富山は昨季の1stラウンド3回戦でPK戦の末に神戸を破り、J3勢で唯一プレーオフラウンドに勝ち残った。11年ぶりにJ2に復帰した今年もルヴァンカップで強さを発揮し、リーグ戦で絶好調だった千葉と対戦した1回戦は4-2で勝利を収め、2回戦では前年度優勝チームの名古屋をPK戦の末に振り切った。次は一昨年の覇者・福岡が相手だが、金星奪取を虎視眈々と狙っている。
富山にとってはクラブ創設時の選手が双方の監督として相まみえるという点でも特別なゲームだ。今季から福岡を率いる金 明輝監督は、2007年に富山の前身の1つであるアローズ北陸でプレーし、富山の小田切 道治監督はもう1つの前身であるYKK AP FCに2004年から在籍。Jリーグ加盟を目指して両チームが合流して富山が発足して最初のシーズンとなった2008年に2人も初代メンバーに選ばれて同僚になった。同年に富山はJFLで3位になり、翌年からJ2に参戦。ちなみにJリーグ初戦となった2009年の開幕戦の対戦相手が福岡だった。
金 明輝監督は2010年まで、小田切 道治監督は2009年まで在籍してその後はそれぞれ指導者の道を歩む。2018年の途中に、富山OBで初めてJクラブの指揮官に就任したのが金 明輝監督で、これに続いたのが2022年の途中から富山を率いる小田切 道治監督だった。いまも「ミョンちゃん」、「オタさん」と呼び合う間柄で、ともに育成年代を指導していた当時からよく連絡を取り合っていたという。小田切 道治監督は、金 明輝監督に対しての印象を「礼儀正しく、情熱的な印象は初めて出会ったときから変わらない」と語り、続けて、「私が富山の監督に就任した際には、心構えやチームマネジメントについて彼に教えを請うた。こういう形で対戦が実現してうれしいし、楽しみにしている。試合後に食事でもしながらゆっくり話せたらいいのだが、2人とも負けず嫌いなのでどうなるかな……(笑)」と話した。
富山が福岡と対戦するのは2014年9月に行われたJ2第34節以来で11年ぶり。J2での対戦成績は富山から見て1勝3分7敗。苔口 卓也がクラブ初のハットトリックを達成した2013年9月のJ2第35節で唯一の勝利を挙げている。
富山はリーグ前節・札幌戦、タイスコアで迎えた終了間際に直接FKを決められて1-2で敗れた。しかし、リーグ戦では3試合連続で前半のうちに先取点を挙げているように、課題の攻撃面は少しずつ上向いている。生命線の守備も粘り強さは失われておらず、開幕以来まだ3失点以上を喫した試合はなく、負けた7試合のうち6試合は1点差だ。連戦となる今回は、これまでどおり先発を大きく入れ替えて臨む可能性が高い。誰が出場してもパフォーマンスが落ちないのがチームの強みであり、ルヴァンカップで好成績を残せている理由でもある。選手たちが三原則と呼ぶ“ハードワーク・球際での強さ・素早い攻守の切り替え”を徹底しながら福岡の攻撃力を削ぎ、接戦に持ち込みたい。
一方の福岡はリーグ前節・名古屋戦の終了間際、金森 健志が今季初得点を決めて引き分けに持ち込み、連敗を『3』で止めた。チームトップスコアラーの見木 友哉らがベンチを外れるなど台所事情が苦しかっただけに、ベテランの働きが光ったことは大きい。金 明輝監督は試合後に金森 健志の活躍に言及し、「遅くまでトレーニングしている彼の姿を見て『懸けてみたい』と思ったし、期待に応えてくれた。本当に選手たちに助けられた」と語っている。チームの士気も高まったことだろう。富山戦のあとに中2日でリーグ次節・C大阪戦を控えているため、総力戦で乗り切りたい。
[ 文:赤壁 逸朗 ]
