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今日の試合速報

GWはJリーグに遊びに行こう!12万名様ご招待
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コラム

百年構想のある風景

2015/1/30 10:00

ホスピタリティ

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進化を続けている欧州のスタジアム視察の最後は、スコットランドの首都エジンバラにあるクラブ:ハート・オブ・ミドロシアンのホーム、タインキャッスルスタジアム(17,420人収容)。キックオフ直前、場内アナウンスで「本日は、日本からJリーグの一行がお見えです」と告げられた。満員の観客から歓迎の拍手と歓声を浴びて、我々もそれに応えるべく全員立ち上がり手を振った。実は、今回の視察の一連のアポイントをとった時点で、我々の来訪は当日のマッチ・デー・プログラムにもJのロゴ入りで取り上げられていた。

ホスピタリティとは、ラテン語の「客をもてなす」の意からできた言葉。こうした心温まる“おもてなし”は、毎回、試合開始1時間半前から始まっていた。ホームのゴール裏コンコースに設けられたラウンジに案内されると、8人掛け円テーブルがたくさん並ぶ。着席スタイルで提供される暖かい食事をとりながら、中央ステージに立つ司会者の演出を楽しむ。 各テーブルの招待客が紹介された後、往年の名GKの登場というビッグサプライズに場内は沸く。出場できない現役選手も、各テーブルを挨拶に回りサービスする。試合後、予め注文を聞かれていた飲み物で体が温まった頃、ゲームで活躍した選手が現れる。インタビューや記念写真タイムで座は再び盛り上がり1時間ほどしてお開きとなった。 西洋史に詳しい木村尚三郎氏によると、欧州では、昔から「食べる」ことに特別な政治的、社会的な思想を付与してきたという。それは「食べ合う」「共に食べる」ことの楽しさであり、宴会(パーティ)が人と人とを仲良くするための手段や機会として、とても大切にされてきた。

今日の“会議”の起源と言われる中世の封建会議では、本来の討議よりもこうした懇談会や宴会の方にむしろ重きが置かれていたという。 それは、今も変わらない。世界各国から代表が集まる国際会議では厳しい議論がしばしば交わされ、それにより加え、あるいは受けるストレスは決して小さくない。このため、会議のあとに必ず設けられているカクテルパーティや会食は、会議で受けた傷をいやし、人間関係を回復するための、昔からの知恵だという。 同様に、“ホーム”という意識を共有できるスタジアムを通して関係づくりが行われている。欧州のスタジアムには、ホスピタリティ・ゾーンと呼ばれる大小のラウンジが必須の空間となり、日常から地域の社交場として活躍している。昨年完成したディナモ・ドレスデンのルドルフ・ハルビッヒ・スタジアムの建設に際して、市長曰く「これからのスタジアムは、経済的な合理性もいいが、もっと感情(Emotion)を大切にしようよ」。