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コラム

百年構想のある風景

2015/1/12 10:00

バーゼル人の老後

EURO2008がスイス・オーストリアの共催で始まる。スイスの会場の一つが、中田浩二選手が在籍したFCバーゼル1893のホーム:ザンクト・ヤコブパークスタジアムだ。 バーゼルは、ドイツとフランスに接するライン川沿いのまち。人口は17万人で、地域意識がとても強い。地元TVのニュース、地元新聞Basler-Zeitung、レストランのメニューにはスイス・ドイツ語と呼ばれるバーゼルの方言が使用され、訪れたドイツ人も戸惑うほどだ。さしずめ大阪の新聞が大阪弁で書かれているようなものである。

2001年全面的に建替えられたスタジアムを完成間際に案内してもらった。市街地に立地し、スイス鉄道、市電、バスを利用できアクセスは抜群である。38,500人収容のサッカー専用かつ多機能スタジアムで、680台収容の地下駐車場、32店舗が入ったショッピングセンターや2軒のレストランが併設されて試合のない日も賑わいをみせる。 珍しいのは、107戸の「老人ホーム」が上層階に設けられていること。 サッカーファンで恩師の法政大学黒川和美教授がこの老人ホームを訪れ、集まってくれた15人のお年寄りたちにインタビューした。 「この老人ホームを選んだ理由は何でしょうか?」 「ここにサッカー場があるから、ただそれだけの理由です。 FCバーゼルは、スイスではダントツに強いチーム。 チャンピオンズリーグに出場すれば、応援のために欧州中を飛び回ることもできる。年をとってからこんなに楽しいところはないですよ。」 いま自分にとって一番魅力的な場所に身をおいている喜びが全員から伝わってきたそうだ。 ホームゲームのある日は、かわいい孫たちがやって来る待ち遠しい一日だ。居住者専用観戦ラウンジのガラスには、家族たちと楽しく応援する幸せ一杯のお年寄りたちの笑顔が映っている。

一方で、“貯蓄のある団塊の世代や高齢者に、どうすればもっとたくさん消費を増やしてもらえるだろうか。都会に集中する団塊の世代の人々が、どうすれば地方に移り定住するようになるだろうか。”と頭をかかえている国がある。 人生の中で自分の夢を実現できるところで暮らすこと、それがいかに人間らしく幸せなことであるかを、バーゼル人たちは素直に教えてくれたような気がする。

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