ただ、今季より愛媛の指揮を執る大木 武監督は、一般的には特別な思いを抱くであろう古巣戦を前にしても「なんで俺が熊本の監督だったからって熊本のことを特別視しなきゃいけないのか。身も心も愛媛にある」と“大木節”が全開。心血を注いだ6年間の思いにも意に介さない様子を見せる。
しかし、いつもどおりを貫く指揮官の本心を代弁するように、愛弟子たちは「大木さんは意識していないと言うかもしれないけど、大木さんが前に率いていた熊本には絶対負けたくない」(田口 裕也)と気合い十分だ。ダービーマッチにも似た空気感が流れている。
「良いチームだなと思う。片野坂(知宏)監督の色が出てきている。ソリッドにしっかり守れているし、しっかり攻撃できている」(大木 武監督) 大木 武監督は、片野坂 知宏監督の下、新たな体制で戦う熊本をそのように評価している。熊本も愛媛同様、後半戦からコンスタントに勝点を積み重ねており、前体制で築いたベースを生かしつつ、対戦相手によって柔軟に戦術を使い分けるチームスタイルは尻上がりに成熟している印象が強い。直近の明治安田J2・J3百年構想WEST-Bグループ地域リーグラウンド第18節では、アウェイで行われた山口戦をPK戦の末に制してプレーオフラウンドへはずみをつけた。勢いをつけてニンジニアスタジアムへと乗り込んでくるだろう。
ともに大木 武監督の“DNA”が組み込まれたチームだが、その方向性は“頑固”と“柔軟”で両極端。頑なに同じ戦い方を貫く愛媛と、臨機応変に相手へ対応する熊本という図式が見えてくる一戦で、どちらの長所が勝るのか。
[ 文:松本 隆志 ]

