Jリーグは、サッカーを通じて日本とASEAN諸国間のユース年代の交流促進を図る一環で、外務省が推進する対日理解促進交流プログラム「JENESYS」に、2024年に続き本年も協力しました。
本プログラムでは、10/28~11/4の日程で、スポーツを通じたSDGsへの貢献や社会課題解決に関心を持つASEAN諸国(11か国:ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、そして2025年10月に正式加盟した東ティモール)の高校生と引率者88名が来日しました。
約1週間弱の滞在で、Jリーグがサステナビリティに関する講義を実施したほか、日本サッカー協会が運営するサッカー文化創造拠点「blue-ing!」、国立競技場、ガンバ大阪などを訪問し、JリーグやJクラブが推進するSDGs関連活動や社会貢献活動について学ぶ機会を提供しました。
〇「Jリーグとサステナビリティ」講義
10月29日(水)。サッカー文化創造拠点「blue-ing!」にてJリーグのサステナビリティ領域担当の辻井隆行執行役員が「Jリーグとサステナビリティ」をテーマに講義を行いました。参加者が、「blue-ing」の視察を楽しんだ後、Jリーグの講義がスタート。Jリーグが開幕から変わらずに掲げ、実践している理念、「日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進」「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」「国際社会における交流及び親善への貢献」を紹介し、今日のようにASEAN各国の皆様と国際交流ができることも理念の推進にとって非常に大切な機会であるという話から始まりました。そして、理念の具現化として、ワールドカップに連続出場するなどの成果が出てきていること。地域密着を掲げ、10クラブ8府県から始まったJリーグが、設立から30年たち、現在は60クラブ41都道府県まで広がってきていることなどを紹介しました。一方で、近年大雨などの影響で試合が中止になり代替日で開催される試合数が以前よりも5倍近く増えており、Jリーグも気候変動の影響を大きく受けていること、そして猛暑により夏にサッカースクールなどが中止になることが増えてきていることから、サッカーを続けていくため、地域の人たちがスポーツを楽しめる環境を守っていくためには、Jリーグとしても気候変動対策にしっかりと取り組む必要が出てきたことを話しました。また、この取り組みを考える中で、スポーツの役割として、ファン・サポーターと共に活動をしていくことで、多くの市民の意識変革や行動変容を促していきたいこと、そのために、全国60か所でクラブが活動を推進できることも強み、特徴であるとして、各クラブの地域における気候変動対策の事例を紹介しました。
参加の学生たちも真剣な眼差しで聞き入る様子が見られ、質疑応答では、各国の参加者から積極的に質問が寄せられました。講義後も、多くの参加者が辻井のもとへ個別に質問をするなど、熱心さが伝わってきました。
参加者の声
・参加する前は、スポーツと気候変動にはほとんど関係がないと思っていました。しかし、日本のサッカーがどのようにSDGsを活動に統合しているかについての刺激的なプレゼンテーションを聞いた後、私の視点は完全に変わりました。(ベトナム)
・スポーツが人々の意識や行動に持続可能性を促す力を持っていることを実感しました。(ラオス)
・再生可能エネルギーの使用、廃棄物削減、環境に優しいスタジアムの推進など、サッカークラブが採用している革新的な環境ソリューションに深く感銘を受けました。(インドネシア)
・スポーツにおけるジェンダー平等に触れる機会もありました。日本がサッカーにおいて誰もが平等な機会を持てるよう努力していることを知り、意義深い講義でした。このセッションは目から鱗が落ちるような時間であり、今後へのモチベーションを引き出してもらいました。(ベトナム)





講義・視察・体験:ガンバ大阪
10月31日(金)、JENESYS一行は、ガンバ大阪を訪問しました。ガンバ大阪によるSDGs関連活動に関する講義では、クラブが大事にしている地域密着の理念や、スポーツを通じた社会貢献の具体的な実践例について理解を深めました。スタジアムツアーでは、実際の試合会場の裏側を見学し、プロスポーツの現場を体感。環境に配慮され、防災拠点としての機能を持つ施設である旨の紹介や、ファン、サポーターや市民からの寄付で建設されたという秘話等に驚きの声が続出しました。また、クラブパートナーのご協力のもと、たこ焼き作り体験も実施され、関西文化への理解を深める機会となりました。
たこ焼き体験の後は、棒サッカーおよびウォーキングフットボールの体験を実施。参加者はユニバーサルスポーツの理念やSDGsとの関連性について説明を受けた上で、実際にプレーに挑戦しました。年齢や体力に関係なく楽しめるスポーツの魅力を実感する貴重な体験となりました。
この日は、複数の国ごとにミックスされたチームで体験アクティビティに参加したことで、徐々に参加者同士が仲良くなり、笑顔で一緒に楽しむ様子も見られました。
参考記事:https://www.gamba-osaka.net/news/index/no/19316/
参加者の声
「講義で紹介のあった、キッズ向けサッカー教室や、地震で被害を受けた地域を訪問する活動が素晴らしいと思いました。希望、支援、そして力を他の人々に届けていると感じました。」(ラオス)
「ガンバ大阪がその影響力を活用して、環境や地域社会を支援していることに最も感銘を受けました。また、耐震性などの安全機能も備えており、社会への強い配慮とスポーツの素晴らしさを感じました。」(東ティモール)
「最も印象に残ったのはスタジアムツアーです。探検すればするほど、SDGsに関するアイデアを発見しました!特に、トイレ用に雨水を集める仕組み、トイレに子ども用シートを設置すること、に感動しました。」(ラオス)
「ユニバーサルスポーツは様々な人々を巻き込む非常に包括的な可能性を秘めていると思いました。」(シンガポール)
「他国から来た友達と一緒にゲームを楽しむことができ、今日は本当に楽しい一日でした!言語的・非言語的なコミュニケーションの形を学ぶことができました。」(タイ)
「今日はガンバ大阪とパナソニックスタジアムを訪れることができて、とても幸せです。本当に本当に幸せです。たこ焼きの作り方を体験し、グループでウォーキングフットボールを一緒にプレーできたことが、国を超えた関係を築く助けになりました。」(東ティモール)
「ガンバ大阪の活動に参加してとても幸せな気持ちです!フィールドのエネルギーは素晴らしく、同じサッカーへの情熱を持つ人々に囲まれていることが最高でした。一緒にユニバーサルスポーツをプレーし、応援し、笑い合ったことで、忘れられない一日になりました。」(カンボジア)
「ガンバ大阪OBで元日本代表の阿部浩之様がご一緒くださり、圧倒的且つ風格のある雰囲気がありました。アスリートとして、国を代表した方とご一緒することができ、本当に一生に一度の経験になりました。」(フィリピン)
「とても刺激的な1日でした。将来、地域社会に貢献できるよう、自分のスポーツスキルを磨きたいと思います。将来的にガンバ大阪がSDGsの目標をすべて達成することを願っています!」(フィリピン)
株式会社ガンバ大阪 事業本部 松岡 透氏コメント:
「スポーツは国や言葉を超えて、人々が近くなれることをあらためて認識しました。初めてのJENESYS受入れ体験でしたが、海外向けのプログラムとして対応できることが分かりましたので、機会があれば今後も実施したいです。今後はガンバ大阪のユースの選手との交流も実現出来ればと思います。」



JリーグYBCルヴァンカップ決勝視察・体験
11月1日(土)。最終プログラムとして、JリーグYBCルヴァンカップ決勝の視察と観戦を実施しました。
参加者たちは、会場の国立競技場に到着後、スタジアム外に設けたサステナブルステーションを視察しました。サステナブルステーションの前で説明を受けた学生たちは、積極的にスタッフへ質問をする姿も見られました。帰国後に衣類を集めて必要とする人たちへ寄付する取り組みをしたいと語る学生もおり、Jリーグがスポーツを通じて実施する活動から多くのことを学び実践しようとしてくれました。また、サステナブルステーションの隣に設置されたフェアプレーブースも見学し、担当者から、Jリーグが大事にしているフェアプレーの精神とその普及活動について説明を受けました。
関連記事:2025JリーグYBCルヴァンカップ決勝にて、サステナブルアクションを実施!
(リンク:https://www.jleague.jp/climateaction/report_sustainable_action/leaguecup.html/)
そして、いよいよお待ちかねの試合観戦。初めてのサッカー観戦という参加者も多く、満員のスタジアムの雰囲気や、各クラブのコレオグラフィーや応援とともに、熱狂の試合をお楽しみいただきました。
参加者の声
「日本ではサッカーがどのように環境に貢献しているかについて、例えばサステナブースでの古本回収や食料の寄付など、実際に自分の目で見ることで、経験と知識を得ることができました。」(カンボジア)
「試合前のサステナブースにとても感動しました。特に本や衣類のリサイクルプロジェクトです。古本が障がいのある方によって修理され、オンラインで販売されて資金を集めるという仕組みを知って、とても心を打たれました。これは持続可能性と地域支援の素晴らしい循環を生み出していますと思います。」(東ティモール)
「最も印象に残ったのは、スタジアムの外にあるサステナブースです。小さな行動で人を助けられるというのはとても感動的で、自分にとっては大きなことではなくても、他人の人生に大きな影響を与えることができるのだと思いました。」(ラオス)
「スタジアムで本物の試合を見るのは初めてだったので、忘れられない経験になりました。ファンの熱気や選手の興奮を感じ、日本のサッカー文化がどれほど情熱的か理解できました。」(ミャンマー)
「自分が知っている決勝戦は通常緊張感に包まれるものですが、今日見たのは両チームの美しいサポート精神でした。両チームの選手とファンが互いに敬意を払っていることに感動しました。」(フィリピン)
「女性の警備員が活躍している姿が印象的で、男女が同じ空間で活躍できることを感じました。」(インドネシア)



写真提供:一般財団法人日本国際協力センター(JICE)
【対日理解促進交流プログラム「JENESYS」】
●目的
ASEAN諸国の高校生他が、サッカーを通じて、日本の地域社会とつながり、SDGsの達成に向けた意識を高める。また、地域社会への貢献や日本文化の理解促進を図り、国際的な交流を通じて相互理解と友好関係の強化を目指す。
●期間
2025年10月28日(火)~11月4日(火)
●対象
ASEAN諸国の各国から高校生7名と引率者1名(1か国あたり)。合計88名。
●訪問地
東京都、大阪府
●プログラム(一部)
・Jリーグ辻井隆行執行役員(サステナビリティ領域担当)による講義実施
・JFA サッカー文化創造拠点「blue-ing!」視察
・ガンバ大阪視察(スタジアム見学、ウォーキングフットボール、棒サッカー体験等)
・国立競技場視察
■「JENESYS」事業概要
「JENESYS」は、日本政府(外務省)が推進する、日本とアジア大洋州の各国・地域との間の人的交流事業。本事業を通じて、諸外国青年の日本への関心・理解・支持の拡大、参加者による日本についての対外発信の強化、外交基盤の拡充を目的としている。
●HP:外務省公式ウェブサイト https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/rp/page24_001716.html
●実施団体:一般財団法人日本国際協力センター(JICE)https://www.jice.org/




































