鬼木 達監督の今季限りでの退任。2017年に川崎Fのコーチから監督に就任すると、過去7年間でJ1優勝を4回果たし、JリーグYBCルヴァンカップを1回、天皇杯を2回制覇。川崎FのJ1でのタイトルすべてを監督として獲得してきた。しかし、昨季は天皇杯のタイトルこそ獲得したものの、J1は8位。今季も前節終了時点で10位と、リーグ戦は2年連続で優勝争いから遠ざかった。
鬼木監督とクラブの話し合いの場はルヴァンカッププライムラウンド準決勝第1戦・新潟戦の前に設けられており、そこでこの2年の成績を理由に「クラブのほうから未来に向けて進みたい」(竹内 弘明強化本部長)という話をしたという。つまりルヴァンカップの結果(準決勝敗退)は関係なく、天皇杯も含めて今季無冠に終わることが直接的な理由ではないにせよ、8年続いた“鬼木フロンターレ”が終焉を迎えることになった。
川崎Fにとってリーグ戦残り6試合(雷雨のため試合中に中止となり、後半開始から再開する明治安田J1第28節・浦和戦も含む)は何かが懸かっているわけではなく、明確な目標を持ちづらいところではあった。その中で選手、チームにとっては歓迎すべきことではないとはいえ、戦う意味ができた。
鬼木監督は退任が決まったからといって「自分自身の熱量は次に向けて変わらない」としながら、選手たちに伝えたことについてこう続けた。
「自分(鬼木監督)のために、ということではなくて、選手一人ひとりが輝くことが必要だと思うし、それがチームの力になると思っている。選手自身がしっかりと戦うこと、輝くことでチームに貢献できるんだという思いで戦ってほしい」 マネジメント力に長けた鬼木監督らしい言葉ではあるが、その言葉を聞いて「じゃあ今回のことは関係なし」と思う選手はいないだろう。そして自分のためだけに戦うよりも、人のために戦うほうが力を発揮できるというのは、具体的なデータとして示せるものではないが、スポーツにはよくあることだ。
一方のG大阪にとっては、そういった相手の事情は関係ない。前節・札幌戦で10試合ぶりに勝利。勝点で並び、得失点差で上に立たれている4位の鹿島に離されるわけにはいかないし、3位の町田も勝点6差と射程圏内に捉えている。アウェイといえども欲しいのは勝点3だろう。
ダニエル ポヤトス監督就任以降、川崎Fには3戦全勝と相性が良い。リーグ最少タイの失点数を誇る守備で川崎Fの攻撃を食い止めつつ、昨季の2試合でゴールを決めたダワン、そして前節は後半アディショナルタイムの2ゴールでチームに勝利をもたらした宇佐美 貴史が決定的な仕事を果たせば、勝点3は近づく。
鬼木監督の退任を受けて、Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsuの雰囲気がどうなるのか、そして負けられない理由ができた川崎Fとさらに上の順位を目指すG大阪がピッチ上でどんな戦いを繰り広げるのか。両者の“火”はまだ消えない。
[ 文:菊地 正典 ]


