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コラム

青山 知雄の悠々J適

2015/5/16 13:37

「YOSHI METER」とゴールへのこだわり(♯11)

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左サイドからドリブルで切れ込んで右足を振り抜き、強烈にゴールネットへボールを突き刺したのは、ヴェルディ川崎のマイヤーだった。カズ(三浦知良)か、ラモス瑠偉か、それともラモン・ディアスか。木村和司の直接FKがあるかもしれない。そんな自分の楽しみを、思わぬ伏兵の一発が一気に吹き飛ばした。

1993年5月15日に華々しくスタートしたJリーグ。テレビ画面の向こう側で繰り広げられるヴェルディ川崎と横浜マリノスの開幕戦を見ながら、記念すべき初ゴールを楽しみにしていたことは懐かしい思い出だ。

あの日、あのゴールから22年。J1リーグ戦は6224もの試合が行われ、計1万8459ゴールが生まれてきた。2451人がピッチに立ち、1482人が得点をマークしている。

Jリーグの22年間で最もゴールを決めたのは中山雅史。ジュビロ磐田で積み上げた得点は157に上り、1998年には4試合連続ハットトリックのギネス記録を含めて27試合36得点という驚異的な得点率を残した。まさに日本サッカー史上に残る偉大なストライカーだ。

J1リーグ通算157ゴールの最多得点記録を持つ中山 雅史。
J1リーグ通算157ゴールの最多得点記録を持つ中山 雅史。

そして今シーズン、中山の最多記録に迫ろうとしているストライカーが3人いる。

マルキーニョス(ヴィッセル神戸)は明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第10節湘南ベルマーレ戦で史上2人目となる通算150ゴールをマークし、佐藤寿人(サンフレッチェ広島)はヴァンフォーレ甲府との開幕戦で開始10分にゴールを決めて今シーズンのJ1ファーストスコアラーとなった。青山敏弘の糸を引くようなフィードから巧みに前方へ胸トラップして豪快に左足を振り抜いた一発は記憶の方も多いだろう。このゴールを含め、佐藤は現在147ゴールで史上3位につけている。

そして今、最も勢いを感じるのが、通算141ゴールの川崎フロンターレFW大久保嘉人だ。5月2日のJ1リーグ 1stステージ 第9節FC東京戦でカズの通算ゴール数を超える140得点目を決めて“カズダンス”を踊ったことが話題になったが、2013年の川崎F移籍以降、驚異的なペースで得点を重ねている点は見逃せない。移籍前までの通算ゴール数は89で、2013シーズンに26ゴール、2014シーズンに18ゴールを奪って2年連続のJ1単独得点王に輝き、今シーズンも11試合8得点というハイペースで数字を伸ばして一気に歴代最多得点更新を視野に入れた。

日本代表のヴァイッド ハリルホジッチ監督も就任当初は年齢を理由にメンバーから外していたが、やはり彼の決定力は見逃せなかったようで、5月中旬に行われた日本代表候補合宿のメンバーにリストアップしている。

「日本代表には本当に得点を取る選手が少ない。大久保は2シーズン続けて得点王になっていますし、今シーズンも得点王を取りそうなペース。理由は簡単です。32歳であろうが全然問題ない。逆になぜ呼ばないのかという状況。フィジカルの能力もあるし、代表チームに何かをもたらせると考えたからです」

3年連続得点王を目指す大久保は、最多得点記録の更新も射程圏内。
3年連続得点王を目指す大久保は、最多得点記録の更新も射程圏内。

「候補」ながら、FIFAワールドカップ ブラジル大会以来となる日の丸を着けた大久保に、日本代表についての思いを聞いてみた。

「代表に入っていない時から『また選ばれたい』と思っていたけど、改めて練習に参加すると、代表に入りたい気持ちが改めて湧いてきた。自分が代表に入るためには、点を取り続けることが必要。むしろ年齢を考えたら、若い選手よりも多く取らなければ選ばれないと思う。ずっと結果を出し続けなければ呼んでもらえないことは分かってるから、これから先も結果を出し続けていきたい」


川崎Fで大久保が得点を決めると、スタンドに掲げられた「YOSHI METER」が回転する。

これはメジャーリーグでプレーするイチロー外野手の通算安打数を示すために掲げられていたボード「ICHI-METER」が元ネタで、ゴールを量産する大久保のために2013年夏に川崎Fサポーターが用意した通算得点数メーターだ。「シーズン得点王という小さな枠に収まらないで、通算得点記録を更新して歴代最高のストライカーになってほしい」という理由から当該シーズンのゴール数ではなく、通算得点数を掲げた横断幕。大久保自身にも「とりあえず200ゴールが目標だね」と話して、出すようになったそうだ。

スタンドに掲げられるYOSHI METER。この数字は現在141まで伸びている。
スタンドに掲げられるYOSHI METER。この数字は現在141まで伸びている。

せっかくの機会なので、少し「YOSHI METER」の裏話を紹介しておこう。

数字部分はマジックテープ仕様になっていて、一度横断幕を引き上げて張り替える。ゴール数は「999」まで対応可能で、等々力陸上競技場のケースだと、担当のサポーターが「Gゾーン」と呼ばれる応援席から新しい数字を持ち、1階から2階へ階段を駆け上がって交換に向かっているんだとか。ゴール直後に張り替わっているように見えるのは、担当者が大久保がチャンスを迎えそうになった瞬間に走り出しているから。一試合に何度も階段を上下動するハードワークぶりだという。いつも得点後にマフラーを振り回して歌われる「Basket Case」が歌い終わるまでに新しい数字を出すのが目標で、最近は横断幕の近くに座っている人が先に引き上げてくれているそうだ。

もちろん大久保自身も数字はチェックしているようで、「ヨシメーター、もちろんちゃんと見てますよ」と笑う。そして「ゴンさん(中山雅史)の記録を目指すのは当たり前。常に点を取るためにやってるからね。これからもヨシメーターを回していきますよ」と笑顔を浮かべていた。

得点が自分の価値を高める。そして自分の存在意義を示すことになる。その意味は自分自身が一番知っている。だからこそ、川崎Fでのゴール量産を誓う。「YOSHI METER」が今のままハイペースで回り続ければ、サポーターの願いどおりに大久保が「歴代最高のストライカー」となり、ロシア行きの切符を手にするはず。少し先ではあるが、そんな日が来ることを、大久保自身も川崎Fサポーターも待ち望んでいる。そんなことを思った5.15だった。