3月18日(土) 2006 J2リーグ戦 第3節
東京V 1 - 0 愛媛 (14:04/駒沢/4,196人)
得点者:'80 永井秀樹(東京V)
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「寒い試合を見せてしまってすみません」。監督会見の最後、東京V・ラモス監督はこう切り出した。そして「若い選手がいきいきしていてこれからが楽しみなチーム。(経験の浅いうちの)3試合目で当たったうちはラッキーだった」と敗者・愛媛FCへの賛辞が続く。J1から降格してきたチームとJ2に昇格したばかりのチームの試合、結果は前者の『辛勝』だった。
立ち上がりから「高い位置で取って前から仕掛けたかった」という望月監督の構想通り、アグレッシブに前線から守備を見せる愛媛に東京Vは圧倒された。主導権を握るはずがリズムを掴めないまま、6分には愛媛DF井上からのロングフィードにFW田中が抜け出しGKと1対1という場面。このシュートは枠を捉えず難を逃れたが、『ポゼッションに勝る東京Vの攻撃に耐え、カウンターを狙う愛媛』という単純な図式通りにいかない空気が流れ始める。東京Vが繋ごうとするボールは中盤でカットされ、愛媛はボールを奪った後素早くスペースへ放り込む、もしくは繋ぎながらチャンスを狙う。MF石丸が開始15分で左足を痛めピッチを去り、攻守の要を失った愛媛が守勢に回るかと思われたのも束の間、21分、CKからFW田中がゴール至近距離でシュート、27分には右SB森脇がドリブルで駆け上がりそのままミドルシュート。
「萩村さんが永冨選手を、自分が田中選手を見る、と役割分担してからは恐さはなかった」とDF戸川が言う通り、愛媛にそうビックチャンスがあったわけではない。ただ、それ以上に東京Vにはゴールの匂いが生まれなかった。パスは繋がらず、クロスやロングフィードの精度も低い。攻守の連動性、運動量、コミュニケーション・・・「いろんな面で少しずつ足りない(DF戸川)」事が、チームが熟成していな現状を露呈していた。
公式記録では前半のシュート数、愛媛6本に対し東京Vはわずかに1本。終了間際にあわや愛媛のオウンゴールというシーンもあったが、殆どノーチャンスで45分を終えたことになる。サポーターからのブーイングを背にロッカールームに戻ったラモス監督がとった策は、セットプレーのキッカーとしても武器になるMF大橋を下げ、MF永井を投入するというもの。
その後半、永井はそのまま右サイドの位置に入り、ボランチ大野がポジションを前目に上げ喜名のワンボランチにシステムを変更。これでツートップへのサポートが入るようになり「やりやすくなった(FW平本)」東京Vは徐々にボールと人が動きだす。更に55分にはDF萩村が左足を痛めてというアクシデントからではあったが、ラモス監督がキックの精度を高く評価しているDFデジマールが投入され、FKからの得点の期待も高まった。
とはいえ、愛媛も前半同様運動量豊富にプレスにかかり流れを引き寄せきれない。そこでラモス監督は更に65分、FWバジーリオに替えFW斎藤を投入、勝負を賭けた。
その頃、愛媛には「ポゼッションするか前にいくかはっきりしない時間帯(DF金守)」が生じていた。攻撃に時間がかかり、アタッキングゾーンに入る前にボールを奪われ守備に回る時間が増えだす。ラモス監督の選手交代が少しずつ実を結び、ついに試合が動いたのは80分。中盤で平本が中央を走ってくる永井にボールを繋ぎ、ドリブルでDFを引き寄せた永井は右に走りこんだ斎藤にパス。その斎藤からゴール前でもう一度ボールを受けた永井は狙い澄まして右足でシュート。このゴールが決まり、ようやくゲームの均衡が破れた。
2002年仙台戦以来の永井の東京V復帰弾。しかし永井といえば2001年、降格争いの渦中にいたその年の最終戦(対F東京)で、J1残留を決定付けたあのゴールが印象的だ。今日のゴールも、苦しみ抜いていたチームを救う値千金のゴールとなった。
その後、愛媛も最後まで攻めの姿勢を見せるが、結局スコアは動かず試合終了。東京Vはなんとか勝ち点3を手にし、元J王者としての面目を保った格好。
「J2では勝ち点を取ることが大事」というFW平本の言葉は大いに頷けるところだが、それにしても今後への課題は山積みと言ったところか。
ゴール裏、緑の横断幕には『楽しめ、闘え』という文字が掲げられていた。しかし少なくともこの試合をのびのびと楽しんで闘ったのは愛媛の方だったことは間違いない。
以上
2006.03.18 Reported by 高木聖佳
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