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【J1:第13節 川崎F vs G大阪】レポート:半信半疑の予感が現実のものに。中村憲剛の劇的な決勝弾で川崎Fが逆転勝利。敗戦のG大阪は勝負弱さを克服したい。(11.05.30)

5月29日(日) 2011 J1リーグ戦 第13節
川崎F 2 - 1 G大阪 (16:03/等々力/14,056人)
得点者:51' アドリアーノ(G大阪)、61' 中村憲剛(川崎F)、90'+4 中村憲剛(川崎F)
スカパー!再放送 Ch180 5/30(月)後00:00〜
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誰もが半信半疑ながら、その結末を予感していたという。

たとえば柴崎晃誠。「最後は決めてくれるんじゃないかと思っていました」。

たとえば、安藤駿介。「あれが入るんですかね。入る気はしたんですが、あそこに行きますかね」。

菊地光将と共に最終ラインで体を張り続けた井川祐輔は「等々力ということもあったが何かあるという予感はありました。ただ、やってる選手もびっくりしました」と自ら予感しながら、それが現実のものとなったそのプレーに驚きを隠さなかった。

すでに場内にある大型モニター脇にあるデジタル時計は消えており、後半がアディショナルタイムに入っていた事は選手たちも自覚していた。両チームの選手たちの祈るような思いが交錯し、スタジアムを埋めたサポーターからの強烈な視線が集まる中、セットされたボールを前に中村憲剛は冷静に状況を分析していたのだという。

「アディショナルタイムだという事は知っていました。蹴った後にワンプレー有るか無いか。滅多にある展開ではないですね」

外せばいつ試合終了の笛が吹かれてもおかしくはないという時間帯でのFKである。プレッシャーが掛からないわけがない。しかし、中村の右足から放たれたシュートは美しい弧を描きながらゴールネットを揺らし川崎FがG大阪を逆転。等々力が喜びの感情をたぎらせるその最中に、試合終了の笛が吹かれるのである。

試合を前にして見所は多かった。川崎Fは柴崎晃誠が、G大阪は宇佐美貴史がフル代表に初召集されており、日本代表のザッケローニ監督が視察に訪れる中での試合となっていた。彼らの代表入りが、少なくとも川崎Fにとって前向きな、つまりは「勝って送り出したい」という雰囲気を作っていたのは事実だった。

また、奇しくもこの両者は直近の公式戦をC大阪を相手に戦っており、川崎FはC大阪に2点差を追いつかれてのドロー決着に。G大阪は後半終了間際の失点によりACLという大きな大会から姿を消さざるを得なかった。

同じ相手に対し苦戦したチーム同士の対戦は、その苦い思い出を払拭するかのようなオープンな打ち合いになっていた。まず仕掛けたのは、川崎Fである。試合開始直後のプレーをCKにまでつなげると、そのCKをU22日本代表に選出された登里享平が頭で合わせる。G大阪も3分にCKの場面から川崎Fゴールに迫るが、ニアポストでカバーしていた中村が弾きだして事なきを得ていた。

この日、川崎Fのゴールマウスを守っていたのは、この試合がプロ入り後の初出場となった安藤駿介である。前述の登里享平、ベンチ入りしていた實藤友紀と共にU22日本代表に召集された安藤は、無難な立ち上がりで試合を引き締めていた。

オープンな打ち合いだとは書いたが、前半のシュート数は川崎Fが4本。G大阪が5本と決して多いものではない。ただ、それでもこの前半が激しい攻防に思えたのは、両チームが守備をベースとした戦いを指向したのではなく、飽くまでも自らの攻撃に主眼を置き、相手をねじ伏せようと試合を進めたからであろう。雨に濡れたピッチコンディションが影響したのかミスが散見されたのが残念ではあったが、国内でも屈指の攻撃的なチーム同士の激しい戦いは、見所十分のものだった。

前半を0−0で折り返した試合が動いたのは、後半51分のこと。川崎Fのエリア内でイ・グノと競り合った田中裕介がファールを宣告され、PKの判定に。これをアドリアーノがきっちりと決めて均衡が破れる。ホームでは負けられない川崎Fは、ここから両サイドバックのオーバーラップが目立ち始めると、失点から10分後の61分に同点ゴールが決まる。左サイドの登里から小宮山尊信へとパスが繋がり、ラストパスを受けた中村が放ったミドルシュートが決まるのである。同点に追いついてからの川崎Fは、G大阪を攻めに攻めた。そしてその攻撃の中心にあったのは、今季初先発の小林悠である。

「チャンスが増えてきていると思いましたが、そこで決めないと。チャンスがたくさんあっただけに、決めないとダメですね」と両チーム最多の6本のシュートを、それも後半だけで放ちながら無得点に終わったストライカーは反省の弁を口にする。

65分には中村からのパスを受けて強烈なシュート。この直後には、クロスバーに当たった山瀬功治のシュートのこぼれ球に反応するが枠を捉えきれなかった。78分、88分にも小林は決定的な場面に顔を出すのだが、ゴールからは見放されたままだった。これら小林が絡む決定機の数でG大阪を圧倒していただけに、消化不良感の募る後半アディショナルタイムになっていた。そうしたバックグラウンドがあるからこそ、中村のFKはチームを救ったのである。

ミックスゾーンの中で、川崎Fの選手としてはただひとり浮かない顔をしていた小林に関しては、試合後の会見で相馬直樹監督に「交代する気はなかったのか」との質問が出ている。これに答えた相馬監督は他の選手であれば違った結果が出ていた可能性にも言及しつつ「そこ(決定的な場面)に居るということが、素晴らしい事だと思っています」と話し、彼を起用し続けた理由を説明している。これについては筆者も同意する。シュートを打てないストライカーよりは、シュートを何本でも打つストライカーの方が、同じ無得点であったとしてもはるかに優れているのは間違いない。

ちなみに中村に救われた形となった小林は「明日からシュート練習します」と相馬監督に宣言したという。その成果が出る日が楽しみである。

なお、逆転負けを喫したG大阪は中澤聡太が「負けてなかった中(1点を先制した後)、リスクを取り過ぎましたね」と話す一方、遠藤保仁も「逃げきるならその形に持っていかないと。戦い方が中途半端だった」と試合運びのまずさについて言及していた。これは、西野朗監督の「内容的にはなかなかチームスタイルというものには遠い」としつつも「結果に関してはどっちに転がってもという試合を2試合連続、引き寄せられなかったという中での弱さは感じますね」との印象とつながるものがある。つまり良くはない中、勝つために何かをやらなければならない、という考えをチーム内で共通して持っているという事である。チーム状態を上向かせるためにどれくらいの時間がかかるのかは分からないが、少なくとも現在の状態を好転させるべく試行錯誤が続きそうだと、そんな事を感じさせる試合後のG大阪のコメントだった。

以上

2011.05.30 Reported by 江藤高志
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