても、外れたことを言わない。みんな同じような答えをするところは、残念だなと。別に生意気なことを言えばいいってものではないですよ。他の人と同じじゃなくて、自分の言葉でしゃべってもらいたいんですよ。そういう意味では本田(圭佑)は個性があるし、セルフプロデュースが上手いと思いますね。そのぶん批判も浴びるし、いろんなものを背負わないといけないから大変だとは思いますけど、プロの世界に入ってきた以上は、批判を浴びる覚悟がなければいけない。むしろ、批判を浴びずに、同情されるようになったら終わりですからね」

チャレンジが、革新になったり、新しいことを生み出していくことにつながっていく。

──今年から、始まった若手の活躍を讃えるTAG Heuer YOUNG GUNS AWARDについては、どう思いますか?
「本当にいいことだと思います。若手の一つの目標になるし、モチベーションにもなる。顔と名前を多くの人に知ってもらうきっかけになるだろうし、そういう賞をとることがきっかけで代表に上り詰めていく選手も出てくるはず。だから、こういう賞があるのは素晴らしいことだと思います。僕らの時はなかったですから。なぜ作らなかったんだと(笑)。今は羨ましいですね。そういうものを目指してやってもらいたいし、そういう野心を持ってもらいたい」

──この賞には「革新は、いつだって若い世代から生まれる」というキャッチコピーがあります。この言葉は、その通りだと思いますか?
「やっぱり、若い世代だと思いますよ。年齢を重ねると、どうしても頭が堅くなるし、保守的になる。新しいことにチャレンジするという勇気というのは、どんどん薄れていきますね。若い時は失敗しても許されるから、いろんなことにどんどんチャレンジできるじゃないですか。そのチャレンジが、革新になったり、新しいことを生み出していくことにつながっていく。そういう気概を持ってやっていかないとだめだと思うんですよ。若い世代の人たちも、先輩たちが敷いてくれたレールの上を乗っていくのは楽じゃないですか。でも、楽をしては、いけないってこと。本当にそのレールでいいのかと。違うところに行こうよと。そういう生意気さを持つことが、新しいチャレンジになる。でも、それをするのには勇気がいるし、結果が出なければ批判されてしまう。でも、批判されても揺るがない、信念や覚悟があれば問題ない。一方で、上の世代の人たちがそういう若手のチャレンジを、容認したり、フォローしてあげられるような仕組み作る必要があるとも思うんです。若い世代が持つエネルギーを、正しい方向に導いてあげるのが、僕らの役割だと思う。この賞は、そういうきっかけになるものだと思いますね」

──福田さんがベテランになった時、若手に対してどういう想いを抱いていました?
「(ライバルなので)いなくなればいいのになと思ってました(笑)。生意気だな、とは思ってないですよ。僕はもっと生意気だったので。だから、もっと生意気でいいのになと思っていました。一方で、こういうことに気が付けば、もっと良くなるのになとも思っていましたよ。田中達也もそうですし、原口元気もそう。ちょっと、このポイントに気づけば、飛躍的に良くなるのになって、ずっと感じていましたね」

──若手の突き上げは、やはり脅威となりますか?
「それはありますよ。年齢が違ってもライバルですから。下からの突き上げがあれば、自分の仕事がなくなってしまう可能性があるわけです。ただ、そこで負けたくないと思ってやれるから、ベテランの選手は頑張れる。そうやって切磋琢磨することで、相乗効果が生まれると思うんですよ。若い選手は、ベテランの肩を叩くくらいのその生意気さを持ってやってもらいたいですね。ただ、そこにはリスペクトが必要。そのうえで、ポジションを奪ってやろうという気持ちが若手の成長につながるし、経験のある選手にとっても刺激になる。遠慮することなんてないですよ。ピッチの中では年齢は関係ないですから。そういう環境を作れるのは、やっぱり若手なんです。若い選手は遠慮せず、もっとガツガツとやってもらいたいですね」

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