「お互い勝点3を取らなきゃいけない状況ということで、かなり難しくなるだろうとは予想していました」
試合後の会見で札幌の財前恵一監督はそう試合を振り返った。キックオフ時点での順位は札幌が8位で群馬が20位。それぞれJ1昇格プレーオフ進出争いと残留争いの渦中に身を置き、ともに前節は敗戦。どちらも、何としてもここで勝点3を積みたいシチュエーションだった。
そうした試合というのは、得てして固く膠着しがちなものである。勝ちたい気持ちが強いと同時に、「負けたくない」という心理も高まり、双方が過剰に慎重になることが多々あるからだ。だが、予想に反して試合は早々に動いた。4分、群馬の青木孝太がテクニックを生かして敵陣で突破すると、エデルのゴールを御膳立て。アウェイの群馬が早くもリードを奪ってしまった。
この失点について財前監督はこう話す。
「早々に失点をしてしまったのですが、早かったので、その意味ではそこはあまり問題ではなかったのかな」
そう、残り時間は80分以上もあるわけで、そのうえ8位のチームが20位のチームをホームに迎えての試合であることを考えると、逆転の可能性は充分すぎるほどある。ただし、別な角度から見た場合、この失点があまりにも痛いものであることがわかる。
この試合、札幌は負傷から復帰したセンターバックのパウロンを約3ヶ月ぶりに先発で起用。前節まで同ポジションの一角で要となっていたチョ ソンジンを右サイドバックにスライドさせ、また本職はサイドバックである日高拓磨を「プロになって初めて」という守備的MFに配置。守備力の高い選手を後方に多数配置する布陣を敷き、手堅くゲームに入っていた。にも関わらず開始僅か4分に失点をしてしまっては、いくら残り時間がたくさんあるとはいえ、ゲームプランにはズレが生じたはずだ。
また、守備的な選手を多く配置したが故に、札幌が本来志向する、ショートパスをつないで攻める攻撃は影を潜め、長身FWフェホにシンプルに蹴るプレーが多くなってしまっていた。加えて、チームとして少し引き気味の状態でのロングボール多用なだけに、全体が間延びしており、セカンドボールはほとんどが群馬の選手の足元へと転がっていった。
後半からはフェホに代えてキープ力のある前田俊介を前線に置き、札幌は高い位置で時間を作ることで流れを変えようとしたのだが、その矢先にGKのファンブルから再びエデルに蹴り込まれ0−2のスコアに。この日の札幌はどうも歯車が噛み合わないままに試合を進めてしまっていた印象だ。
勝点3を取るためには3得点が必要になった札幌は、そこから積極的に攻撃を仕掛けて群馬を押し込み、66分には途中出場の荒野拓馬が見事なボレーシュートを決めて1点差とする。ここから流れが一気に変わるかもしれない、と思われた矢先の73分。群馬が敵陣で得たFK時に札幌はファーサイドへのケアが遅れ、乾大知に簡単に折り返されて、今度はダニエル ロビーニョに決められて「万事休す」(財前監督)。結局、3−1でアウェイの群馬が快勝した。
あらためて試合全体を振り返ってみると、6位以内を目指す札幌があっさりと敗れてしまった背景としては、ゲームプランのズレや歯車がうまく噛み合わなかったことや、その他様々な要素が重なったとは思うが、結局のところは要所で失点に直結するミスをしてしまっていることがあまりにも大きい。これはシーズン序盤から時々、顔を出している部分であり、試合後のミックスゾーンでほとんどの選手が口にした「実力不足」という言葉は的を射ていると言う他はない。ただし、前田が入ってマイボールの時間を増やしてからは相手守備を圧倒する局面を作っていたし、順位を10位に落としてしまったとはいえ、6位との勝点差は6。当該チームとの直接対決が残されていることを考えると、課題の改善がなされればまだまだ十分にチャンスはある。下位チーム相手の連敗となってしまったが、逆に言えばライバルチームに勝点3を献上したわけではないのだから、そうした部分を前向きに捉えていきたいところだ。
また、勝った群馬の粘り強さも賞賛しなければならないだろう。「GK含めて最終ライン、ボランチ、全員がよくアグレッシブにアクションを起こしてディフェンスをしてくれたというところが今日のゲームに結びついた」と秋葉忠宏監督が自チームを称えたように、後方の選手が粘り強く相手の猛攻を跳ね返し、前方の平繁龍一、青木の個の力を生かしてチャンスを作るというシンプルな戦略がしっかりと奏功していた。「今後の試合に生きる勝利」と小柳達司が発したように、厳しい残留争いのなかでの、非常に大きな勝点3となったはずである。
どちらも勝点3が欲しい場面でアウェイの群馬が勝利。順位としては札幌が上だが、要所を締め、要所を生かすという、勝負におけるシビアさの部分では下位の群馬が上回った試合だった。
以上
2013.10.07 Reported by 斉藤宏則
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