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中村 憲剛の視点:痛恨だった後半早々の3失点目。敗戦のショックは小さくないが、結果を信じて最終戦に臨んでほしい【ACL 蔚山vs川崎F】

2022年4月28日(木) 14:00

中村 憲剛の視点:痛恨だった後半早々の3失点目。敗戦のショックは小さくないが、結果を信じて最終戦に臨んでほしい【ACL 蔚山vs川崎F】

中村 憲剛の視点:痛恨だった後半早々の3失点目。敗戦のショックは小さくないが、結果を信じて最終戦に臨んでほしい【ACL 蔚山vs川崎F】
本当に最後まで何が起こるのか分からないのがACLです。だからこそ最後まで自分たちの戦いを貫き、結果を信じて最終戦も頑張ってもらいたいです

激闘が繰り広げられるAFCチャンピオンズリーグ。グループステージ突破を狙うJリーグ勢はアジアの難敵相手にいかなる戦いを見せたのか。DAZN解説陣が鋭い視点で試合のポイントを分析するとともに、次節の見どころを語る。

非常に悔しい敗戦となりました……。グループステージ首位突破へ向けた重要なゲームであった蔚山戦に2-3で敗れ、川崎Fは厳しい立場に置かれました(決勝トーナメントへ勝ち上れるのは各グループ1位と、他グループを含めた2位の成績上位3チーム。勝点が並んだ場合は、当該チーム間の対戦成績が優先される)。

蔚山戦での川崎Fは、正直難しい条件下にあったとは思います。蔚山は第3、4戦でグループ最下位の広州との対戦時、川崎F戦で出場していたメンバーをほとんど温存し、力を溜めた状態で川崎F戦に臨みました。一方、第3、4戦でホーム(グループIはマレーシアで集中開催)のジョホール(ダルル タクジム)と対戦した川崎Fは、少なくないエネルギーを使い、5-0と快勝した第4戦から蔚山戦への先発の変更は3人だけでした。結果論ですが、そういう意味では対戦順の妙はあったと思います。

もっともこの試合の蔚山の選手たちは2試合出場がなかった分、やや試合勘が薄れていたのか、序盤は川崎Fがリズムを掴みました。7分の相手のミスから生まれたビッグチャンスを(レアンドロ)ダミアンが決めていれば試合展開は変わったはずです。しかしピッチが荒れていたため最後のところでボールが浮いたのでしょう。シュートはバーの上に外れました。他にもチャンスはありましたが、決めるべき時に決めないと相手に流れが傾いてしまうのは勝負の常です。

現に蔚山はどこかゲームに入りきれていないように見えました。狙って重心を下げたわけではなく、川崎Fが押し込んだという表現のほうが相応しかったのだと感じます。個人的には、第1戦の後半の展開の延長線のようなイメージです。だからこそ、川崎Fにとっては14分に相手の最初のチャンスで失点してしまったことが本当に悔やまれます。

今グループステージの初戦に蔚山と対戦した(△1-1)川崎Fは、直前のリーグ戦・柏戦(○1-0)で採用した4-2-3-1を選択しましたが、前半どこかしっくりこず、後半4-3-3に戻して試合終盤の同点ゴールにつなげました。その成功体験もあって、今回の蔚山戦には4-3-3で臨み、前述したようにゲーム序盤は良い形で相手を押し込みました。

ただ1失点目のシーンは4-3-3の穴をつかれた格好でした。(アンカーの橘田)健人がつり出され、中央のレオナルド(元・浦和)にクサビを入れられ、(インサイドハーフの脇坂)泰斗、(遠野)大弥もケアできない状態でした。そのため(CBの車屋)紳太郎と(谷口)彰悟の前のエリアが少し空いてしまい、そのスペースにカザイシュヴィリに侵入され、レオナルドとの連係からシュートを打たれ、最後は唯一足を止めずにこぼれ球に反応したレオナルドにゴールを許してしまいました。

この先制点で蔚山はより無理をしない形をとることが可能になり、攻める川崎F、守ってカウンターを狙う蔚山という構図が強まりました。

そのなかで喫した2失点目も痛かったですね。後方へのパスをカットされた(佐々木)旭は連戦による疲れとこの大一番でのプレッシャーはあったと思います。大卒ルーキーである彼は初めてのACLで、左SBはノボリ(登里 享平)が負傷していることもあって彼への負担は増していました。一方で、レオナルドのスルーパスから右サイドを抜け出したオム ウォンサンがキッチリ決めたように蔚山のクオリティもやはり高かったです。

レオナルドとカザイシュヴィリの2トップはかなり厄介でしたね。蔚山はある意味、チームとして守備ブロックを築いた時に、2トップのふたりは少し休みながら前に残るような形を取っていました。彼らはカウンターに備えて力を溜めているところがあったと思うんです。ただその分、川崎FのCB2人は比較的ボールを持つことができました。蔚山にとってもリスクになるやり方であったと思うんです。

川崎Fも40分には彰悟が持ち上がり左サイドのマルシーニョへ対角線のフィード、マルシーニョが頭で折り返してダミアンが1点を返しました。繰り返すように川崎Fもチャンスを作れていたわけで、この流れで後半に追いついて勝ち越すイメージを、チームは間違いなく持っていたはずです。カウンターは厄介だけど、自分達がしっかりと繋いでゴール前まで持って行けるし、ブロックを築かれていたとは言え、崩せないほどではないと。

そういう意味では後半早々の失点が最も痛かったのかもしれません。前半終了前の得点で「よし行こう、やれるぞ」という気持ちになっていた矢先に決められましたからね。今度もレオナルドのパスからカザイシュヴィリに抜け出されてネットを揺らされました。

その後、川崎Fは小林(悠)らを早めの時間に投入してシンプルなクロスも増やしました。前半を通じて蔚山はクロス対応がそこまで良いとは言えず、川崎Fも相手のウィークポイントを分析していたはずです。実際にある程度アバウトなボールでも、何か起きそうな気がしていました。本来川崎Fがやってきた形ではありませんでしたが、そんなこと言っていられる状況でもありません。それにボールをつなごうにもピッチ状況はかなり悪そうでしたからね。

終盤、反撃を見せた川崎Fは後半アディショナルタイムにダミアンが1点を返すも、同点に追いつくことはできませんでした。

これで勝点10のジョホールが1位、同勝点10の蔚山が2位、勝点8の川崎Fが3位となりました。最終戦は川崎Fと全敗(0得点・23失点)の広州、蔚山とジョホールの対戦になります。どんな結果になるか読めませんが、かなり複雑な計算になってきます(改めて決勝トーナメントへ勝ち上れるのは各グループ1位と、他グループを含めた2位の成績上位3チーム。勝点が並んだ場合は、当該チーム間の対戦成績を優先。2位チームの成績の比較は、神戸が所属するグループJが3チームの構成のため、東地区5グループのなかで、各グルー4位チームとの結果を反映させない)。

選手たちは蔚山戦の敗戦に小さくないショックを受けていると思います。大事なのはこういう時に誰かがではなく、一人ひとりが広州戦にしっかりと向かうことです。この状況を誰かが助けてくれるわけではないですし、自分たちで奮起してやるしかありません。ただそれを分かっているスタッフ・選手たちですし、最終戦に勝って他会場の結果を待つしかありません。

今できることは、この2日間でやれるだけのリカバリーを行ない、広州戦にベストを尽くすことです。やるしかありませんし、ここで折れるのは簡単です。

正直、僕らが思っている以上に大変な状況だと思います。高温多湿な環境で、中2日で連続で試合を行ない、ピッチ状況も良いわけではありません。コロナの影響もあります。言い訳をできる要素はいくらでもあります。ただ、このチームは辛い時に決して言い訳をせず、前に進んできました。下を向いていたら良い結果も訪れないはずですし、本当に最後まで何が起こるのか分からないのがACLです。だからこそ最後まで自分たちの戦いを貫き、結果を信じて最終戦も頑張ってもらいたいです。

【蔚山現代×川崎フロンターレ|ハイライト】


[次節開催情報]
AFCチャンピオンズリーグ2022 東地区グループステージMD6
川崎フロンターレvs広州FC
2022年4月30日(土)18時00分キックオフ(日本時間)
DAZN独占配信

 

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