過去の大会ではベスト16が精一杯だった町田にとって、決勝進出はクラブ史上初。また、天皇杯制覇を成し遂げれば、クラブにとって初のメジャータイトル獲得でもある。準決勝では延長戦の末、FC東京を2-0で撃破。120分を戦い抜いた望月 ヘンリー海輝は試合終了直後、疲労のあまり、ピッチ上で大の字になっていたほど。激闘後のダメージが決勝でのコンディションにどれほど影響するかは不透明だが、守護神の谷 晃生は「2日間のオフでしっかりと休んで良い準備をしていきたい」と話し、心身ともにリフレッシュを図って決勝に臨む意思を示した。
トップカテゴリーのJ1で2年目のシーズンを戦っている町田は、今季の目標の1つとしてメジャータイトル獲得を掲げてきた。あと1勝に迫った天皇杯制覇に向けて、意気込みを語るチーム主将・昌子 源の言葉にも自然と力がこもる。
「決勝の舞台に立てないチームのほうがはるかに多いわけですから、Jリーグを代表して国立のピッチに立てることは光栄です。相手はリーグを連覇していて、天皇杯では連覇が懸かっている神戸さん。“ラスボス”と言える神戸さんを倒して、僕たちの新時代を築きたいので、迷ってプレーするのではなく、全力で神戸さんに立ち向かっていきたいです」 明治安田J1における今季の両者の対戦成績は1勝1敗。第11節での対戦はオウンゴールを誘発した神戸が1-0で勝利し、第25節では中山 雄太と相馬 勇紀のゴラッソ2発によって町田が2-0で勝ち切っている。過去5大会の天皇杯決勝は1点差、もしくはPK戦で決着しているように、カップ戦のファイナルは手堅いゲームになりがち。今季の対戦の傾向を踏まえても、先制点が勝負を制する生命線になりそうだ。
なお、最大の注目点はチームを率いる指揮官対決。町田の黒田 剛監督は準決勝後の会見で青森山田高を率いていた時代を引き合いに出し、「ここはたくさん勝たせていただいたスタジアム。勝負運が選手たちに乗り移る形で決勝を戦えたらと思います」と決意を述べた。2021年度の全国高校サッカー選手権大会で頂点に立って以来となる国立競技場での優勝へ、黒田 剛監督の采配にも注目だ。
一方で神戸の吉田 孝行監督も決して負けてはいない。現役時代までさかのぼれば、横浜フリューゲルスのラストマッチとなった1998年度の天皇杯決勝で決勝点をマーク。1998シーズン限りで横浜マリノス(当時)と合併したクラブの“有終の美”を飾る天皇杯制覇に貢献している。
また指揮官としては、G大阪と対戦した昨年度の決勝を1-0で制している。このように吉田 孝行監督はある意味、“天皇杯国立決勝に愛されてきた男”。黒田 剛監督と吉田 孝行監督による“勝負運対決”は必見だ。
[ 文:郡司 聡 ]


