ホームの鳥栖は現在5試合勝ちなしで、かつ今季初の3連敗中と思うように結果が出ていない。この期間は対戦相手が残留争いなどのチーム事情の影響から、より勝点獲得の可能性を高めるために入念な鳥栖対策を施してくるケースが続いている。現在の鳥栖には、まだそれを打ち破れるほどの力がなく、それが勝点から見放されている大きな要因となっている。
対する広島は今季就任したミヒャエル スキッベ監督の下、第33節終了時点で3位。天皇杯、JリーグYBCルヴァンカップではともに決勝進出。天皇杯は惜しくもタイトルを逃したが、ルヴァンカップではC大阪を下し、戴冠に成功している。強力なプレッシングをベースとしたアグレッシブなスタイルを構築し、新体制1年目でタイトル獲得。充実したシーズンを送っていると言えるだろう。その充実ぶりをさらに高める理由が最終節にも残されている。この試合で勝点1以上を得られれば自力で3位を確定することができる。来季のAFCチャンピオンズリーグのプレーオフ出場の可能性を残すためにも負けられない一戦だ。
また鳥栖には、この一戦に特別な思いを抱く選手がいる。それが長沼 洋一だ。今夏、鳥栖に加入した長沼だが、それまで在籍していたのが今回の対戦相手である広島だ。高校生で広島ユースに入った長沼は、その後、トップチームに昇格。広島で育ってきた長沼にとっては、今回が初めての古巣戦となる。「楽しみですけど、正直イヤだなって感じです(笑)」と本人は古巣戦を前に複雑な心境を明かしているが、「広島を出て、まだ半年も経っていないですが、成長した姿を見せたい」とも語っている。サイド攻撃が生命線の鳥栖にとって、長沼の活躍は勝利のために重要であるだけに、奮起を期待したいところだ。
そして、広島の川村 拓夢にとって鳥栖の川井 健太監督は意識する存在だろう。期限付き移籍していた愛媛で2019、20年と川井監督の下でプレーしており、2020年はシーズンを通して主力としてプレー。飛躍のきっかけを与えてくれた監督でもある。川井監督もかつての教え子について「ボックストゥボックスの素晴らしいMFで、左足の質は本当にすごい」と笑顔を見せながら語っている。
すでに残留が確定し、上位進出もないという状況の鳥栖だが、やはり最後は勝って締めくくりたいところ。「最後だから頑張って何か特別なものを作ろうということではなく、しっかりダシは取ってきて、素材もいろいろなものを試してきました。失敗もあれば、『不味い』と言われたこともあったけど、最後は俺たち、『これが一番良いはずだよね』っていうもので勝負したい」(川井監督)。積み上げてきたものを今季の集大成として表現し、勝利をつかみにいく。
[ 文:杉山 文宣 ]
