浦和は前節、2位の横浜FMに2-1で粘り勝ち。大敗を喫した3月の雪辱を果たした。これまで多用してきた[4-2-3-1]ではなく、[4-3-3]([4-5-1])]へと布陣を変更。関根 貴大をワイドからインサイドへ移し、これまでダブルボランチの一角を担ってきた伊藤 敦樹を1つ前へ。役割を微妙に変化させ、選手のポテンシャルをより一層引き出した。関根は鬼気迫る運動量でプレーの切り替えを繰り返し、伊藤は重しが取れたように上下左右に躍動。2人とも攻守に絶大な貢献を果たし、“NEXT浦和”の中心であることを印象づけた。
そう、昨季から変革期に突入していた浦和はここにきて時計の針を一層早めている。この試合では好むと好まざるとにかかわらず、試合後のセレモニーでは3人の選手が挨拶を行う。槙野 智章と宇賀神 友弥が本懐を遂げられずに浦和を去ることになり、阿部 勇樹がスパイクを脱ぐ。レジェンド3選手が一度に浦和のユニフォームを脱ぐことになった。
伊藤にとって、あまりにも経歴が似ていた宇賀神は目標であり励みであった。同じ埼玉県出身で、浦和のアカデミーで育ち、そしてトップに昇格できなかった。しかし宇賀神は流通経済大での成長を経て浦和加入を果たす。当時まだ珍しかった、ユースから大学経由でのトップチーム加入というルートの先駆者でもある。伊藤も同じ道をたどり、ずっと戻りたかったという浦和への帰還を果たす。
その伊藤は横浜FM戦後に「ウガさん(宇賀神)がこういう道を切り拓いてくれたのが大きかった。残り試合で感謝の気持ちと自分が成長した姿を見せたいし、ウガさんと一緒に喜び合いたい」と意気込み、関根も「今まで浦和のために闘ってくれた選手が去るのは寂しいし、不安な部分も大きい。僕自身それをしっかり引き継いでいかないといけないという覚悟もある」と決意を新たにした。
この試合は浦和にとってあまりにも多くの意味を持つ。まずは目の前の目標として、逆転での4位確保のため勝利が絶対条件。そして何より、去る選手たちを安心させるために次代の浦和を見せなければならない。ユズリハは若い葉が生えそろって初めて古い葉が落ちる。古い葉が安心して幹を離れるため、若葉が信頼に足ることを示す必要がある。
一方のアウェイ・清水にとってはそんな事情を慮る余裕はない。J1残留圏ギリギリの16位でJ2降格圏とはわずか3ポイント差。土壇場の監督交代から1勝1分と着実に勝点を積み上げており、今節でなんとか安全圏へ逃げたいところだ。途轍もないアウェイの雰囲気、異様な雰囲気での戦いを強いられることになるだろうが、セレモニーに水を差すくらいの強い気持ちで臨むことが求められる。
いずれにしても、スタジアムがどのような雰囲気になるのか、どのようなテンションで試合が進むのか。当日はまったく想像のつかない空間になっているだろう。
[ 文:沖永 雄一郎 ]
