だが取材をしていると、チームからは降格の危機に瀕したピリピリ感は良い意味で感じられない。1年間通じて積み上げてきた手ごたえがあり、選手個々のやるべきことが明確だからこそ、残留争いという状況でも自信を持つことができている。
「柏でも大宮でも降格を経験した年は、攻撃をしていても、守備をしていても、なんとなく攻撃して、なんとなく守備をして失点することがあったなと感じていました。ですが湘南は軸があるので、うまくいかないときは『軸がブレているんだな』と立ち返れる場所がある。そういった意味で僕は勝てる自信を持って試合に臨めています」 瀬川 祐輔は自身の苦い経験と照らし合わせ、危機感どころかポジティブな感触を口にした。あとはその軸に沿った戦いをできるかが勝敗のカギを握る。
今節の対戦相手は、山口 智監督が「攻守においてアグレッシブで、プレーテンポも速い」と語る鳥栖。湘南と同じか、それ以上に強度の高いチームに対して自分たちの戦いを発揮できるか。
そして、鳥栖との試合を心待ちにしているのが、古巣対決となる中野 嘉大だ。今季途中まで在籍していたチームとの対戦を前に「だいたいの選手の特徴は分かっていますし、チームのやり方も知っているので、僕は楽しみ」と語る。中野は7試合連続先発中と湘南で重宝されていることが分かる。今季の鳥栖ではなかなか出番を得られず、出場機会を求めてチームを離れた経緯があるため、自分の実力を証明したいはずだ。
鳥栖は4試合勝利がなく、いずれも複数得点を奪えていない。前節・浦和戦で途中出場からゴールを挙げた宮代 大聖は「(ベンチから試合を見ていて)そんなに悪いサッカーをしていなかったと思いますけど、ボールを保持する中でチャンスを決め切れなかったり、ちょっと前線の動きが止まっているなというのは感じた」と課題を口にしていた。そんな中で宮代はディフェンスラインの背後を突いてロングボールを収め、反転からシュートを決めてみせた。
中断期間を経て迎える今節は、両チームにどんな変化が表れるかにも注目したい。そして何より、レモンガススタジアム平塚ではコロナ禍になって以降、初めての『声出し応援適用試合』が実施される。湘南は山口監督をはじめ、ホームでサポーターの声援を聞いたことのない選手が多くいるが、終盤の苦しい時間帯に間違いなく選手は背中を押されるはずだ。今まで取り組んできたことを信じ、全員で1つになって勝点3をつかみ取りたい。
[ 文:舞野 隼大 ]
