あの憎たらしいまでの勝負強さを誇ったチームは、どこへ行ってしまったのか。今季、2009年以来のリーグ戦連敗を記録した名古屋が、早くも2度目の連敗を喫した。リーグここ5戦で1勝4敗はまさしく危機的状況。ここ2シーズンのJリーグをけん引してきた強豪は、ストイコビッチ監督就任以来最大の不振に陥っている。その原因は一言では言い表せないが、このC大阪戦を振り返ることでその輪郭は見えてくるだろう。スコアは0-1と僅差だったが、ピッチ上で展開されたのは典型的な、“今季の名古屋の悪い試合”だったからだ。
ダニルソン、中村直志、吉村圭司、磯村亮太。ボランチをこなせる選手が全員負傷欠場し、守備に問題を抱えて臨んだ名古屋には確かに少しのエクスキューズはあった。それでも攻撃的な戦いを選択したストイコビッチ監督は、アンカーに田口泰士、インサイドハーフに藤本淳吾と小川佳純を起用。3トップをケネディと玉田圭司、金崎夢生とし、ポゼッションによるリスクマネージメントでC大阪を迎え撃つ算段を練っていた。
対するC大阪も名古屋への対抗策とともに豊田スタジアムに乗り込んでいた。ブランキーニョと柿谷曜一朗をベンチに置き、前線は播戸竜二とケンペスの2トップに変更。両サイドハーフに清武弘嗣とキムボギョンを配する4-4-2を選択した。その理由は「清武とボギョンを近くでプレーさせ、播戸とケンペスの2トップに良いボールを供給する」(セルジオ ソアレス監督)ため。付け加えるならば、攻撃的MFを中央よりにプレーさせたのは名古屋のシステムの穴を突くためだろう。実際、試合開始からペースをつかんだのはC大阪の方だった。
キックオフからしばらくは落ち着いた展開が続いた試合は、10分を過ぎたあたりから徐々にC大阪へと傾いていった。清武とキムボギョンが指示通りに中へとポジションを取り、攻撃に緩急をつけると、空いたスペースに酒本憲幸と高橋大輔の両サイドバックが積極的にオーバーラップを仕掛ける。序盤こそ田口のシンプルなパスさばきを起点にリズムを作った名古屋だったが、前線の動きが乏しく攻撃に緩急がつかない。もたつく名古屋を尻目にC大阪は19分、25分、36分、40分と決定機を連発。30分を過ぎたあたりから名古屋も盛り返したが、二度の決定機はC大阪の守護神・キムジンヒョンに阻まれた。
無得点のまま迎えた後半は、開始早々に試合が動いた。キックオフからわずか4分後の49分。キムジンヒョンの大きなパントキックが右サイドを破り、韓国代表の同僚キムボギョンが抜け出す。狙い澄ました低いパスに飛びこんだ黒木聖仁はシュートをミスしたが、こぼれ球はファーサイドのケンペスの下へ。ブラジル人ストライカーは落ち着いたトラップから正確なシュートを叩き込み、待望の先制点をC大阪にもたらした。
すぐさま反撃に転じた名古屋だが、ここからの展開はまさしく泥沼だった。53分、そして63分のビッグチャンスをまたもキムジンヒョンに防がれると、指揮官は永井謙佑と巻佑樹の投入を決断。金崎と田中隼磨を下げ、小川を右サイドバックに、中盤を右から永井、田口、藤本、玉田とする4-4-2の曰く「超攻撃布陣」(ストイコビッチ監督)で前線への圧力を強めた。60分にはこの日2枚目のイエローカードで播戸竜二が退場し、数的優位も確保した。だが、この交代からチームの動きがさらにぎごちなさを増していくとは誰も予想しなかった。
ケネディと巻を前線に並べたということは、「彼らの空中戦を活かして強引にチャンスを作ろう」という意図である。しかしパワープレーはもはや名古屋の常套手段。対戦相手にとっては想定内で、対応策も準備されている。「メンツ的にも放り込んで、チャンスを作ろうってことだったと思うんだけど、ここ何試合かは相手も読んでいる。そこをすごく集中して乗り切ろうみたいなところがある」と玉田が言うように、奥の手はむしろ攻撃のバリエーションを狭めることにつながった。その放り込み方にも工夫が足りず、「相手はゴールの近くには入れてこなくて、ペナルティエリアの外くらいでセカンドボールを取るような蹴り方で来た。それはラッキーだったと思います」(キムジンヒョン)と、C大阪DF陣の対応をむしろ楽にしてしまっていた。
さらに名古屋は76分にはダニエルを投入したが、従来の“FW闘莉王”はせず、前線を巻、ケネディ、永井の3トップにしただけでそれ以上のテコ入れはなし。その理由をストイコビッチ監督は大敗した前節を受けてのものと説明したが、攻撃的な指揮官にしては珍しく消極的な采配だった。この布陣変更を受け、名古屋の選手はさらに混乱。放り込もうにも相手は完全にそれを待っている、かといってメンバー的にポゼッションで崩すようなメンツが揃っていない。「前に送れ!」とピッチサイドで激怒する指揮官を見ながら、後方で横パスを交換しながら前線をうかがう姿からは、「どうやって攻めればいいんだ?」という声が聞こえてきそうだった。それでも何とか終盤にはいくつかの決定機をつくったが、シュートはすべて枠の外へ。とにかくこの日の名古屋は、あらゆる面でチームの歯車が噛み合わなかった。
試合後、10人で試合をコントロールしてみせたC大阪の面々は充実の表情。セルジオ ソアレス監督は「選手たちは名古屋の圧力に本当によく耐えて、素晴らしい勝利を収めてくれた」と讃え、茂庭照幸は「グランパスっていつもあんな感じで勝つんです。いつもの展開だったけど、今日はしっかり跳ね返せたのが勝因かな」と得意満面。逆に名古屋の面々の様子は推して知るべしだ。ストイコビッチ監督の会見での熱弁が、状況の悪さを端的に表している。数度の決定機を外し続けた藤本は敗戦の責任を背負い込んだが、それ以前にチームの状態が悪すぎた。
これでリーグは小休止に入ったが、名古屋にはまだ大きな仕事が残っている。翌日にはオーストラリアへ向け出発し、遠くアデレードでAFCチャンピオンズリーグのラウンド16を戦う。昨季もアウェイで戦った一発勝負。ここでACLの灯を消すわけにはいかない。リーグ2年半ぶりの連敗、仙台での大敗、そして連敗とくればもはやチームはどん底。ここからは開き直り、ひたすらに這い上がる姿を見せてほしいものだ。
以上
2012.05.26 Reported by 今井雄一朗




































