高い位置からプレッシャーをかけることで相手の自由を奪い、攻める時は、ボールをポゼッションしながら、相手の間でボールを受けて起点を作り、そこからサイドへ展開してゴールを目指す福岡。ブロックを形成して相手の攻撃を待ち受け、マイボールはシンプルに前線に長いボールを送り、そのセカンドボールに中盤が絡んで前へ出る徳島。対象的な特長を持つ両チームの対戦は、どうやって自分たちの特長を出し切るかが勝負の鍵を握るものと思われた。しかし、そんな思惑とは裏腹に勝負は意外な形で決着がついた。それは、福岡が犯したふたつの大きなミスだった。
最初のミスは15分。マンマークで守っていながら、ゴール前に飛び込んでくる橋内優也をドフリーに。ここまで高いレベルのプレーを維持し、いくつものピンチをはね返してきたGK神山竜一でも、どうすることもできなかった。そして、勝敗の行方を大きく動かしたのが、同点で迎えた後半立ち上がりのミス。左サイドを抜け出した衛藤裕のクロスボールは平凡なものと思われたが、ゴール前で守る小原章吾が目測を誤ってボールに触ることができず、その背後に詰めていたジオゴがノープレッシャーでゴールネットを揺らした。
福岡のこれまでの戦いを振り返れば、その失点の多くは守備組織を破られたものというよりは、どこかで、誰かが、ほんの少し注意深くプレーすれば防げたものばかり。そして、この日も同じように、あってはならないミスから失点を喫し、そして敗れた。
「選手は集中してやっていたと思う。ただ、その中で、相手との競り合いで後手を踏んだり、ボールウォッチャーになっているところは、スキルの問題もあるし、相手を上回る気持ちの問題もあるが、まだまだ未熟なところ。選手と向き合ってトレーニングを積んでいきたい」と前田浩二監督(福岡)は失点シーンを振り返ったが、この日の試合を含めて23試合を消化しながら、いまもなお同じようなミスを繰り返しているところに福岡が抱える問題点の深刻さが窺える。攻撃面で前への意識が高まったことや、意図するボール回しから相手を崩すシーンが増えていることなど、チームに進化の跡は見える。
この日放ったシュートは徳島の倍以上にあたる16本。先制点を喫した後、試合の主導権を握っていたのは福岡だった。しかし、あってはならないミスを無くすことができなければ、この日の試合がそうであったように、それが勝利に結びつくことはない。
一方、勝利した徳島もまた、まだまだやるべきことが多いことを感じさせる試合内容だった。「(相手の)プレスを、グループでボールを運ぶことによって破ることが出来るということをピッチの中で体現し、表現できた得点だった。個人ではなく、グループで戦うという、前期とは違った部分が見えてきた」と小林伸二監督(徳島)が話す通り、先制点を生んだCKを奪ったシーンも、2点目のアシストを決めた衛藤が飛び出したシーンも、福岡の厳しいプレスをグループ戦術でかわした結果として産まれたものだった。
しかし、ゲーム全体を見渡すと、そうしたシーンは決して多いとは言えなかった。2−1とリードを奪ってからは、落胆の色が見える福岡に対して主導権を握ったが、3−1とリードを広げてからは再びトーンダウン。残り10分を切ってから福岡の猛攻を受け、決定的なピンチも作られた。
「ラスト10分でピンチが3回あったが、あそこで1点が入ると厳しい状況になっていた。今日は勝ったが、その部分をしっかりと学ばないと後で痛い目を見るような集中だったと思う」と話すのは小林監督。「あそこで1点取られていたら相手に流れが行っていた。オ スンフンに助けられたが、どっちに転ぶか分からない試合にしてしまった」と斉藤大介も試合を振り返った。
さて、後半戦J1昇格に向けて巻き返しを図る福岡の、ホーム2連戦で勢いをつけて次節の山形戦に臨むという目論見は崩れた。自滅で失った勝点3は、上位陣を追撃する立場としては限りなく大きい。
しかし、下を向いてしまえば全てが終わる。自分たちの想いを形に変えるには前を向いて歩き続けるしかない。いま目の前にある壁は自らに内在しているもの。それをどこまで意識できるか。福岡がここから巻き返せるかどうかは、そこにかかっている。
以上
2012.07.09 Reported by 中倉一志




































