11月3日（木・祝） 第85回天皇杯　4回戦
横浜FM 4-0 仙台（13：00/三ツ沢/6,625人）
得点者：'16 久保　竜彦（横浜FM）、'45 久保　竜彦（横浜FM）、'54 奥　大介（横浜FM）、'70グラウ（横浜FM）
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プライオリティ。モチベーションではなく、この戦いへの両チームの熱中度にはレベル差があった。それはスターティングメンバーにも表れていた。堂々たるベストメンバーで臨んだJ1・2年連続王者、次戦が9日後とあってオーダーは単純な計算で作れる。対するJ2・仙台は、現在リーグ戦4位でJ1昇格争いの渦中にある。1戦の重みは最高潮を迎えており、中2日で6位の山形とアウェイ戦を戦うことになっている。どの試合にも100%というわけにはいかない。「バックアップ中心の布陣で臨んだ」と仙台・都並監督も話しているように、前節もスタメンを務めていたのは千葉と磯崎のみ。ピッチにはフレッシュな面々がそろった。ベンチ入り16名の平均年齢22.9歳。ところが、仙台は漠然と勝ちにいくのではなかった。前半はスコアの上では1-0とリードされたものの、戦いの目的が明確な仙台の果敢なプレーが光った。
ベストメンバーの横浜FMに、引くのではなく前へ寄せて強めに当たる。開始5分間の積極性などは、かなり意図的だったろう。中盤でボールをキープする横浜FM選手へのきつめのチャージで機先を制した。ファーストシュートも4分に松浦がライン裏に走ってヘディングで放つ。10分には関口が中西を交わしてドリブル突破、左からの折り返しを富田が合わせたが、これはクロスバーの上。横浜FMサポーターをヒヤリとさせたシーンだった。

ただ、こういう少ない好機を逸すると、やはり地力のある方へ流れは向かう。16分、横浜FMは奥の右からのFKをファーサイドで待ち構えていた久保が、滞空時間を使ってヘディングで強打で先制。復活を直感させるフィニッシュの残像だった。
この後は中盤の主導権を奪えない仙台だが、耐えてカウンターの集中力はしっかり貯めていた。31分左サイド、磯崎のフィードで抜け出した松浦が深いところで折り返すと、走りこんだのは萬代。ミートしたダイレクトシュートはワクをとらえていたが、GK榎本達が反応鋭く弾いてCKに逃れた。好機を逸した仙台。一方の横浜FMも、41分に中澤のフィードでGKと1対1になった久保が、セーブされてネットを揺らせず。勝負は、まだ定まらない。

ところが、後半の開始早々に仙台は痛い2点目を献上してしまう。前線へのボールをうまく拾ったグラウが抜け出し、GKもかわしてシュート。バーに跳ね返ったところを久保が詰めて、無人のゴールに流し込む。「0-1の時間帯を、もっと長く継続できたら」と悔やむ仙台・都並監督だったが、このほころびは、ある意味しょうがない。リードしながらであれば相手の焦りも生じるし、精神的なスタミナも長持ちしやすい。だが、リードされていてはゴールへの使命を頭に置きながら、粘らなければならない。これは若いイレブンには非常に難しい作業だ。
ビハインドが2点となると、仙台の耐久力はトーンダウンする。54分には右から崩されて奥に3点目を奪われ、70分にはPKで4点目を許してしまう。

ゴールラッシュを披露した横浜FM。4ゴールは4月2日（Ｊ１リーグ第3節）のJリーグ新潟戦以来。上がった選手を生かす右サイドのコンビネーションや、コースとスピードがピンポイントでないビルドアップ時のショートパスなど、まだまだ本当の精度ではないものの、久保の復活は大きい。リーグ5試合を含め、今シーズンの残りゲームでのファンの楽しみが増えた。
完敗の仙台も、J2の流れを澱ませるようなゲームではなかった。この試合の意義をチームにきっちりと提示して戦ったことで、今シーズンのメインテーマに注力できる。ただ、天皇杯の大きな魅力はJ2やJFLのチームがJ1の強豪に挑む真剣勝負のはず。100%同士でぶつかるような設定であればベストだった。


以上

2005.11.03 Reported by 池田博人（インサイド）