約4分のアディショナルタイムが過ぎてタイムアップの笛が鳴った瞬間、相手ゴール前に殺到していた札幌の選手たちが一斉にピッチに倒れ込んだ。札幌ドーム内も、北九州サポーターが埋めた一角を除いては静寂に。電光掲示板に表示されたスコアは最後まで「0−0」のまま。一応、引き分けでも他会場の結果によっては札幌がJ1昇格プレーオフに進出できる可能性も残されていた。だが、それも叶わず。タイムアップの笛はそのまま、シーズン終了を告げるものとなってしまった。
札幌は勝ちさえすればほぼ確実にプレーオフに進むことができる立場だった。11月に入ってからは千葉戦(○1−0)、神戸戦(○1−0)、岐阜戦(○3−0)と3連続完封中で勢いもあった。あとは最終節で16位の北九州を破れば、ひとまずのミッションクリアーとなる状況。あらためて考えても、あまりに悔しいドローだったと言うしかない。
ゲームの中身を振り返っていくにあたり、この試合では北九州の健闘が光ったことをまずは触れておきたい。
「怪我で連れてこられなかった選手たちの想いも一緒に持ってピッチでみんなで戦おう、とも話しました」と柱谷幸一監督が振り返ったように、北九州は渡邉将基、八角剛史ら複数の主力を負傷で欠きながらも、4−4−2のシステムでバランスよくブロックを形成し、そこからの素早いカウンターでホームチームを何度も脅かした。「この試合に関して言えば、連動性ではウチのほうが上回っていたと思う」と鈴木修人も手応えを口にする。
「相手の前の選手が、あまりプレスバックをしてこなかった」と鈴木が続けて発したように、どうしても勝点3が欲しい札幌は、守備時にもオフェンス陣が高い位置に居残る場面が時折あり、鈴木とアン ヨンギュで組む北九州の守備的MFがフリーでボールを持てる場面が非常に多かった。そして「(アン)ヨンギュは、それほどパスさばきをするタイプの選手ではないが、今日は比較的自由にパスを蹴っていた」とも鈴木が重ねたように、札幌はどこか「前の選手が攻撃を」「後ろの選手が守備を」となっており、中盤の有効なスペースを北九州に与えてしまっていた印象が否めない。もちろん、勝てばプレーオフ、負ければシーズン終了という重いゲームであることを考えると、どんなチームでもそうした形になってしまうのかもしれないが。
ただし、それでもやはり最終的には、どうしても勝ちたい札幌が攻め、北九州が守るという展開に行き着く。互いにスコアレスのまま後半へ突入すると、札幌は強烈なキックを持つレ コン ビン、身長197センチのフェホといった個人でのパワーを持つ選手を投入。そしてレ コン ビンが出場直後の直接FKをバーに直撃させるなど、これらの選手交代はチームに勢いを与えてみせた。
そうした選手交代から「引き分けではダメで、勝たなきゃいけないんだな」と宮澤裕樹は察したという。冒頭で記したように、試合開始の時点では引き分けでも札幌がプレーオフに進出できる可能性はあった。だが、他会場の経過により、勝たなければいけない状況へと移り変わっていく。
攻める札幌と守る北九州。時計の針がタイムアップへと近づくにつれ、その構図はドンドンと色濃くなっていく。24,813人の大観衆が詰めかけたスタンドからの声援も、熱を増していく。今シーズンの札幌はしっかりとパスをつないで攻めるスタイルを志向しており、シーズン終盤はその形がかなり表現されるようになってきた。終盤は前線の長身選手にハイボールを蹴るパワープレーへと移行していったものの、その前のプレーではしっかりとボールを動かせていた。チームとしての成長は着実に感じさせていた。
だが、それでもやはりゴールの中にボールを入れることができなければ勝つことはできない。札幌は総力を挙げて果敢に攻め込んだが、なかなか結実せず。後半アディショナルタイムに得たCKではGK杉山哲も相手ゴール前まで攻め上がって得点を狙うものの、シュートを打ち切れず。結局、スタジアムは冒頭で記した雰囲気となる。結局、勝てばプレーオフ行きとなるこの試合を引き分けてしまった札幌は8位に。プレーオフ進出は今シーズン開幕前から掲げていた目標だったが、最終節のドローにより、それを達成することができなかった。
だがここで、敢えて北九州の柱谷幸一監督が発したコメントを記したい。
「リーグ戦の最終戦でこういう状況になっていると、どうしても1試合だけという風に見られがちですが、42試合戦った結果がこうなっている」
そう、この試合が全てを決したわけではない。リーグ戦というのはシーズンのなかで様々な紆余曲折がありながらも、結局はトータルの力通りの順位に並んでいくもの。この1年間を戦い、J2のなかで札幌は8番目、北九州は16番目の強さだったということなのである。そして、そうした現実をしっかり受け止められるかもまた、チームが強くなれるかどうかの大きなポイントでもあるのだろう。
試合後のミックスゾーンで、札幌の内村圭宏は「またみんなで練習して、強くなっていきたい」と発した。試合終了のホイッスルは、次の試合に向けた準備を開始するキックオフの笛。シーズン終了を告げたこの日の笛は、来シーズンに向けたスタートの笛でもあるのだろう。
以上
2013.11.25 Reported by 斉藤宏則
今日の試合
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