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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

二つのホーム

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二年前、ドイツ・バイエルン州にあるBad Griesbachという町からTest-Touristとして招かれた。ミュンヘンの北東約150km、なだらかな丘にある人口8,500人の小さな町である。温泉と8つのゴルフコースをもつスポーツ保養地。その一つに、「ベッケンバウアーコース」があり、サッカー関係者の間では有名な町らしい。 この町のクラブTSV Bad Griesbachを訪ねた。1888年創立、会員数は1,100人、サッカーの他、バレーボール、バスケットボール、卓球、空手、器械体操、ウォーキングの7種目が楽しめる。グラウンドの周りを、地元スポンサーの看板がぐるりと囲み、屋根に太陽光発電を施した日本家屋風のクラブハウス。模範的なスポーツクラブの有り様だった。 TSVのトップチームは、ブンデスリーガを支える底辺のリーグで戦っている。

クラブ関係者の一人が面白いことを教えてくれた。「我々には、ホームチームが二つあります。一つは、もちろん地元TSV。もう一つは、地元のエリアを代表するバイエルン・ミュンヘンです。」なるほど、チームカラーは、ともに赤と白。TSVはクラブとして、バイエルンのオフィシャル・サポーターズクラブに2番目に加入した筋金入り。メンバーには、その印として、赤・白の小さな毛糸の帽子が贈られる。ブンデスリーガで常に優勝をめざす「B・ミュンヘン」と、それを支える小さな町の「TSV Bad Griesbach」のコントラストがいい。 両者は、単なるTSVの一方的な関係ではなかった。今年8月には、TSVのグラウンドで、メーメット・ショル監督率いるバイエルン2軍チームとドイツ連邦軍隊の代表チームとのチャリティマッチが行われた。ゲームの収益金は、連邦軍家族の児童救済活動資金に充てられたという。 16年前、Jリーグは、企業内チームが外に抜け出し、地域のプロクラブとして創まった。各クラブは“ホーム”を定め、サポーターは地元に根づいたチームを応援する。

ドイツでは、自らがプレーしたい人たちが集まり、地域のスポーツクラブが全国に創られた。今日2万5千超の“ホーム”が誕生し、誰でも純粋にスポーツを楽しむことができる。一部のクラブでは、トップチームが企業化され、地域を代表するプロとなった。 こうして百年の歳月を経た“ピラミッド”の中に、二つの“ホーム”が存在していく。それは、自らプレーを楽しめる場であり、みんなと一緒に地域を応援できる場である。 自らが小さければ小さいほど、暗ければ暗いほど、相手の灯りの存在が見えてくる、相手からの光を受けやすい。Jリーグが百年かけてめざす「おらが街のホーム」と「JクラブやJをめざすホーム」双方が支え合う“ピラミッド”の上に、未来はかがやいている。