ただ、前節・広島戦後に「後半、選手たちは非常に素晴らしい振る舞いを見せてくれた」と振り返ったダニエル ポヤトス監督の言葉は決して強がりではない。広島に先手を取られたものの、後半に宇佐美 貴史の今季2点目で追いつくと、鈴木 武蔵が勝ち越しのチャンスを得るなど、G大阪が逆転勝利を収めていてもおかしくない内容だった。
「後半は自分たちが主導権を握って相手陣内に押し込んでプレーできたし、同点に追いついて雰囲気は作り出せていた」と黒川 圭介も、指揮官と似た感想を口にする。
G大阪は2試合連続で開始早々に失点し、追う展開を強いられているが、ボールを握るサッカーと同時にダニエル ポヤトス監督が常に求めるのが、「どこにスペースが生まれてくるか」を見極めるサッカー。今節・札幌戦でテーマとなるのは、徐々に浸透しつつある新たなスタイルを勝点3につなげる作業である。
札幌は前節、従来の[3-4-2-1]ではなく、対横浜FMを見据えた[3-5-2]を採用。前線からのプレス強度を高める采配が奏功し、前年のチャンピオンチームを2-0で見事に撃破した。
前々節で対戦した神戸、前節で対戦した広島はともに、G大阪に対してアンカーのネタ ラヴィを徹底的に見張り、中盤に対してもマンマーク気味で対応。布陣がいかなるものであろうと、札幌も同様の戦い方を採用するはずだ。
もっとも、ビルドアップに固執せず、シンプルなロングボールも用いるのは、JリーグYBCルヴァンカップEグループ第1節・京都戦と広島戦でも見せたG大阪の戦い方。
カギを握るのは古巣相手に燃える鈴木のパフォーマンスだ。「短いパスだけでつなぎ通すのは難しいし、長いボールで背後に抜ける選手がいることで足元のスペースが空く」とコメント。得点はまだ1点どまりだが、シンプルなランはプレス回避の逃げ道にもなっており、そのパフォーマンスには注目だ。広島戦で負傷交代した宇佐美の出場が微妙なだけに、ゴール前の決定力でも鈴木に期待がかかる。
2019年に札幌でキャリアハイとなる13得点を叩き出している鈴木は、古巣との戦いに「お世話になったクラブだし、今度は対戦相手なので不思議な感じだけど、楽しみ」と、旧友たちとのマッチアップを心待ちにする。
一方の札幌は、今季公式戦初勝利となった横浜FM戦の勢いとともにパナソニック スタジアム 吹田に乗り込んでくる。「この17年、日本で仕事をしてきた中で、今日の試合が最も洗練されていた」とペトロヴィッチ監督は横浜FM戦後に胸を張ったが、新加入の小林 祐希に初ゴールが生まれ、G大阪を過去苦しめてきた金子 拓郎も鋭い飛び出しを披露。好調の福田 湧矢と金子のマッチアップも見どころの1つになりそうだ。
成熟度では札幌に及ばないものの、目指す方向性はハッキリしているG大阪と、指揮官の哲学が浸透し切っている札幌の顔合わせ。好ゲームの予感が漂っている。
[ 文:下薗 昌記 ]
