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第18節 6.16(日) 14:00KO 国立競技場 神戸vs川崎F 国立競技場に小中学生合計10,000名様を無料ご招待
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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

ゆりかごから…

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20話でご紹介したFCバーゼル(スイス)のホームスタジアム:ザンクト・ヤコブ・パルクを先日再び訪れた。そのファンショップに、生後間もない赤ん坊を抱いた一人の母親が入ってきた。Kidsコーナーで可愛い小さなユニフォームセットを手にした彼女の顔に、一瞬笑みが浮かんだかに見えた。“これで、夫がベルン・ヤングボーイズのファンであっても、この子は、自分と同じFCバーゼルの洗礼を授かったのよ”と。 “KidsClub”という子どもの会員組織をもつクラブが増えて来た。たとえば、バイエルン・ミュンヘン(独)の場合、6~12才を対象に会員を募集。

特典として、会員証、Tシャツと帽子、誕生日プレゼント、マスコットの熊Berni君からのマガジン誌、プレーと練習付きの子ども向けプレスカンファレンス参加、アリアンツ・アレナでバースディパーティ(有料)など楽しい内容が盛り沢山である。 最近、欧州のファンショップには幼児向けのグッズが目立つなど、ターゲットがさらに低年齢化している。売り場は、入口脇のすぐ目につきやすいところが一般的だ。そのわけをクラブ関係者に聞くと、「親に連れられスタジアムに来た子どもたちは、すでにどこのファンかはっきりしている。だから、その前の幼児段階から取り込むのです。」なるほど、ドイツ3部リーグのディナモ・ドレスデンの売り場には、幼児用(5~20カ月)のエンブレム付おしゃぶりがたくさん置いてあった。 スコットランドのセルティック・グラスゴーの“Young Hoops Club”の入会申込用紙には、0~3才が対象とある。

Hoopsフープスはクラブの愛称で、ファンショップの子ども売り場の案内板には、Hoopsをもじって“Bhoys”と表示されていた。会費は年15ポンド(約2,100円)、会員になると、メンバーズカード、コップ、ミニサッカーボール、5ポンド(700円)の商品券、選手のサインカードなどの特典に加えて、ホームゲームのマスコット・ボーイ(ガール)になるチャンスが与えられる。さらに、シーズンの最後には、会員限定のイベントが開催される。 バーゼルのスタジアムは、公共交通や高速道路に近く、周りに緑の多い街中にある。上部階には、107戸の介護付き高齢者向け賃貸マンションが併設されている。専用観戦ラウンジはお年寄りに人気があり、月賃貸料2,000SFr(約17万円)ながら満室だという。 「あなたにとって、スタジアムとは何でしょう?」と欧州各地で問えば、多くの人びとが、“ふるさと”、“宝”、“誇り(プライド)”、“想い出”と口を揃える。クラブのファン獲得の最初の瞬間は、ごくあたりまえに、ゆりかごから始まっている。