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【J1:第27節 広島 vs F東京 レポート】広島のエースが引き寄せた流れに乗り、広島の若者が躍動。2点差をひっくり返し、5得点の大勝劇。(06.10.15)

10月15日(日) 2006 J1リーグ戦 第27節
広島 5 - 2 F東京 (15:05/広島ビ/11,689人)
得点者:'9 ジャーン(F東京)、'13 梶山陽平(F東京)、'21 佐藤寿人(広島)、'63 ウェズレイ(広島)、'65 李漢宰(広島)、'71 森崎浩司(広島)、'89 ウェズレイ(広島)
★ハイライト&会見映像は【こちら】
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 すべてを変えたのは、やはりエースのゴールだった。18分、佐藤寿人はF東京・ジャーンのタックルを受け、右足首を負傷した。歩くたびに引きずる足。プレーするのも不可能ではないか、と思えたのだが、その3分後に紫のエースは、エースとしての仕事をする。柏木の柔らかいクロスに対し、痛む右足をしっかりと踏み出して左足のボレー。オフサイドギリギリに飛び出す佐藤寿らしい動きから、見事なゴールを叩き込んだ。

 この試合、広島は13分で2点を失うという厳しい立ち上がりを余儀なくされた。が、0-2という展開の場合、次の1点をどちらがとるか、が勝負に大きく影響する。そしてこのタイミングで、広島サポーターの希望をつなぐ一撃を浴びせたのは、やはりエースだったのだ。

 このゴールの7分後、佐藤寿人は右足の痛みに耐えられなくなり、ベンチに下がる。広島期待の前田俊介が登場したとはいえ、追撃ムードに水をさしてしまいかねなかった。が、エースが足の痛みと引き換えに叩き込んだゴールは、別の選手を蘇らせる結果となった。U-19日本代表候補・柏木陽介である。

 それまで、柏木はF東京の動きに振り回され、まったく守備のタイミングがつかめずに狙い撃ちにされていた。ボランチの今野に左サイドバックの藤山の攻撃参加、そしてウイングの戸田も中盤におりてくる。流動的に自分のゾーンに出入りしてくる相手をつかまえることができず、何もできずにフィールドをさまよっていた。F東京の先制点も、柏木のゾーンで苦し紛れに広島が与えたファウルから始まっている。

 しかし、その彼が佐藤寿のゴールをアシストした。このプレー以降、柏木は変わった。自信なさげに腰が引けた様子は姿を消し、強烈なプレスを相手にしかけ、ボールを奪えるようになったのだ。後半、広島はラインを押しあげ、荒れ狂う波のように攻撃を続ける。それが可能になったのは、柏木が持ち前の運動量を活かして中盤を走りまくり、五分五分のボールまで支配したからだ。彼が元気になるにつれ、前半は個々での奮闘に終っていた森崎浩と青山で攻勢する広島の中盤が線でつながり、攻撃に連続性と流動性が出てきたのだ。

 ボールを支配し始めた広島は、徹底してF東京の左サイドを攻め始める。戸田や柏木がロングボールを次々と供給し、そこに走り込んだ李漢宰からのクロスを起点に、広島はあっという間に逆転に成功した。さらに前田俊介のキープから森崎浩司、高柳一誠のクロスからウェズレイと得点を追加。交代選手たちの活躍でエースがいなくなった後半の広島は4点を奪取し、2000年5月17日対磐田戦以来の、0-2からの逆転劇を果たした。

 柏木はまだ18歳、パフォーマンスに波のあるのは仕方がない。いい時は日本代表を相手にしても堂々たる動きを見せ、ドリブル・スルーパス・シュートとやりたい放題できるが、悪い時はピッチから完全に姿を消してしまいチームのリズムをこわしてしまうこともある。しかし、その極端なリズム差が、1試合の間に、しかも一つのプレーを境にして生まれてしまうとは。サッカーとはこれほどまでに、メンタルコンディションが大きく影響してしまうスポーツなのか。そのメンタルコンディションの問題は、F東京にも現れた。

 いいリズムで2点を先制したのに、1点返されただけで守備に入ってしまう。ルーカス投入で後半早々はペースをとり戻したのに、広島GK・下田のファインセーブなどでしのがれると、また意識が後ろに傾き、広島の攻勢をまともに受けてしまう。3点目を失えば下を向き、4点目で足が止まった。ボールを奪ってしゃにむに攻めないといけないのに、逆にこれ以上の失点を怖れるかのように、前に出ることができなくなった。そして、無理矢理に攻め込んでは柏木を先兵とする広島の中盤にボールを奪われ、ウェズレイによるカウンターを演出させてしまう。前節、取り戻したはずの自信は、完膚無きまでに打ち砕かれてしまった。

 こうやって振り返って考えると、試合の分岐点はやはり佐藤寿人による広島の1点目だ。彼のゴールによって柏木が生き返り、チーム全体に勢いがつき、そしてF東京が築こうとしていた自信という城を打ち砕いた。出場時間は28分と短かったが、佐藤寿人は間違いなく広島のエースとしての責務を果たしたのである。

以上

2006.10.15 Reported by 中野 和也
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