スタートダッシュを決められなかった2、3月、スタイルを発揮し始めた4月を経て、5月初戦の明治安田J1第12節・福岡戦こそ敗れたものの以降は負けなし。ルヴァンカップ、天皇杯を含めて、浦和はここ10試合敗北を知らない。ではチームはいよいよ成熟を迎え、目指すスタイルを体現できているのか。それはまた少し話が違ってくる。富山と対戦した天皇杯2回戦を除く直近5試合の成績は2勝3分。この数字が悪いわけではないが、内容に目を向けてみると、相手に“支配”を許す時間が長かった。
「チームとしてゲーム運びは良くなってきたというか、我慢してチャンスを待つことで結果を手繰り寄せられているので、粘り強い戦いができていると思う」とチームの循環をつかさどる小泉 佳穂は現状を認識するが、それはやはり、納得感のあるものではないようだ。チームは確かに成熟してきている。相手の奇襲を受け止め、不利な時間帯を耐え、修正を施して勝ちと勝点を拾う戦い方ができている。しかし、ボールを握り、試合を支配するという当初目指していたスタイルを発揮できる時間は限られており、主導権を取り切れないジレンマを抱えている。
10戦負けなしの幕開けは5月5日、ルヴァンカップCグループ第5節の柏戦。キャスパー ユンカーの日本デビュー戦だ。このときからチームは北欧のストライカーがもたらす高水準のゴールによって勝利を得てきた。ただそれ以降、浦和が主導権を握る時間が減少しているのも事実。キャスパー ユンカーは高い戦術理解と得点する術を持っているが、守備の運動量という点ではやや物足りない。現状で得点力向上と引き換えに、前線からのプレスと即時奪回の強度は天秤がはね上がっている。ただこれは難しい問題だ。
キャスパー ユンカーにとにかく走り回ってもらい、かつ得点力が落ちなければ万事解決なのだが、そう簡単な話でもない。いかにチームとしてバランスをとっていくか、ゲームを支配するための解を探していくリーグ再開初戦となる。
一方の湘南も「あと一歩というか、あと半歩」(浮嶋 敏監督)のジレンマを抱えている。
むしろスタイル表現できているのは湘南のほうだろう。全員がハードワークする“湘南スタイル”はそのままに、浮嶋監督が就任してからはじっくりと攻める遅攻のエッセンスも注入されている。今季すでに浦和と湘南は二度対戦しているが、いずれもスコアレスの決着。とはいえ、やりたいサッカーができていたのは湘南だった。ただ、浦和とは逆に湘南は最終局面で火力不足に悩まされている。
リーグ戦で8戦無敗の時期もあり、連敗も二度しか喫していないが、18試合を終えてわずか3勝。引き分けはリーグ最多の『9』を記録している。フィニッシャーとして期待されるのがウェリントンだが、チーム合流当初はスーパーサブとして得点を挙げつつも、スタメン起用されるようになった直近のリーグ戦4試合では得点がない。
キャスパー ユンカーとウェリントン、どちらがよりゴールシーンで、さらにそれ以外のシーンでチームに貢献できるか。両外国籍ストライカーのオン・ザ・ボール、オフ・ザ・ボールに注目したい一戦だ。
[ 文:沖永 雄一郎 ]
