新潟が悪い流れから脱却するため、アウェイといえどもアグレッシブに仕掛けてくることは想定通りの展開だった。「相手がボールを持ったら奪いに行く。奪ったら攻撃につなげる。シンプルですけど原点から出発しようと話し合い、練習をしてきた」(上野展裕ヘッドコーチ)。柏の最終ラインがボールを持った途端、ビルドアップを許さないとばかりにブルーノ ロペス、矢野貴章が前から積極的にプレスを仕掛け、ディフェンスラインを押し上げたコンパクトな陣形の中で連動した守備を見せる。柏の自陣でのパスワークを、ボランチの本間勲、三門雄大、あるいは両サイドバックの村上佑介、菊地直哉が的を絞り、狙い通りに奪っては素早い攻撃へ転じた。
この新潟のアグレッシブな勢いに押され気味にあった柏は、プレッシャーが厳しい局面なら無理にパスをつながず、シンプルに蹴って工藤壮人、田中順也が新潟の高いディフェンスラインの背後を狙う。一見、単調に見えたこの戦い方だったが「相手の出方を我々は十分理解して臨んだ。中で戦っていた選手たちは徐々に落ち着きながら対応できた」とネルシーニョ監督が振り返る通り、ロングボールで新潟のディフェンスラインを押し戻し、それによって生じた中盤のスペースを使いながら、パスをつなぐところと蹴るところのメリハリを効かせ、新潟のプレッシングに対抗した。
試合が動いたのは32分。レアンドロ ドミンゲスのフリーキックがニアに入り、競り合いでフワッと浮き上がったボールがゴール前へ。これをGK東口順昭、矢野、工藤、増嶋竜也が競り合い、こぼれ球を大井健太郎がクリアし切れずにゴールラインを割る。オウンゴールという形で柏が先制した。
後半になると、コンパクトだった新潟の陣形が徐々に間延びし出し、柏がそのスペースをカウンターで突いていくのだが、守から攻へ切り替わった時のパス精度が悪く、双方がカウンターを繰り出すというバタバタしたせわしないゲームと化した。柏は栗澤僚一と澤昌克が入ることで、その慌ただしい展開に落ち着きをもたらし、ようやくカウンターからフィニッシュまで持ち込めるようになったものの、レアンドロ、ジョルジ ワグネル、工藤らの度重なる決定機はGK東口がファインセーブを連発して阻止。東口のプレーがなければ、一方的なスコアになってもおかしくはなかった。
序盤からプレッシャーをかけ続け、ハイペースの試合展開に持ち込めば、新潟にはやはり体力的な消耗は否めない。実際に菊地は「後半は距離間が少し離れて、立ち止まってボールを受けることが多くなってしまった」と運動量の低下によるペースダウンを語っている。しかもビハインドを背負った状況では前がかりにならざるを得ず、柏の目論見通り「相手の出方を逆手に取る戦い方」(ネルシーニョ監督)に持ち込まれるのだった。したがって1点差が続く、緊迫したゲームに決着をつけたのも柏のカウンターだった。86分、新潟のセットプレーのこぼれ球から怒涛のカウンターを発動。レアンドロからジョルジへつなぎ、最後は縦へ抜け出した澤が東口との1対1を冷静に制して2−0とした。
ハイプレスを90分間継続できるか、奪った後どう効率的に攻撃へつなげるか、そして前から仕掛けた時のリスクマネジメントなど、新潟にいくつかの課題が見えたのは事実である。それでも監督交代から1週間という短い期間で方向性を示し、課題を残した反面、それ以上に大きな光明を掴んだようにも思える。リーグ戦の中断期間中にどこまで戦術を詰められるか、そこが今後の巻き返しへの重要なキーになりそうだ。
また、柏にとっては決して満足のできる試合内容ではなかったが、「勝ってキタジさん(北嶋)を送り出したかった」(大谷秀和)とチーム一丸となって公式戦4連勝を飾り、25日に熊本への期限付き移籍が発表された北嶋秀朗を勝利で送り出せたことは何より大きかった。いかなる時でも柏を守り続けた偉大なる「背番号9」。その熱い魂を受け継いだ柏は、休む間もなく中3日でAFCチャンピオンズリーグのラウンド16、蔚山戦へ挑む。
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2012.05.27 Reported by 鈴木潤




































