広島、敗退。残念でしかたがない。
残り3試合で最大勝点が7。北京国安に勝利したブニョドコルはもう上回ることができない。現在の勝点が6の浦項と勝点で並んでも、当該カードの勝敗で広島は浦項を上回れない。北京国安・ブニョドコルと浦項が連敗すれば広島が上回るが、その場合は北京国安が勝点8に到達する。広島の敗退は2試合を残して決まった。
勝てるチャンスは、ゼロではなかった。62分、右サイドのFK。浦項が仕掛けるオフサイドトラップをかいくぐり、水本裕貴が落とす。そこにはフリーになった石原直樹。落ち着いて決めた。今大会、初めて広島は先制に成功する。
立ち上がりからここ数年では見たことないほどのミスを連発し、必然的にホームチームに押し込まれ、決定的なシュートを何本も打たれた。しかし、ギリギリのところでも諦めずに身体を寄せたり、足を伸ばしたりしたことが、相手のシュートミスを誘う。もちろんフリーで打ったペ・チュンソクのシュートがポストに当たるような「幸運」も、決定的なノ・ビョンジュンのシュートを2本連続で止めた西川周作の凄まじいセーブもあった。その上で、「決定機をいくつも外すと失点する」というまるで“マーフィーの法則”のような、サッカーでありがちな状況が、現象として起きたのだ。
流れは広島。だが、そこで「アクシデント」が起きた。67分、ペナルティエリア近くで塩谷司がコ・ムヨルと激突し、落ち方が悪くて倒れてしまう。ノーファウル。塩谷、リカバリーできず、プレーも切れない。チョ・チャンホが右から持ち込み、シュート。またも西川が弾く。だがそのこぼれを狙っていたのは、浦項のスーパースター=ファン・ジンソンだ。同点。塩谷が倒れたスキを見逃さず、そのためにできるスペースを彼らは使った。
試合前日会見でも森保一監督に対して「ファン・ジンソンが出場する見込みだが、対策は?」と韓国人記者が質問し、試合後も「彼のプレーをどう思ったか」という声が飛ぶ。ただ浦項は、それぞれに経験を積んだ能力の高い選手たちの集合体であり、彼らは一つのコンセプトのもとに意思を統率させて戦った。パス回しにしてもプレッシングにしても連動性があり、何よりもよく走った。その素晴らしいチームの一人として、ファン・ジンソンが存在する。ただ、同点弾を彼が決めたことで、浦項のサポーターは確かに大きく盛り上がった。
この試合を一つのエンターテイメントとして見た場合は、正直言って、非常に面白かった。前半の浦項が見せた厳しいプレス。ミスばかりの広島が追いつめられたにも関わらず、最後のシュートが入らない「サッカーの神様」のいたずら。やられっぱなしではない、とばかりに広島も右サイドを中心に反撃し、ボランチの岡本知剛がペナルティエリアの中でシュートを放つ。後半、高萩洋次郎が入ってボールの収まりがよくなった広島が攻勢を握って先制。浦項が地力を見せて追いつく。その後も互いに攻め合い、走り合った。
サッカーに「判定」があるのなら、浦項の優勢勝ち。だが、ガチガチに芝生を固められ、ボールがまったく転がらないスティールヤードをはじめとする厳しいアウェイの環境で、広島も粘った。若くて経験の少ない選手たちが多い中、戦う魂は見せることができた。ファイタータイプの強豪に何発も殴られ続け、フラフラになりながらもなお、闘志を見せてパンチを繰り出す若いボクサーのような闘いぶり。互いにミスも少なくなかった。シュートの外し方を見ると、「アジアはまだまだ」という実感も湧いてくる。しかし、それでもなお、身体中に訴えかけ、気持ちを揺さぶられる闘いだった。これが2戦目であれば、どれほどこの勝点1に勇気をもらえることか。実際、ベストの布陣で臨んだ2010年は、スティールヤードで敗れている。今年は若手を積極起用しての勝点1。前進と言えるだろう。だが、グループリーグ敗退という結果が、アウェイでの勝点奪取の価値をおとしめる。
Jリーグを代表してアジアの舞台に臨みながら、4戦で1分3敗。結果は情けないし、辛いし、何よりもサポーターに対して申し訳ない。だが、けが人続出というチーム事情にもかかわらず、あえて森保監督が頑固なまでに貫きとおした若者の起用は、ゆっくりとではあるが、成果を出しつつある実感も得た。例えばパク・ヒョンジンの左クロスであり、野津田岳人の積極性と技術であり、岡本知剛の闘志であり。もちろん、ファン・ソッコが戻ってきたことも大きな材料だ。スポット起用ではなく、チームの中心として厳しいアジアの舞台を戦ってきた彼らの経験は、近い将来に必ず実を結ぶ。
それはまだ、確信というレベルではなく、希望的観測の域を出ないのかもしれない。様々な批判は、今は甘んじて受け止めるしかない。この「敗北」を次に活かすことができると信じて、未来に向かって歩き出すしかないのである。
以上
2013.04.11 Reported by 中野和也




































