12月19日(日)Jユースカップ2010:準々決勝
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◎広島の気持ちの強さが横浜FMの気持ちを引き出した好ゲーム
横浜FM 5−3 広島(11:00@長居第2)
得点者:14' 松本翔(横浜FM)、35' 高橋健哉(横浜FM)、36' 宗近慧(広島)、43' 脇本晃成(広島)、48' 越智翔太(広島)、81' 松本翔(横浜FM)、109' 星広太(横浜FM)、110+1' 松本翔(横浜FM)
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試合終了の笛を聞いてピッチに倒れこんだ広島の選手。スタンドのサポーターに挨拶をした後も、ベンチ付近で呆然と座り込み、涙が止まらない。多くの想いが詰まった悔しさ。しかし、砂川優太郎(広島)は「悔しいけれど、後悔はない」と言い切った。この言葉が出てくるところに広島の凄さがある。負けてもサッカーの敗者ではない。流した涙を成長に繋げることで勝者になることが出来る。
お互いにチャレンジャーとして、相手を尊重して試合に臨んだ。中盤で厳しい攻防を繰り返して主導権争いをする中、トップ昇格を決めている『ひとり嵐』の松本翔(横浜FM)がペナルティエリア付近で倒された。ドリブル突破から切り返した場面だった。長居第2の茶色く枯れた芝生に引かれたペナルティエリアを示すラインはスタンドからは非常に見辛かったが、判定は中ということでPK。倒された松本がPKを決めて横浜FMが展開の主導権を取る。35分にはカウンターから松本が入れたクロスを中央の高橋健哉がワンタッチで決めて2-0。普通はこれで流れが決まるのだが、森山佳郎監督が鍛えた広島がこれを許すわけはない。逆に、広島のスイッチが入った。
「失点してようやく気持ちのエンジンが全開になった。前から前から行けるようになった」とディフェンスリーダーの宗近彗が言うように、横浜FMの上手さを無意識のうちに警戒し過ぎた広島の選手たちが、自分たちのストロングポイントを出せるようになった。1分後に宗近のゴールで1点返すと、43分にコーナーキックから脇本晃成が頭で決めて同点。これが広島の凄さ。前半を終えてロッカーに戻る森山監督は苦笑いだった。後半は同点に追いつかれた横浜FMが流れを変えることが出来ず、広島の迫力を受けてしまった。失ったボール奪い返す広島の気迫は横浜FMの上手さを上回り、執着心の違いを明確に見せ付けた。48分に越智翔太がFKのこぼれ球を決めて3-2と広島が逆転する。広島の3得点は全てセットプレーがらみで、決めたのは3バックの3人。
「広島がセットプレーを得意にしていることは分かっていたけれど、厳しいマークが出来ずに自由にさせてしまった」と熊谷アンドリューは試合後に話した。この先の問題は失った流れをどう取り戻すのかだった。周囲の前評判通りに、広島のメンタルの強さを逆転負けで横浜FMは屈辱とともに証明するのか。しかし、松橋力蔵監督が試合前に「真っ向勝負をする。外から見れば広島のほうがメンタルの強さで上と思われているかもしれないが、僕はそうは思っていない」と信じる選手はそれに応えた。2-3と逆転されたが、上手さだけでなく、それに気持ちを加えて粘り強く広島に食い下がり流れを徐々に押し戻していった。お互いに足が攣る選手が出てきたこともあって決定機の一歩手前までは行くものの、その疲れがチャンスをモノにすることも阻んでいたが、一つの攻防が流れを変える。79分に1対4のカウンターを受けた広島。DF・越智が退場を代償にそれを止めるが、代わりに与えられたFKを松本が決めて横浜FMが同点に追いついた。「最初の失点が自分のパスミスで、そこから広島を乗せてしまった。3点目のFKは普通なら8枚並んだ壁の上を狙うけれど、GKの足の動きを見てファーを狙ったほうがいいと思ったので、壁の横を巻くキックを選択した」と言う松本のシュートは、「GKとの駆け引きに勝てた」と満足の同点ゴール。このゴールは横浜FMのメンタルが強くなっていることの証明でもあった。
延長戦(10分×2)に入るとお互いが交互に良さをぶつけ合う展開。両監督もタッチラインのギリギリまで出て行って指示を出し、試合を見つめる。お互いの疲れが相手にチャンスを与え、その疲れでチャンスを逃す。この展開の中、延長後半の107分に横浜FMのFW・星広太の両足が攣り、マネキンのようにスタッフに抱きかかえられてピッチの外に出された。松橋監督は剣持和義を準備させるが、「すぐに交代させなかったのは、その状態に星(広太)がどう向き合うのか見たかった。その一瞬一瞬が選手の成長に繋がる。本人が『やりたい、やれる』というのならやらせようと思っていた」という理由で、少し待った。「やりたい」と意思表示した星(広太)はピッチに戻る。そして、2分後に決定的な仕事をする。途中出場の鈴木雄斗が右サイドで切り込み、渡辺大斗がゴールラインギリギリから折り返したグラウンダーを星(広太)が決めて逆転。松橋監督の決断が選手の可能性を広げたゴールでもあった。リスクを冒して同点を狙うしかない広島に対して、後半のロスタイムに松本がハットトリックとなるダメ押しゴールを決めて最終スコアは5-3。
試合後、横浜FMの松橋監督は「ひっくり返すことが得意の広島相手に、ひっくり返せたことがよかった」と話した。広島の凄さを知る人ほど、この価値を感じるはず。2-0→2-2→2-3と逆転される流れだったが、3-3に持ち込んで、最後は5-3で勝利。選手に『自信』をもたらせる大きな勝利。ハットトリックの松本は、「自分たちも強くなったと自信を持って戦う事が出来た。2-0とリードしても広島がそこから喰らい付いて来ることは分かっていた。広島は強いと思った。でも、自分たちの方が走れていたと思う。全員が最後まで走りきった。リードされている時は、広島サポーターが出していたバナーの『気持ちには引力がある』という言葉を見て、それを横浜FMが実践しようと思っていた。気持ちには引力がありますね。気持ちの強い広島に気持ちで勝てたことが嬉しい」と話した。サッカーはお互いがお互いの能力を引き出すスポーツ。だからお互いを尊重する。広島が強いから、それを尊重する横浜FMが強くなれた。トップチームでもこれだけの素晴らしい試合をすることは難しい。そして、来年は広島がこの悔しさをエネルギーにしてステップアップする。
◎可能性の宝庫・京都が磐田の上手さを封じ込めてベスト4進出
磐田 1−4 京都(14:00@長居第2)
得点者:3' 久保裕也(京都)、17' 原川力(京都)、20' 宮村緯(磐田)、37' 山田俊毅(京都)、78' 駒井善成(京都)
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今年のJユースカップではJ1の上位5チームのうち、決勝トーナメントに進出したユースチームはC大阪だけだが、降格チームの3チームと残留の危機があった神戸、大宮、磐田などは決勝トーナメントに進出している。つまり、下位を経験したが希望もあるということ。その中で、京都は大きな希望を持っているチームということが言える。今年は4人(駒井善成、伊藤優汰、山田俊毅、下畠翔吾)がトップに昇格、来年昇格が有望な2年生も数人おり、育成は順調に見える。トップの監督が代わるたびに育成の監督が入れ替わることもあったが、逆に考えれば京都の育成にいるスタッフは多くの監督の考え方を勉強する機会に恵まれているという見方もできる。その一人が現U-18の本田将也監督と言っていいだろう。
「今日の攻撃のスタートポジションは3-1-5-1で守備は4-4-2です」と本田監督から聞いた時は、面白いと思った。システムマニアではなく、アバウトな言葉を使って選手に説明するのではなく、分かりやすく伝えるために数字を使っているのだと理解した。実際に試合を見ると、京都の攻撃になるとスタートポジションの配置は分かりにくいが選手は生きいきと動いている。前線の選手が流動的に動いているからどんなシステムでも当てはまりそうに見えるが、トライアングルのバランスは悪くない。そして、選手に混乱もない。夏のバルセロナ遠征などの公式戦以外の試合でじっくり取り組むことが出来たからだ。F東京のような完成度や安定感はまだないが、レベルの高い選手が揃う磐田相手に17分間で2ゴールを決めることが出来るのは、成果が出ている証拠。ディフェンダーのミスで1点を返されるが、37分にはPKを獲得して再び2点差に突き放した。
「京都はレベルの高い選手が揃っている」と言われるが、その一人がアタッカーの駒井。ボールが足についたままスピードに乗ったドリブルが出来る選手で、スタンドのお客さんを沸かすことが出来る。そして、それ以上に素晴らしいのが「ドリブルが独りよがりにならないように考えている」と、ともすれば周囲が祭り上げることもあるが、それに乗らないことも意識している。本田監督も気にしているようだが、駒井はいいバランスで個を発揮することが出来ている。
磐田は駒井をはじめとする京都の個を意識しすぎて、自らのストロングポイントを十分に発揮することが出来なかった。1-2と1点差に迫った段階で試合を落ち着かせることが出来ていれば展開は変わっていたはずだが、PKを与えて京都に3点目を許して流れを変えるチャンスを逸した。キャプテンの和久田章太は「京都ペースの時間が長く、自分たちがボールを持てる時間を増やすことが難しかった。慌てず、もう少し自信を持ってプレー出来ればよかった。京都のプレーに対してイメージは持っていたが、思っていた以上に上手かったし速かった」と話したが、「悔しいけれど、やりきった」と言えるだけの気迫は見せた。試合に負けても、この経験も活かせば勝者になれる。「大学を卒業したら、もう一度磐田に戻ってきたい」というキャプテンの思いは後輩のエネルギーになるはずだ。新監督として制度(ユースの大会)の変更などの難しい環境の中でチームを率いた大石隆夫監督は「去年の成績がよかったので、選手はそれをプレッシャーに感じていたのかもしれない。選手にとって制度変更の中で難しい1年だったと思う。勝負どころを抑えられたことが敗因」と話したが、この経験をどう成長に繋げるのか注目したい。
守備では4-4-2でブロックを作って磐田の攻撃力を抑え、攻撃では3-1-5-1のスタートポジションから相手のバランスを崩すために自分たちのバランスを崩して磐田から4ゴールをもぎ取った京都。選手もこの分かりやすいコンセプトのもと、攻撃では自由に攻め上がり、守備では堅くゾーンで守った。攻撃のバランスがよければ、守備になった瞬間のバランスもいい。試合後は次のF東京戦のことが話題になっていたが、選手は夏のクラブユースで負けたF東京に対して意欲が高い。
12月23日の長居は京都対F東京の新旧の「都」対決と、東京V対横浜FMのJリーグのオープニングゲームを戦ったクラブの伝統の遺伝子を受け継ぐチームの対決。素晴らしい4チームが勝ちあがっている。ぜひとも注目して欲しい。
以上
■12/23(木・祝)Jユースカップ2010 準決勝
京都 vs F東京(11:00KICK OFF/長居)
東京V vs 横浜FM(14:00KICK OFF/長居)
☆J'sGOALでは準決勝からスコア速報も実施する予定です。お楽しみに!
2010.12.20 Reported by 松尾潤



































