9月19日(土) 2009 J1リーグ戦 第26節
山形 0 - 1 清水 (19:04/NDスタ/12,270人)
得点者:37' ヨンセン(清水)
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試合の明暗を分けたのは、37分のコーナーキック。兵働昭弘が放ったアウトスイングのボールを、GK清水健太がパンチングでクリアする。中央のスペースを転々とするボールをチャンスと見たのはレオナルド。マークしていたヨンセンを離して猛然とボールを追いかけた。しかし、センターサークル付近でいったん追いついたボールは、収めきれずに相手に渡る。奪った伊東輝悦が即座に左サイドへ。コーナーキックで前線に残っていた宮崎光平はレオナルドに絡もうと中央に残っていたため、通常の持ち場であるそのサイドは大きく空いていた。ボールを足元に収め、ルックアップしたのは兵働。ヨンセンのプルアウェイの動きを確認すると、ファーサイドへピンポイントのボールを送った。レオナルドの代わりに秋葉勝が懸命に体を寄せたが、それも想定内とヘッドでジャストミートしたボールはゴールに突き刺さった。「頑張ってはくれているんですけど、そういう際(きわ)のところだったり、精度のところでいくと間に合ってないということが言えると思います」(山形・小林伸二監督)。結局、これがこの試合唯一のゴール、決勝点となった。
アウェイの清水が、前半から攻勢をかけてきたのには、長谷川健太監督の分析があった。「山形はホームで非常に力を発揮するチームであり、特に残り15分の戦い方は驚異的なパフォーマンスを見せる。入りの15分、最後の15分、ここが勝負になるんじゃないかという話を選手たちにはしました」
開始からの数分こそ、クロスが中の選手と合わないケースが見られたが、時間とともに修正されていく。11分から3本連続で得たコーナーキックでは、1本目はファーで岩下敬輔がヘッド、2本目もファーで児玉新の左足ダイレクト、3本目は岡崎慎司のニアでのダイビングヘッドとシュートを3本続けるなど、兵働のキックとフィニッシャーの精密さは、山形の準備したものを越えたところにあった。
相手の陣形がそろったところへクロスを入れ、シュートまでつなげることができずにいる山形を後目に、清水は縦に動いてボールを引き出そうとするボランチと、中央寄りで2トップが空けたスペースに入り込んでボールを受ける両サイドハーフ、タイミングよく縦に攻め上がるサイドバックの動きが連動する。
18分には2対2のサイドを破った市川大祐がマイナスのクロスで枝村匠馬のボレーシュートにつなげ、ヨンセンは下りてさばいてゴール前へ入る一連の動きを事も無げにこなしていた。20分過ぎからは山形に押し込まれる時間もあったが、早い帰陣で人数は整っているため大きなピンチはほとんどなく、危うい山形のボール回しを狙って兵働がパスカットからドリブルを仕掛けるなど、カウンターも効いていた。先制の時間は予定よりも遅れたが、前半を終わって1−0とリード。今季先制した試合で11勝3分け(無敗)と安定した試合運びを続ける清水にとっては、上々の前半だった。
先に失点した時点で試合が苦しくなった山形だったが、あきらめてはいなかった。前半はサイドから前にボールを運びきれなかった宮沢克行が、後半はフェイントを入れながら足元で受けることでマークを遅らせるなど、中盤でのボールロストが少なくなり、サイドチェンジも使いながらクロスの態勢まで持っていくシーンも増えた。51分にはパスをつないで宮崎のクロスに宮沢がファーサイドに飛び込んだ。GK山本海人が触っていなければ…といった惜しいプレーだった。
山形は53分、宮本に代えて石川竜也を投入。すでに清水はラインを引き始めていたため、中盤を比較的自由に使えるようになった山形は、石川と小林亮の両サイドバックを高い位置に置くことができるようになっていた。宮崎を廣瀬智靖に代えると、さらにテンポよくボールが回り、両サイドから仕掛けるパターンが定着。66分には小林のクロスに古橋が飛び込んだり、71分にはクリアボールを拾った秋葉がスルーパスを宮沢の足元に付けるシーンもあった。しかし、集中力高くブロックを形成している清水から、得点を奪うどころかシュートを打つことさえ許されず、81分の小林のクロスにフリーで合わせた長谷川悠のシュートもGK山本海の正面を突いた。
75分に負傷したセンターバック園田拓也がプレー続行不可能となったことも、山形にとってアンラッキーだった。3枚目の交代カードは、すでに準備していた財前宣之をあきらめ、同じセンターバックの小原章吾となった。最後はレオナルドも前線に上げパワープレーを試みたが、「少ない人数でボールキープしながら時間つくってということと、変に横パスでつなぐよりは、クリアでもいいからしっかり跳ね返すことというのをみんなで共通意識をもってやっていた」(兵働)という清水に対して、ゴール前を脅かしはしたものの、決定打を繰り出すまでには至らなかった。清水の11試合連続無敗と、山形の4連敗を告げる笛は、ロスタイム4分を回って間もなく吹かれた。
暫定ながら、3位以内に駆け上がった清水・長谷川監督は「非常に大きな勝点3」と勝利を喜んだ。キックオフ前には、首位・鹿島が敗れていたが「山形のこの試合、山形というチームに集中して戦わせたいという思いは当然ありましたし、そういう思いで私自身も臨みました」と外部に影響されることなく、普段どおりのサッカーで勝ちきったことこそ、今の清水の好調さと安定感が表れている。ただ、長谷川監督も認めるように、守備に関してはラッキーな部分もあり、決定力の高い相手と対戦した場合は1点でしのぎきれる保証はない。勝負を決める2点目を狙いながら、それが奪えなかったことは今後の課題となる。
山形は今季初の4連敗を喫し、勝点30台のグループに仲間入りすることは、この試合でもできなかった。攻め込む時間をつくりながら、記録したシュート数は3本。アタッキングサードでいかに崩すかは、「全体でもう少し攻撃に人数をかけて、分厚い攻撃ができないと厳しい」という古橋の言葉がひとつの指標になる。しかし、立ち上がりでの失点を防ぎ、先制されたあとも立て続けに失点しないなど、前節の反省を活かせた部分はプラス材料。「結果は出てないにしても、戦う形としてはすごくハードワークをしてくれたゲームと私自身は思っている」と小林監督。次節以降、残留を争うチームとの直接対決が控えている。もちろん、頭から真剣勝負だ。
以上
2009.09.20 Reported by 佐藤円
































