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30年が経ってJリーグが目指すものに近づいてきている。「Jリーグ30周年オープニングイベント」レポート

2023年1月27日(金) 15:50

30年が経ってJリーグが目指すものに近づいてきている。「Jリーグ30周年オープニングイベント」レポート

30年が経ってJリーグが目指すものに近づいてきている。「Jリーグ30周年オープニングイベント」レポート
1月25日に「Jリーグ30周年オープニングイベント」が開催された

1993年に開幕したJリーグは今年で30周年を迎える。節目のシーズンを盛り上げるべく、1月25日に「Jリーグ30周年オープニングイベント」が開催された。

イベントの冒頭で野々村 芳和チェアマンは「Jリーグは1993年の5月15日に開幕し、今年で30年ということになります。その間にいろんなことがありましたけど、選手の頑張り、現場の皆さんの頑張りはもちろんですが、多くのサポーターの皆さんや、メディアの皆さん、クラブを支えてくれているパートナーの皆さんのおかげで、こうやって30周年を迎えることができました。開幕当時はキラキラしたエンターテイメントと見られていたところが大きかったと思いますけど、30年が経ってJリーグが目指すものに近づいてきているのかなと思っています。本気でクラブを支えて、クラブと一緒に地域をより良くしていこうという方が増えてきたと感じています。サッカー文化が日本に根付いてきていることを感じながら30周年を迎えられることは僕自身も本当に嬉しいですし、0から1にしてくれた方々もすごく喜んでくれているんじゃないかなと思っています」と、Jリーグの30年の歩みを振り返った。

イベントの冒頭で野々村 芳和チェアマンはJリーグの30年の歩みを振り返った
イベントの冒頭で野々村 芳和チェアマンはJリーグの30年の歩みを振り返った

30年の歴史を築いてきたJリーグは、これからどのようなリーグになっていくのか。野々村チェアマンは「昨年のワールドカップでも日本代表がすごくいい活躍をしてくれたわけですが、すべての選手がJリーグを小さな頃に見て、Jリーグで成長して世界の舞台で戦ってきてくれたわけです。我々は今この瞬間から、次のワールドカップもそうですし、20年後、30年後を考えても、小さな子どもたちにあの世界に入っていきたいなという魅力的なものを作っていかないといけないと思っています」と意気込みを示したうえで、今後の成長戦略として2つのテーマを掲げた。

ひとつ目は「60クラブがそれぞれの地域で輝く」というもの。野々村チェアマンは「今年からJリーグは60クラブになりますが、その60クラブが、それぞれの地域でどれだけ輝くことができるか。地域によってはいろんな地域課題もありますし、いろんな面を考えても成長の仕方は様々なので、その地域にあったやり方を模索しながら成長していくことをチャレンジしていきたい」と話した。

ふたつ目のテーマは「トップ層がナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く」だ。
「日本中の人たちがあのクラブを応援したいと思ってもらえるようなクラブ、または世界に出ていって日本のサッカーを引っ張っていってもらうようなクラブが出てくることを期待をしながら、それに向けた取り組みをしたいと思っています」

そして30周年を迎える今年は、「Jリーグ30周年プロジェクト」として様々な施策を行っていくことも明かされている。まず、「KICK OFF」というタイトルのサッカー番組が4月から全国放送される。5月15日の「Jリーグの日」には、明治安田生命ビルの「MY PLAZAホール」にて、30周年記念イベントが開催されることも発表された。

また5月12日にはFC東京vs川崎F、同14日には鹿島vs名古屋が国立競技場で「30周年記念スペシャルマッチ」として開催。夏には海外クラブを招いて「明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ」が行われることも決定している。

そして30周年プロジェクトのコンセプトワードは「よっしゃ いこ!」に決定した。野々村チェアマンは「サッカーの現場で『よっしゃ』というのは、点を取った時、決定機を防いだ時、PKを止めた時、もちろん勝った時にも言うもの。『よっしゃ いこ!』は、試合前にほとんどのクラブもそうだし、サッカーやっている子どもたちもそんな言葉を発してゲームに出ていく。サッカーではありふれた言葉かもしれないですけど、この言葉はサッカーを表す一番いいワードなのかなと思います。そんな想いを持ちながらこれからも進んでいきたい」と、意気込みを語った。

今回のイベントでは、ゲストを交えて「Jリーグの未来を考える」をテーマとしたトークセッションも実施された。

野々村チェアマンをはじめ、サッカー解説者の松木 安太郎さん、Jリーグ選手OBとして中村 憲剛さん、槙野 智章さん、内田 篤人さんが参加。またゲストとして女優の観月 ありささんが登場した。

1991年の5月15日に歌手デビューした観月さんは「デビューと同じ日にJリーグが発足されたことに勝手に縁を感じております」とあいさつ。「スタジアムに見に行ったこともありますし、私の周りにもサッカー愛にあふれた友達が多いので、Jリーグはよく見させていただいています」と、Jリーグとの接点を明かしている。

「各クラブのメディア露出をどう増やしていくか」について中村さんは選手の心構えが重要だと話した
「各クラブのメディア露出をどう増やしていくか」について中村さんは選手の心構えが重要だと話した

トークセッションの最初のテーマは「各クラブのメディア露出をどう増やしていくか」について。それぞれが自身の経験をもとに、その考えを示した。

中村さんは選手の心構えが重要だと話す。「自分からどんどん出ていくことが大事。僕もサッカーとは関わりの薄い教育番組などに出させていただいたことで、それを見た親御さんたちがスタジアムに来てくれるようになったり。きっかけはどこにあるか分からないということを現役時代に感じることができたので、今の選手たちも、もっともっと知ってもらうために、どんどん出て、話して、発信していくことで価値が上がっていくと思います。そして価値が上がることで、メディアにももっと出られるようになる。出ていくことで知ってもらって、お客さんがたくさん入れば、プレーにいい影響が出てくるので、そこは今の選手たちにも感じてほしいですね」

内田さんは「選手側からの発信」をポイントに挙げた。
「取材を受けるのももちろんそうですけど、今だとインスタグラムとか、TikTokとか、YouTubeとか、いろいろあると思います。普段見られないグラウンド以外の選手の素顔が見られると、魅力のひとつになるのかなと思います」

松木さんは「ゲーム映像をもっといろんな場面で見たい」と提案した。
「ゴールだけではなく、いろんな映像をいろんなところで見られたらいいですね。(映像が気軽に観れることで)海外に行かなくても、Jリーグでプレーしたいなと思う選手がもっともっと出てきていただくことが重要かなと思います」

この意見を受けて野々村チェアマンは「そこは積極的にやっていきたいなと思っています」と話した。
「地域のクラブがその地域で映像として見られる回数が増えれば、よりファンが増えると思うので、そうなるような取り組みをしていきます。地域の人がリーチしやすい放送の体制は作っていきたい」と、サッカーの映像がより見やすい環境になっていくことを約束した。

槙野さんは、「メディアの皆さんの発信力と選手の意識で、地方からの底上げを実現していただきたいですね」と語った
槙野さんは、「メディアの皆さんの発信力と選手の意識で、地方からの底上げを実現していただきたいですね」と語った

最後に槙野さんは、「地方の底上げ」が重要だという考えを示した。
「僕も浦和時代にたくさんのメディア活動をしてきましたけど、僕の原点は広島時代にあります。ローカル番組だったり、サッカー番組以外の情報番組にも出て、サッカーを知らない人たちに向けても発信する。そういうことを地方のチームやメディアがやることで、サッカーの層を広げていく。僕も昨年のワールドカップにメディア側として参加させていただきましたけど、メディアの発信力がいろんな人たちを巻き込み、夢中にさせた。そういうパワーがあると思うので、メディアの皆さんの発信力と選手の意識で、地方からの底上げを実現していただきたいですね」

それぞれの意見を聞いた野々村チェアマンは「選手側の意識も変えないといけないですし、自分がメディアになるくらいの感覚も必要。僕たちJリーグも、東京から発信することはもちろん大事ですけど、それぞれの地域から、少しずつ大きくしていって、日本中のサッカーの熱量を高めていくことが必要なのかなと改めて思います」と語った。

2つ目は「どうすればトップ層がグローバルなコンテンツとして輝けるのか」。このテーマでは野々村チェアマンがバイエルンのようなビッグクラブの存在の影響力を、長年ドイツでプレーした内田さんに質問した。

内田さんは「ひとつ、ふたつ大きいクラブがあるのはとても大切だと思います。大きい都市に付随してビッグクラブができやすいと思っているので、日本で言うと東京とか大阪がビッグクラブを作りやすい環境にあると思います。僕がシャルケにいた時も『Jリーグでやりたいんだけど、ウッシー、どこかいいチームないか?』と聞かれることはあったんですけど、どこのクラブでやりたいというのは彼らの中にはなかった。Jリーグの中にもビッグクラブがあれば『このチームでやりたい』となると思います。ビッグクラブがあれば、そのクラブを中心にJリーグがもっと世界に発信されることになりますし、世界からJリーグのこのチームでプレーしたいとなれば、もっと有名な選手も来やすくなって、盛り上がるのかなと思います」

イベントの最後には、ビデオメッセージによる子どもたちからの質問コーナーが設けられた
イベントの最後には、ビデオメッセージによる子どもたちからの質問コーナーが設けられた

イベントの最後には、ビデオメッセージによる子どもたちからの質問コーナーが設けられた。

「サッカーをやっていくうえで上手くいかなかった時にどうやって克服しましたか」という質問に対して槙野さんは「何をやって上手くいっていないかを自己分析すること」と答えた。
「それを自分が理解していないと、その壁を破ることはできないですし、その先に向かうことができないと思います。僕は小学校や中学校の練習にも行かせてもらいましたけど、今はアプリとかビデオで分析しているチームも数多くあります。自分のプレーを見て、自分を知ることから始めたらいいと思います」

内田さんは「槙野さんが話したこととは逆で、サッカーから離れます」と回答。「サッカーのことを考えないし、プレーも見ない。原点に戻ります。楽しむとか、基本に忠実にプレーするとか、そういうところですね」

中村さんは「僕は上手くいかないことの方が多かったので、まずは受け入れること」と答えた。
「目を背けるんじゃなくて、上手くいかないことを受け入れることからスタートすると、さっき槙野さんが言ったように、自分を分析して、自分がどうやったら上手くいくかを考えるようになる。目を背け続けると、最終的に人のせいにして自分の成長がなくなってしまうんです。だからまずは受け入れることからスタートして、コツコツとやっていくことが大事だと思います」

川崎Fファンだという子どもの質問には、参加者が困惑する場面も。
「三笘(薫)とか(谷口)彰悟とかいなくなって寂しいです。どうしたらフロンターレに戻ってきますか。あと、どうしたらエムバペとかメッシが川崎フロンターレに来てくれるんですか。教えてください」

この質問に対し野々村チェアマンは「日本っていいなと思わせることが重要かなと思います。三笘選手とか谷口選手もそうだし、エムバペ選手もそう。日本という国がいい国で、いいリーグだと思わせることが重要。あとはエムバペ(のような選手)を日本で作ればいいと思います」と、タジタジになりながらも回答した。

豪華なメンバーが集まり、30周年に相応しい盛り上がりを見せた今回のオープニングイベント。最後に野々村チェアマンは、「ここからが大事だと思っています。いろんな挑戦をしながら、クラブ、現場だけではなく、皆さんを含めた仲間と一緒に、楽しいサッカー界にしていきたいと思います」と抱負を語っている。

 

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