J1リーグ戦中断期間前最後のゲームとなるこの第13節。勝点4で18位の札幌が、同22で2位につける広島を札幌厚別公園競技場に迎えて戦う。いいメンタリティで中断期間へ突入するためにも、どちらも絶対に勝点3を取って流れに乗りたいタイミングだ。
ホームの札幌は前節、ショッキングな敗戦を喫してしまった。スコアは0−7。鹿島の攻撃スタイルを考慮して石崎信弘監督は今シーズン初めて3バックのシステムで試合をスタートさせたが、早い時間帯に失点をすると、その後は防戦一方。ほとんど良い場面を作ることができず大敗を喫してしまったのだ。最終ラインの櫛引一紀が「こんなに失点をしたのはサッカーをやっていて初めてのこと」と口にするなど、選手たちのショックは決して小さくない。
そして、さらなるショックとしては攻撃の絶対的なキーマンである前田俊介がこの試合で負傷。後日に行った検査の結果、左足もも裏肉離れで全治3ヶ月と診断されてしまった。「相手ゴール前で独自のアイデアを持つ選手」と石崎監督が今シーズンの攻撃の軸として重用してきた前田。チームとしてなかなか結果が出ていないものの、試合を重ねるごとに前田が何度も好機を演出するようになり、石崎監督の目指すサッカーがいよいよ形になりつつあるタイミングだった。そこでの離脱とあって、痛手は計り知れない。また、韓国人GK李昊乗(イ ホスン)も16日のヤマザキナビスコカップで左アキレス腱断裂という重傷を負ってしまった。ただでさえ負傷者の多い今シーズンの札幌が、さらに主力を欠く状況となってしまっている。
だが、チームがショックをそのまま引きずってこの試合に入るとは限らない。
「鹿島戦の前までは『ある程度の内容で戦えている』という拠り所があった。でも、鹿島戦の大敗でそれがすべて吹っ飛んだ。とにかくもう、やるしかない状態になったので、すべてをかけて広島戦に挑む」。こう話すのはGK高木貴弘だ。そして古田寛幸は「あれだけ屈辱的な負け方をして、それをバネにできなかったら話にならない。あの大敗を払拭するような戦いをしていかなければいけない」と誓う。そう、リーグ戦というのはひとつの大勝ですべてを得られることはないし、ひとつの大敗ですべてを失うこともない。札幌は、前節の大敗を糧にしていかなければいけない。
一方で敵地に乗り込む広島の前節は、ホームで神戸と対戦して3−2で勝利。それも一時は逆転されながら、それを84分に石原直樹、90+1分に森脇良太が決めて劇的に逆転してのもの。チームに勢いを生みそうな勝利だった。森保一監督も「選手たちの最後まで諦めない姿勢は、素晴らしかった。あの状況で逆転されると、下を向いてそれで終わりという流れになりがち。でも、選手たちはそこから奮起して再逆転してくれた」とチームのタフなメンタリティを称えている。
今シーズンの広島は、4得点以上を奪っている試合がすでに3試合あるなど、攻撃陣が勢いに乗った際のパワーは見事なもの。それも前線の佐藤寿人だけでなく、前節に得点を上げた水本裕貴、森脇といった後方、サイドの選手も積極的に相手ゴール前へと飛び込んでくるのがポイントだ。
監督が変わり、昨シーズンまでの得点源も移籍をしてしまった今シーズンだが、チームが一枚岩となった流動的なパフォーマンスでリーグの台風の目となりつつある。前節の劇的な逆転勝利で、どこまでチームに勢いが生まれるのか、注目が集まるところだ。
さて、そんなチーム同士の対戦だが、ひとつの大きな焦点となるのはやはり、札幌の守備陣がどれだけの修正を果たせているかだろう。なにしろ前節に7失点を喫しているだけに、そこからの改善が急がれるところ。だが、櫛引はこう話す。「確かに屈辱的な試合だったけど、失点を振り返っていくと、ちょっとしたコミュニケーションで改善できるものはいくつもある。技術的な部分は1週間でどうにかできるものではないが、連係の部分ならば、やりようによっては何とかなる」。大量失点の事実については重く反省しながらも、光明はしっかりと見出しているようだ。
7失点をしたからといって、それが1敗以上の価値になることはないし、メンタル的にそうしてしまってはいけない。確かに、得失点差の部分が大きくマイナスになったかもしれない。だが、得失点差を意識して戦いながらも7失点をしたわけではないのだから、そこまで重く捉える必要も本来はない。筆者のこの原稿も含め、どうしても7失点という部分ばかりがクローズアップされてしまうかもしれないが、一時の我慢である。結果を出せば、その空気も一蹴できるはずだ。
劇的な逆転勝利直後の試合である広島がさらに勢いに乗るのか、それとも札幌が悪い流れを払拭してみせるのか。その部分に大きな注目が集まることになる。
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2012.05.25 Reported by 斉藤宏則




































