鳥栖は開幕当初から質の高いサッカーを披露してきたが、存外に勝ち切れない試合が多かった。引き分けはリーグ最多の『14』で、浦和よりも1つ多い。前節・京都戦も先制を許し、多くの時間帯で攻勢に出るもいまひとつ効果的な攻撃を繰り出せずに敗戦。川井 健太監督は「最後の細かい部分が足りなかった。その質を次の試合のために鍛えたいと思います」と巻き返しを誓った。
ただ、より深刻なのはやはり浦和のほうだろう。今季はリーグ優勝を目標に掲げながら、一度も優勝争いに絡むことができなかった。それはさておくとしても、JリーグYBCルヴァンカップも含めれば公式戦5試合勝利がなく、2試合連続で4失点を喫している。
前節・広島戦の4失点は自陣でのロストとセットプレー絡み。守備崩壊というよりも攻撃の問題だったが、攻守に歯車がかみ合わなくなっているのか、どちらも精彩を欠く状況に陥っている。4日にはひさびさに練習が公開されたが、主力組と目される側に元気がなかった。
プレスはハマらず、ビルドアップでもサブ組のプレスをかいくぐれずに、不用意なロストから容赦なくシュートを浴び続ける。全体練習終了後直後には酒井 宏樹が「全然ディフェンスができていない」と訴え、解散前のミーティングでも監督が守備の強度や戦う面について強い口調で強調した。この日のトレーニングの出来はなんとも厳しいものだったが、光明はその後のクールダウン中の出来事だろうか。酒井が岩尾 憲に話しかけると、そこに岩波 拓也も参戦。監督やコーチも加わり、約20分にわたって話し合いは続いた。
その内容は想像するしかないが、身振り手振りから察するに、ディフェンス時の味方の押し出し方に加えて、ビルドアップ時の動き方なども含まれていただろうか。チームの現状をよしとしている者は誰もいない。試合当日までになんらかの改善が施されることを期待したい。
もう1つの光明は、前節ようやくJデビューを果たしたブライアン リンセンの存在だ。前節は62分からの途中出場だったが、今週の状態を見るにつけスタメンの可能性も十分にある。トレーニングではキャスパー ユンカーや小泉 佳穂らと前線でコンビを組む場面があったが、相手に応じてセンターFWとしてもセカンドトップ気味にも振る舞えるのは心強い。
ただやはり、彼が最も輝くのはゴールに近いエリアだ。身長は170㎝ながら空中戦や競り合いに優れ、ポストプレーやターンからのスルーパスを繰り出せる。ラストパスに対して力強く入り込むフィニッシュワークも魅力だ。彼1人ですべてが解決するわけではないが、多くの局面でプラスをもたらしてくれるだろう。
リーグ戦も終盤戦、両者とも上も下も見えづらい状況で何を目標に戦うか。AFCチャンピオンズリーグの決勝に向けて、来季に向けて、さまざまな思惑があるとしても、まずは目の前の試合で質の高いサッカーが披露され、スタジアムに訪れた観客を沸かせてくれることを期待したい。
[ 文:沖永 雄一郎 ]
