AFCチャンピオンズリーグを並行して戦う過密日程は、時に懸念材料と見なされることも多いが、前節のＦ東京戦のような完敗直後に限っては「すぐに試合がある。この敗戦を引きずる暇はない」（工藤壮人）というように、次の試合に集中するためには即座に切り替えなければならない。そういう点では過密日程に救われる部分はある。

ただ、工藤はこうも言う。「もちろん反省すべきところはしっかり反省して、良い意味で切り替える」。そのチームとしての意識の表れが、異例の月曜練習非公開ではないだろうか。柏の場合、週に１試合の時は試合前々日の練習が非公開になる。だが、火曜や水曜にも試合を行うなど日程が詰まっている時は、前々日は調整程度の練習メニューとなるため公開となることが多い。ところが今回は月曜日の練習も非公開となった。しかもＦ東京戦の結果を受けての急な変更である。そこにネルシーニョ監督の「悪い流れを絶対に持ち越さない」という強い思いが表れているようにも見える。

橋本和、澤昌克に続き、ジョルジ ワグネルと、ここにきて怪我人が多発している点も気になる。主力の戦線離脱は痛手であるが、こういった事態に備えて柏は今オフに大型補強を敢行した。吉田達磨強化部ダイレクターも「アクシデントが発生した時に、すぐにスタンバイしている選手がいる状況が望ましい。何かのきっかけで全員がレギュラーに行けるようなチーム状況を作りたい」と語っているため、柏の大型補強の真価が早速問われることになりそうだ。

今回対戦するセントラルコースト・マリナーズは、フィジカルコンタクトに長けたオーストラリア独特のスタイルを踏襲しつつ、その反面、ロングボールだけに頼らずにパスで中盤を構成するなど地上戦をも得意とする。キープレーヤーは、ニュージーランド代表として2010年のFIFAワールドカップに出場した中盤のパサー、マイケル マクグリンチーと、現在オーストラリアＡリーグ得点ランキングトップにつけるダニエル マクブリーンの２人。この両者を中心に、第２４節終了時点でリーグ最多の４３ゴールを叩き出すという攻撃力が売りのチームだ。さらに、オーストラリアのＡリーグは秋春制のため、開幕したばかりのＪリーグ勢よりはコンディショニングの面でも分がある。攻撃力とコンディションを踏まえ、セントラルコーストの迫力あるプレーに押し込まれる場面が増えそうだが、近藤直也、鈴木大輔、増嶋竜也ら守備陣がどう耐え抜くか、そして中盤のマクグリンチーを抑えながら、前線のマクブリーンに当てた後のセカンドボールを柏のダブルボランチがどこまで拾えるか。勝敗のポイントは間違いなく守備面にあり、Ｆ東京戦で３失点を喫した守備が立て直されているかにもつながるだろう。そこは、月曜の練習を非公開にしてまで修正に取り組んだネルシーニョ監督の手腕に期待したい。

縦へのスピードはおそらく柏が優位。Ｆ東京戦の敗戦後には、工藤も田中順也も相手の守備網を打ち破るためには、ブロックの前でパスを回すのではなく、裏への飛び出しやダイアゴナルな動きが大事だと語っていた。Ｆ東京戦のノーゴールを猛省する工藤は「僕のゴールで悪い流れを断ち切りたい」と闘志を燃やす。レギュラー返り咲きを狙う田中も結果に飢えている。ACL貴州人和戦、Ｊリーグ開幕戦の川崎Ｆ戦と連続ゴールのクレオも徐々に調子を上げてきた。上記したように守備が安定しさえすれば、レアンドロ ドミンゲスを起点にした鋭いカウンターから、貪欲にゴールを狙うストライカーたち大仕事をやってのけるはずだ。

勝ってグループ首位をキープし、同時にリーグ戦完敗の悪い流れをここで断ち切る。「柏は絶対に連敗しない」。２０１１年まで続いたそのジンクスを、再びこのセントラルコースト戦から始めよう。

以上

2013.03.12 Reported by 鈴木潤