ただ、快勝を飾った川崎Fの旗手 怜央(現セルティック)は「相手のサッカーがすごく良かった。(先制点までは)自分たちが何もできない、何も生まれそうにない状況だった」というコメントを残している。確かに、小林 悠の先制点が生まれる直前までは、浦和が圧倒しているように見えた。そのときから浦和の変化が始まっていた。
以降の対戦成績を見ると、引き分けが多いものの、公式戦では浦和が勝ち越している。J1をけん引してきた川崎Fとの力量差は確実に埋まりつつある。そして川崎Fは、今季は過渡期を迎えたかのような苦戦を強いられている。
「自分たちもその経験がありますが、川崎Fも良い時期が続いて、いまは苦しんでいる時期でもあると思います」 西川 周作は自身の経験と重ね合わせてそう語る。タイトルは違えど、浦和も二度目のアジア王者となった2017年を境に下降線をたどっていた。現在の川崎Fからも、リーグを連覇した2020、21年ほどの圧倒的な力は感じられない。ただそれでも、西川は警戒を強める。
「とは言っても、能力の高い選手たちがいますし、厄介なサッカーをしてくる。後ろの選手としては、我慢強くいかに守れるか」 川崎Fはここまで16試合で20得点。かつての怖さは感じられないものの、公式戦4連勝中で勢いを取り戻している。ただ、浦和は守備に一家言あるチームになった。西川は自信をのぞかせる。
「左右に振られても、同サイドで細かくやられても、最終的には中のチェックをしていれば守れると思います」 1試合消化が少ないとはいえ、浦和はここまでリーグ最少失点を誇っている。アレクサンダー ショルツやマリウス ホイブラーテンらの貢献が高いのはもちろんだが、今季就任したマチェイ スコルジャ監督が練り上げてきた守備組織が大いに機能している。守備が大崩れする心配はそれほどない。
目下の課題は、もっぱら攻撃。直近2試合でゴールを奪えておらず、総得点は川崎Fと同じ20得点。複数得点を挙げた試合もあるが、無得点または1得点にとどまった試合が多くなっている。
今季は逆転勝利が多く、粘り強さを見せている。しかし、相手陣でのボールの失い方が悪いことから先制点を招いてしまっているという課題もある。守備と同じく、バランスを保ちつつ集団でプレーできるか。攻撃組織の成熟を待ちたい。
組織守備で試合を支配し、粘り勝ちを積み重ねている浦和と、ボールの保持力を高めて復調した川崎F。この試合はお互いの思想、哲学の激突でもある。
[ 文:沖永 雄一郎 ]
