期待通り静岡ダービーらしい熱さや緊迫感を味わわせてくれた好勝負。プレビュー記事では、誰が試合を決めるヒーローになるかと問いかけたが、その答えは清水の両翼に並び立つ2人の五輪代表候補だった。
ただ、彼らが初めから機能していたわけではない。清水は、岩下敬輔がケガで欠場、河井陽介も左足首の痛みでベンチスタートとなり、代わりに平岡康裕と枝村匠馬がスタメン出場。磐田のほうは、森下仁志監督は真意を明かすことはなかったが、前節からスタメンを3人変更し、どちらも少し顔ぶれを変えた形でキックオフ。
序盤は、磐田に前線からプレッシャーをかけられた中で、清水は思うようにパスを前につなぐことができず、なかなか自分たちのサッカーを作れなかった。しかも、12分に課題のセットプレー(駒野友一の左CK)からチョ・ビョングクに鮮やかな先制ゴールを決められ、さらに苦しい展開となっていく。
清水はピッチ上で強くリーダーシップをとる選手がいなかったこともあって、流れの悪さをなかなか修正できなかったが、「とにかく自分たちのサッカーを続けるというか、つなぐことを恐れずにやっていた」(高木俊幸)という部分が徐々にリズムを作っていく。29分には吉田豊のケガにより河井が急きょ初めて右サイドバックとして出場することになったが、「高い位置でボールを収めて、試合を落ち着かせること」を意識していた河井が、無理に縦に急ぐことなく丁寧にボールをつないでいったこともあって、前半の終盤にはいつの間にか清水ペースになっていた。このように自力で修正できるようになってきたところは、昨年に比べて進化している部分でもある。
そして、アディショナルタイムに入ったところで、磐田のDFが縦パスの処理をミスしたこぼれを河井が拾って、そのまま右からアーリークロス。これがDFとGKの間に絶妙な軌道を描き、ニアサイドに走り込んだ高木がダイビングヘッドでゴール右隅に押し込んで、清水が前半のうちに同点に追いつくことに成功。クロスの質と精度、高木の完璧なヘッドも含めて、静岡ダービーを彩り、さらに盛り上げる非常に美しいゴールシーンだった。
一方、磐田のほうは、コンパクトな守備が機能して、清水に本来のサッカーをさせないことはできたが、自分たちの攻撃も最後の壁を崩しきれず、シュート数も前半はゴールシーンの1本だけ。それでも、前半を1-0のまま終わっていれば再び流れをつかめたかもしれないが、残りわずかで同点に追いつかれてしまったのは非常に痛かった。
そうした微妙な心理面の違いが反映されたのか、後半は立ち上がりから清水が積極的に仕掛けて主導権を握っていく。そして後半3分、清水が左サイドで押し込んだところから高木が右足でクロス。これに対して最高のタイミングでDFの裏から走り込んだ大前元紀がフリーで抜け出し、1点目の高木と同じようにダイビングヘッドをゴール右隅に突き刺した。若い2人の呼吸がピタリと合った鮮やかなゴールで清水が一気に逆転に成功し、スタジアムはさらにヒートアップしていった。
その後も、試合の流れは清水がつかみ続け、とくに今季初ゴールを決めて肩の力が抜けた大前は、ボールを持った際の余裕が格段に増してチームのリズムを牽引していく。また、ボールを奪われてもアンカーの村松大輔がすぐにボールに寄せて攻撃を遅らせる――だけでなく高い確率で奪い返してくれるため、磐田のカウンターもうまく封じて流れを渡さない。後半21分に小野伸二が入ってからは、さらに落ち着いたボール回しが見られるようになって、終盤に入ってもゲームを支配し続けた。
そして後半43分には、交代出場の高原直泰の巧みな落としから大前がドリブルで突破して、倒されながらシュートを放ち、貴重な3点目を決める。こうした終盤の追加点も、清水がずっと欲していたものだった。
最後の最後で磐田が執念で1点を返したため(90+4分/山本康裕)、結果的に3点目が決勝点となり、清水が点差以上の快勝で今季4勝目。地元のライバル・磐田を抜いて2位と勝点1差の6位に浮上した。
敗れた磐田は、これが今季初黒星。後半はなかなか良い形でボールを奪うことができず、せっかく奪ったボールをすぐに奪い返される場面も目立って、自分たちのサッカーができなかった。また、監督が代わって新たに作り直しているチームにはよく見られることだが、攻撃のビルドアップや最後の崩しの部分が熟成不足であることは否めない。そこは今後も継続する課題となりそうだ。
だが、それでも最後に一矢報いたことは、ダービーにふさわしいプライドを見せた部分。それが練習で取り組んできた形であったことも、森下監督は高く評価した。
勝った清水のほうも“今季初”が多かった。大前が待望の今季初ゴールを決め、1試合3得点も初めて。後半にこれほど長い時間しっかりとゲームをコントロールできたのも、今季では初めてで、それも大きな自信につながったはずだ。
ネガティブな面では、今季初めてセットプレー以外の失点を喫したが、それを差し引いてもプラス要素のほうが圧倒的に多い試合。今後の主軸となるべき高木と大前が勝負強く大仕事を果たし、好調同士の静岡ダービーに完勝したことは、何にも代えがたい大きな収穫だった。
以上
2012.04.15 Reported by 前島芳雄




































