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【J1:第13節 川崎F vs 仙台】レポート:プロ初先発の福森晃斗のクロスを矢島卓郎がゴール。劇的な逆転弾により川崎Fが首位仙台を下す。(12.05.27)

川崎Fらしさが戻ってきた。90+2分に中村憲剛から左サイドの福森晃斗にパスが出る。2年目の福森にとって、この試合はプロ初先発のピッチである。90分を超える試合時間をサイドバックとしてプレーしていた福森は、そんな疲れも見せずクロスを上げる。それまでの時間帯では「ボールを大事にしすぎてました」と反省する福森は「でもアディショナルタイムのところは勝負だと思ったので、あそこで一番いい判断ができたのかなと思います」と自らのプレーを分析。一方、ゴール前に走り込んでいた矢島は「いい形で(福森がボールを)持っていたし、信じて走りました」とその場面を振り返る。ジャストミートしていたわけではないというが、等々力を埋める川崎Fサポーターの願いを乗せ、矢島のシュートがゴールネットを揺らした。仙台がリーグ戦では今季初めて3失点目を喫した瞬間であり、その仙台を下す殊勲のゴールとなった。

4月24日から指揮をとり始めた風間八宏監督は、初戦の広島戦でこそ1−4の大敗を喫するが、前節の大宮戦までのリーグ戦5試合で3勝2敗という成績を残していた。井川祐輔はこの仙台戦を前に「1ヶ月で3勝しているのはスゴいですよね。それだけ能力のある選手がいるということだと思います」と述べている。もちろんその能力を引き出す風間監督の指導力あってのことだが、その風間監督の練習の成果について楠神順平が試合後に興味深い言葉を述べていた。

「自分も含めてうまくなっているのは感じてます」

同じプロとして、井川が賞賛するだけの能力を持つ選手がまだまだ上達を実感しているのである。それはひとえに新たな切り口で、サッカーを伝える風間監督の手腕があってこそであろう。そしてそんな風間監督の指導が結果として出たのが、20分の小林悠と61分の登里享平のゴールだった。ともに人とボールが連動して動くゴールであり、エリア内にまでボールを運んでの得点だった。また小林は試合前日に指導されたファーストタッチを意識したゴールだったとも述べている。

風間監督のチームらしさが出た場面だったが、そこで勘違いしてはならないのが、風間監督が人とボールを動かす事を主眼に練習を組んでいる訳ではないという点である。風間監督は止めて蹴るという基本的な技術に始まり、相手を攻略し、背後を取り、逆をつく事を教えているだけである。試合中に現れる1対1の局面で、どう動くべきかを言語化し言葉を駆使して指導を続けてきた。そしてそれが結果として、川崎Fをして人とボールとが動く試合内容として表出しているのである。そういう点で実は前半24分の仙台の富田晋伍の得点も風間監督の指導の影響を受けたものだった。

富田のこのスーパーなミドルシュートは、小林のパスミスが原因だった。小林はクリアではなく、パスを繋ぐ事を意識していた。

「仕方ないでは済まされないですが、間接視野で黒っぽい服の人に出したら審判で、ああなってしまいました。でも自分の中では丁寧に出したパスでした。言い訳になってしまうんですが」

間接視野というのは、視界の中で焦点が定まりはっきり見えている対象物以外のぼやけて見える領域を指す。この領域に対する認識を高める事でいわゆる視野の広さを確保できる。小林の結果としてのこのミスパスには反省が必要だが、この日の審判は、黒いパンツとストッキングが川崎Fと同じ配色で、ユニフォームも淡い灰色。コンマの壁の向こう側での判断を強いられる選手にとっては間違えても仕方のない微妙な配色だった。いずれにしても、意図あるプレーの結果のミスであり、「マイボールを大事にしよう」という風間監督の教えに小林はできるだけ忠実に従おうとしたのである。自らのゴールを帳消しにしてしまった形だが、間接視野の認識度の向上はこれからのトレーングによって改善出来る点であり、小林には改善してもらいたいと思う。

この富田の得点を含め、仙台の2得点にはその原因がある。川崎Fとしてはその原因を反省し潰す必要はあるが、ただミスの結果としての富田、ウイルソンのシュートは素晴らしいものだった。「失点に関しては2点ともノーチャンスというか、アクシデント的なものだった」と田中裕介は話しており、それほど下を向く事もないのだろうと考えている。ただ、1つ気になるのが仙台の後半からのフォーメーションチェンジに川崎Fが必ずしもうまく対応できていた訳ではないという点である。4−4−2のシステムを仙台は後半の頭から4−3−3に変更している。この変化に川崎Fは対応できておらず、逆に仙台にとってはしてやったりの展開となっていたのである。

「彼ら(川崎F)のダブルボランチのところで攻撃の起点をいかに抑えるのかが大事だと思ったので、システムを4−3−3に変えて、ボランチのところでボールを引っかけてポゼッションも高まりました。後半の立ち上がりに逆転できたところまでは修正プラン通りでした」と手倉森誠監督は試合後に述べている。しかし、そんな仙台をアクシデントが襲う。前半が終わったところで田村直也が体調を崩し嘔吐して交代。この点について手倉森監督は「いちばん元気だったはずの奴が、代わることになった」とし「誤算だった」と話す。また、内転筋を痛めていた菅井直樹を59分に下げざるを得ず、最終ラインが試合中に2枚代わるという難しさを抱えていたのである。

いずれにしても、仙台が意図して4−3−3に変更した事に川崎Fは対応できず、仙台がリードした時間帯以降の戦いに対し、必ずしも能動的に動いて2点を奪い返せていた訳ではなかった。これはハーフタイムなどをきっかけとした試合中の相手チームのペースアップに思うように対応できていないこれまでの戦いを踏襲してしまっており、今後の改善が必要な部分であろう。ただ、それにしても結果として川崎Fは劇的なアディショナルタイムでの逆転弾によって勝利した。これにより風間監督体制下では4勝2敗と勝ち星が先行。また得失点差でもイーブンに戻している。

プレビューの中で、今節の首位仙台とのこの対戦は「風間監督のサッカーがどこまで川崎Fの選手たちに浸透しているのかを図るバロメーターとして見ることができそう」と書いた。その観点で見れば、首位仙台を相手に3得点し逆転勝利しており、着々と浸透しつつある、と評価して間違いはない。

なお、この劇的な勝利をもってリーグ戦は一旦中断。川崎Fは6月6日と9日とにヤマザキナビスコカップを戦うが、代表に招集された中村憲剛を除いた選手たちを風間監督は「これから3週間はもっともっとみっちり。ひとつひとつ」教えこんでいく事になる。代表から復帰した中村がチームの進化をどのように捉えているのか、非常に気になるところである。

ここからは余談になる。手痛い敗戦を喫した仙台ではあったが、試合後にサポーターはすぐさま頭を切り替え、仙台の選手たちを鼓舞していた。また、仙台のサポーター席には昨年4月23日のリーグ再開初戦時に川崎Fサポーターから送られた横断幕が掲示され、敗れた仙台側から川崎Fの応援歌が歌われ始めた。もちろん、それに川崎Fサポーターが応えたのは言うまでもない。昨年4月23日の等々力でのこのカードの死闘はリーグの歴史に残すべきものだと考えるが、それに勝るとも劣らない激しくもクリーンな戦いだった。あの試合と同じように太田吉彰は足をつり、井川祐輔、西部洋平が手を差し伸べていたのも印象的だった。いずれにしても、ナイスゲームだった。

以上

2012.05.27 Reported by 江藤高志
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